2024年(令和6年) 10月3日(木)付紙面より
ツイート
臨時国会が召集され、石破茂新政権が発足した。そして早くも解散総選挙に踏み切ることを表明。日程は9日解散、15日公示・27日投開票。石破氏は「なるべく早く(国民の)審判を賜らなければならない」などと語っていた。選挙で新政権の信を得て、今後の政権を担うということであろう。
だが解散総選挙は早いほどいいとか、政権の都合だけで決めていいものではない。新政権がこの先目指す日本の将来像と、そこまでどのように導いていくのかが見えなければ、国民は判断のしようがない。衆院の任期はまだ1年もある。代表質問だけでなく野党が求める予算委員会での質疑を開催し、閣僚の資質・力量を国民に示した上で信を問うべきでないだろうか。
◇ ◇
自民党は裏金事件で国民から強い逆風を浴びた。岸田文雄前首相の退陣にも関わる問題だった。総裁選に立候補した9氏がそれぞれに「政治とカネ」の問題の対処策を語ったが、国民の批判を払拭し、納得を得られるものだったとは必ずしも言えない。通常国会で政治資金規正法が改正され、10年後に使途を公開することになったが、10年後に領収書などが残っているかどうかもはっきりしない。もっと早期に透明化して国民が納得できるものにしなければならない。
石破氏は「国民の生命財産を守り、国民みんなが安心して暮らせる国にしたい」とし、災害が多様化し、激甚化していることに対応するため「防災省」の創設を掲げている。近年の災害は発生場所、規模などが想像を超えている。未然に防止できる方策を探り、あらゆる災害に即応できる体制を整えてもらいたい。
かつて地方創生大臣を担った石破氏は、これまで全国各地を訪ね歩いた。そのことで地方での人気があった。同氏自身、地方行脚で感じ取ったこととして「地方の人口減少は止まらず、地方は疲弊している。しかし日本の潜在力は地方にこそある」と語っている。地方が持つ将来的に発揮できる可能性を、政権が本気で引き出してこそ地方創生につながる。
◇ ◇
派閥を持たない石破氏は「どの派閥から何人ということは考えない」と語っていた。それでも党役員や閣僚の起用は旧派閥間のバランスを取ったとの見方もされている。一方、激しかった総裁選のしこりが尾を引く様相を見せている。
石破氏は総裁選で「私は至らぬ者だ。多くの足らざるところがあり、嫌な思いをした人が多かったかと思う」などと語った。その言葉は国会議員に向けたというより、これまで自身が関わった政策が、国民の期待に応えられなかったという自戒にも聞こえる。新政権が目指すのは、国会が一致して国民の幸せを考えることに尽きる。選挙の前に政権の本気度を示してもらいたい。