2024年(令和6年) 9月7日(土)付紙面より
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農林水産省の2023年の漁業センサス(統計調査)によると、全国就業者数が過去最少を更新した。山形県も同様で、庄内浜漁業の先行きの不安が浮かび上がった。高齢化や後継者不足が止まらないことが大きな要因で、特に漁師の高齢化が一段と進んでいる。先頃、83歳と78歳の高齢漁師が漁をしている間に誤って水死する事故があった。高齢化する漁業経営の現実の一端でもある。
山形県漁業協同組合は24年度事業に、漁業者支援の「浜の活力再生プラン」(浜プラン)などによって漁業者の安定を後押しする事を掲げているが、庄内浜の漁業を元気にするには、何よりも消費者が魚をたくさん食べる事に尽きる。
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昨年11月実施の県内の漁業センサスによれば、23年の海で漁業を営む経営体数は209、18年(前回調査)比で75減、このうち個人経営は204で前回から67も減った。専業は129、兼業が75である事から、漁業だけでは経営が成り立たないことを物語っている。
漁業就業者数は292人。年齢別では▽65歳以上161人▽50~59歳42人▽39歳以下40人―などで、65歳以上の高齢化率は55%を占める。1988年の就業者は1326人、高齢化率は15・8%だったが、18年(前回調査)には368人、高齢化率は51・1%と、高齢者が漁業者の半数を超えるという減りようだ。沿岸での漁は高齢者に頼るところが大きいと言えるが、高齢で引退する漁師が増えれば就業者数の自然減につながることが目に見えている。
今年6月の県漁協総代会で、23年度の経営実績が報告された。総水揚げ量は前年度比29・3%減の2679トンで、記録が残る1976年以降で最も少なく、総水揚げ額の19億6755万円は、同漁協として初めて20億円を割った。4、5月の荒天とスルメイカやサケの不漁が響いたという。地球温暖化による海水温の変化が、日本近海の魚の回遊域などに影響し、餌不足によって魚体が小型化しているようだとの研究も報告されている。
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県漁協は今年度、農林水産省事業の、もうかる漁業を積極的に支援する浜プランによって、漁家経営の安定・向上に取り組むが、何よりの課題は消費拡大と後継者の確保。未経験者でも漁業技術を習得できる国や県の研修制度があり、酒田市では関東出身者が新規就労したケースもある。ぜひ、後に続く漁業者が出ることを期待したい。
漁業を元気づけるには、とにかく県民がたくさん魚を食べること。だが、県民の魚介類消費量は県の調査で1999年の1日1人当たり97・1グラムから、2016年にはサケ一切れほどの76・7グラムに減った。県は今月から内陸地方を中心に庄内浜の水産物認知度向上のキャンペーンを展開する。おいしい庄内浜の魚に目を向けたい。