2024年(令和6年) 10月6日(日)付紙面より
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鶴岡市の三瀬地区(加藤勝自治会長)でエネルギーの自給自足に取り組んでいる。地区の山林整備で出た木質バイオマスを燃料に使用。公共施設や一般家庭で薪(まき)ストーブの導入を進め有効活用している。将来的には地区全体で1年間に使う灯油代試算(重油を含む)の「約1億円を薪木で賄おう」という壮大な構想も描く。
公共施設や一般家庭に薪ストーブ導入 山の手入れ・CO2削減・エネルギー循環目指す
海と山に接する三瀬地区は488世帯で人口は1194人(今年8月末現在)。かつては良質な木材がとれる地域として知られ、中心部に製材業が立ち並ぶほど盛んだった。ところが林業の衰退とともに山は荒廃した。
「荒れた山をこのままにはしてはおけない」「何とかしよう」―。勉強会を通して、三瀬には暖房エネルギーを十分生み出すポテンシャルがあることを再認識した住民は2017年、木質バイオマスの活用に向けた活動を本格スタートした。薪ストーブの導入に取り組み、現在は一般家庭を中心に約40軒が設置している。これまで住民を対象にした「薪割り体験」や、木のチップを敷き詰めた山道整備なども行ってきた。
三瀬地区のエネルギー試算(石油・電気・ガス)は金額ベースにして年間約3億6000万円。このうち石油は約1億円を占める。これを木質バイオマスに切り換え▽山の手入れ▽二酸化炭素の排出量削減▽エネルギーの地域循環―を目指す。
実証実験を兼ねて、いち早く薪ストーブを導入した三瀬コミュニティセンターでは今年5シーズン目に入る。薪ボイラーも備え、大ホールと玄関のエントランスを暖める。三瀬コミセンの竹内秀一事務局長(44)は「燃焼効率が高くて十分暖かいですよ」と話している。薪ストーブの導入後、石油ストーブは一切使っていない。冬場の燃料代も抑えることができた。三瀬保育園でも薪ストーブと薪ボイラーを備え付け、園児たちは石油臭さがない快適な冬を過ごしている。
加藤自治会長(74)は「いずれ化石燃料を使い続ける生活スタイルから脱却しなければならないと思う。環境のため、よりよい三瀬の未来を見据え『山』という地域の『宝』を有効に使いエネルギーを循環させる努力を続けたい」と話した。