文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2024年(令和6年) 2月18日(日)付紙面より

ツイート

「転倒転落防止対策」大きな成果 取り組み10年 発生率全国平均の2分の1 湯田川リハビリテーション病院

 病院内での入院患者のけがなどの事故防止に向け、鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院(武田憲夫院長)が取り組んでいる「転倒転落防止対策」が、大きな成果を上げている。主にベッド周りでの対策を強化し、予防マニュアルを作成して多職種の全職員が共通理解のもと取り組みを徹底。対策を始めて10年となり、転倒転落に伴う事故発生率は全国平均の2分の1程度と低く、専門の機関誌でも特集で紹介されるなど高く評価されている。

 同病院での転倒転落防止対策への取り組みは、2013年度から始まった。脳神経外科専門で、県立中央病院副院長から湯田川リハビリテーション病院に移った武田院長(76)が、当時年間300件ほど報告があった院内の事故件数のうち、7割を占めていた転倒転落に注目。一般病院と比べると高い比率だった。

 認知症など高次脳機能に障害のある患者が多く入院するリハビリテーション病院では、全国的に同様の傾向にあることが分かり、「大きなウエートを占める患者の転倒転落防止が医療安全のポイント」(武田院長)と、就任後すぐに防止対策の強化に乗り出した。関連する学会のシンポジウムに病院スタッフと参加したり、防止に向けた各種資料を集めるなど病院を挙げて認識を深め、独自の防止マニュアルを作成。マニュアル実践後は転倒転落事故が減少し、15年にはリハビリテーション・ケア合同研究の全国大会で成果を発表した。独自研究の中で、同じ悩みを持つ病院から紹介された有効な器具が、地元・鶴岡市内の企業の製品であることを教えられ、早速導入するなど対策を充実させた。

 同病院の防止対策はまず、患者が入院した際に身体機能などの個別評価を行い、患者の状況に合わせてベッド周囲環境を調整。ベッド脇には注意事項を記入したボードも備えてスタッフ間で情報を共有。多職種によるチームが対策内容を継続評価して、問題点や注意点を再評価し改善へとつなげている。さらに事務部も含めた部門ごとにリスクマネジャーを置き、全体会議で事例を分析するなど防止策を向上させている。

 成果は年々高まり、同病院の転倒転落率(入院延べ患者数に対する発生件数の千分率、パーミル)は13年度の5・4‰から22年度は2・1‰に減少。件数自体も10年前の3分の1に減り、全体の事故件数の大幅減につながっている。日本回復期リハビリテーション病棟協会発表の全国平均転倒転落率は3・7‰だった。

 湯田川温泉リハビリテーション病院の取り組みは昨秋、全国約870の同様の病院(病棟)が加入する協会機関誌で「良質な回復期リハビリテーション医療を支えるプロセス充実への取り組み」と題して特集された。日本病院機能評価機構による「病院機能評価(リハビリテーション病院部門)」を直近5年間で受けた約400病院のうち、最も優れている「S評価」を受けた中でも、さらに優れているとして27病院の一つに選定されたもの。

 武田院長は「転倒転落は骨折、手術につながるケースもある。重大な事故を防ぐには小さなことから対応することが大切であり、成果は185人全職員のまとまりがあったからこそ。全国から選ばれて特集記事で紹介され、全職員のモチベーションがさらに高まった」と話している。

 内科、脳神経外科、リハビリテーション科の湯田川温泉リハビリテーション病院は病床数120床(療養病床)。旧国立療養所湯田川病院の国から鶴岡市への移譲に伴い2001年に開設された。鶴岡地区医師会が管理運営している。

地元企業のリハビリバーと車椅子、センサーマット(床)などによる患者ベッド周囲の配置例。ずり落ち、転落を極力防ぎ、転落時の衝撃力を減弱させる。個々の対応方法、注意点もベッド脇に明示している
地元企業のリハビリバーと車椅子、センサーマット(床)などによる患者ベッド周囲の配置例。ずり落ち、転落を極力防ぎ、転落時の衝撃力を減弱させる。個々の対応方法、注意点もベッド脇に明示している

湯田川リハビリテーション病院の転倒転落率の推移(単位はパーミル)
湯田川リハビリテーション病院の転倒転落率の推移(単位はパーミル)



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

 
■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field