2024年(令和6年) 8月3日(土)付紙面より
ツイート
庄内地域をエリアに肥料や飼料を含めた地域内循環型農村経済圏「庄内スマート・テロワール構想」の実現を目指している山形大農学部は30日、日本中央競馬会畜産振興事業の採択を受け、同構想で商品化している「スマテロ豚肉加工品」の品質向上に取り組むと発表した。3年間で約6500万円の助成を受け、県農業総合研究センター養豚研究所(酒田市浜中)と共同で、ハムやベーコンなど加工向けに特化した豚肉生産技術の開発を進める。
同日にあった農学部の記者懇談会で、浦川修司教授と同研究所の五十嵐宏行開発研究専門員が説明した。
国内では現在、発育の早いランドレース種と大ヨークシャー種の交配による子に、肉質の良いデュロック種を掛け合わせた三元交雑豚の生産が一般的となっている。加工向けに特化した豚肉生産の技術開発では、デュロック種の代わりにランドレース種か大ヨークシャー種を交配し、ハムやベーコン向けの部位が多くなる交雑種の作出を進め、食味評価などに取り組む。
肥育日数の延長による出荷体重も一般的な115キロから130キロ超まで増やす計画で、肥育期間延長に伴う飼料の確保など飼養管理技術の確立を探る。餌については、スマート・テロワール構想で取り組んでいる地域産の子実トウモロコシや大豆、小麦(ふすま)などに加え、酒どころの地域特性を生かし、タンパク質が豊富な酒かすの活用も研究する。肥料は畜産由来の堆肥に加え、地域内のメーカーの協力を得て、とんこつスープの残さの活用も検討する。さらに、こうした地域内資源の飼料や肥料を活用した場合の温室効果ガス排出抑制など環境負荷の低減効果も検証する。
地域内循環を目指す庄内スマート・テロワール構想では、2017年からハム、ベーコン、ソーセージの豚肉加工品の商品化が進められ、今年3月までに約15万パックを提供してきた。同構想プロジェクトの統括責任者でもある浦川教授は「精肉生産中心の国内で、加工向け豚肉生産を目的とした研究は珍しいテーマ。養豚経営の安定化にもつなげる循環型農村経済圏のモデルを庄内地域で構築して全国に広げ、わが国の食料自給率を上げていきたい」と話していた。