2024年(令和6年) 10月5日(土)付紙面より
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7月下旬に庄内などを襲った豪雨から2カ月が過ぎた。被害は最上地方なども含めて広範囲に及び、被害額は県の調べで約1051億円に上り、県内で起きた災害で過去最大になった。被害は河川の氾濫による家屋の浸水、土砂や流木による農地の被害も大きい。収穫の秋最盛期にイネの倒伏などで刈り取りを困難にしている。
被災地では復旧作業が連日続いているが、酒田市の山間地域では、土砂と一緒に襲ってきた流木類の撤去が作業を困難にしている。そんな中で各地から訪れるボランティアの活動も多い。場所によっては重機では難しく、「人の力」に頼らなければならない。高齢化が進む地域住民の心強い支えになっている。
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酒田市大沢では2、3日の間に平年の7月の1カ月分の降水量を超す約408ミリの雨が降った。気象庁が警鐘を鳴らす「経験したことがない」豪雨は、地球温暖化で海水温が上昇し、水蒸気が上空に大量に吸い上げられているのが大きな原因とされる。豪雨災害が全国各地で発生している背景には、人の営みが関わっていることになる。
土砂と一緒に流れ込んだ巨木類が被害を拡大させた。森林の荒廃で倒木した木々が雨で流出、川をせき止めてダム状態になり、土砂と一緒になって一気に流れ下る。遠目には緑に覆われている森林も、手入れが行き届かず、地面が露出したり倒木類が目立つ場合が多い。手入れされた森林は落ち葉などが土壌の侵食を防ぎ、木々が根を張り巡らすことで、土砂の流出や山腹の崩壊を防ぐ。自然災害を防ぐための森林整備事業は、政府の施策で強力に進めるべきであろう。そのために森林環境税もある。
戸沢村蔵岡地区は、たび重なる水害に集落の9割以上の世帯が集団移転に賛成した。1割強が「住み続けたい」と答えたというが、同地区の住宅地は地盤が低い。最上川の増水から集落を守る堤防があり、川から流入する水の逃げ場がない。酒田市の被災地でも「ここには住めない」などとの声も聞かれる。災害は、人の心まで折ってしまう。
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市街地でも「内水氾濫」による被害が起きる。酒田市でも小さなセキが新井田川の増水で逃げ場を失い、逆流するケースもある。中小河川の氾濫の怖さにつながるケースだ。普段通り慣れている道も冠水で状況は一変することを念頭に、注意しなければならない場所はないかを気にかけていたい。
戸沢村の移転アンケートは、安全な場所への集団移転を促す国の「防災集団移転促進事業」を受けてのこと。再び災害に遭わないための「最終手段」のような対策とも思える。それも国の重要な事業の一環だとしても、自然災害が起きない国土の環境整備こそが最優先。新政権が掲げる「国民の安心・安全を守る」政治が目指すところではないだろうか。