2024年(令和6年) 1月10日(水)付紙面より
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「極点社会は地方社会の危機」―は、2014年5月の本欄の見出し。聞き慣れない「極点社会」とは、将来、地方の人口を吸収した大都市だけが生き延びることを言い表した。現在でさえ地方の衰退を招いている東京一極集中がより進んで、さらなる人口のひずみを生むことが懸念される。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計で、庄内の50年の人口は16万517人。20年の26万3404人から39・1%減る。少子化で生産年齢人口(14~64歳)も減れば、地域社会の機能の維持さえ危ぶまれる。国土の均衡ある発展が叫ばれて久しいが、地方の人口減少を止める国の政策が浸透しない。地方の衰退の影響は、いずれ東京にも及ぶことになるはずなのだが。
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1989(平成元)年8月の本紙に「10年前比2094人減る」の記事が。庄内の総人口は33万326人、既に人口減少が始まっていると伝えた。その傾向は年を追って加速、2010(平成22)年に30万人を割って29万4171人に。50年の16万人余は平成元年時の半分以下になる。少子化もさることながら、都会に吸収されていく生産年齢人口も多いのではないか。
自治体の合併は「拡大縮小」の歩みだ。合併で一つになった自治体の人口は一時的に増えても、その後は減る。平成の合併後の鶴岡市や酒田市の人口推移からも分かる。合併は住民生活の向上に向け、「費用対効果」を考えた行政機能の再構築。ただ、中心市街地に多くの人と機能も集まるという、「地方の一極集中」となり、東京一極集中のミニ版に例えられる。
生産年齢人口の減少は、日本全体の活力に影響する。地方で求人はあるものの、非正規雇用やパート労働も多く、労働の質と高賃金を求めて若年労働者は都会に流出する。過去の政権は「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」、就職氷河期世代の「再チャレンジ」など、目先を変えた政策を次々に掲げたが、十分な成果につながったとは言えず、東京と地方の格差は縮まらない。
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人口減少を止めたい。政府は新年度に約3・6兆円の予算で少子化の反転を掲げる。経済支援、保育サービスの拡充、育児休業給付や育休取得率向上などを目指す。22年に生まれた赤ちゃんは初めて80万人を割った。出生数減少の一因は結婚しない世代の増加にあるという。政府は「なぜ結婚しないのか」の原因を調査し、結婚できる環境整備にしっかり力を入れるべきだ。
冒頭の「極点社会」は、政策提言機関「日本創成会議」が14年、人口減少に警鐘を鳴らした際の言葉。この時、将来的に896自治体が消滅する可能性があると指摘、現在は1000を超すとされる。都道府県別の50年の人口推計で増加するのは東京の2・5%増だけ。人口偏重が是正されない限り、日本全体が危機的な状況になる。