2024年(令和6年) 10月26日(土)付紙面より
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新内閣発足から8日で解散した総選挙は27日、投開票される。国民生活に直結する課題が多い中で、自民党派閥の政治資金パーティーが発端の「裏金」と称される「政治とカネ」の問題が、本来、選挙で語られるべき政策より“声高”に聞こえた感がある。そのような選挙戦が、国民の目にどう映ったことだろうか。
山形3区の前回(2021年10月)の衆院選の投票率は65・77%。有権者28万7457人のうち、9万8389人が棄権したことになる。国民は国会議員に政治を委ねているが、国民が唯一国政に参加できるのは選挙。その権利を無駄にしてはならないことは言うまでもない。棄権せずに投票に行こう。
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総務省がまとめた戦後の衆院選の投票率の推移がある。中選挙区時代の投票率は大方が70%を超えていた。ところが1996年の衆院選は59・65%に下がった。この時から小選挙区比例代表並立制が導入された。中選挙区では同じ党派から複数の候補者が出ることもあり、切磋琢磨(せっさたくま)の論戦が展開され、有権者の関心も高かった。しかし政権交代が可能をうたい文句にした小選挙区では当落が分かりやすくなった分、関心が薄れたのでないか。
その後、投票時間を2時間延長して午後8時にしたが期待したほど投票率は上がらず、期日前投票導入(05年)で67・51%と持ち直した。17年から選挙権年齢を18歳以上に引き下げたものの、若年層の選挙への関心はなかなか高まらないこともあり、21年の選挙は55・93%。選挙への関心が高まらないのは、なぜだろうか。
人口減少社会に入り、将来の社会を背負う若い世代の役割は増す。今の政治にマイナス面があれば、その負担は必ず若い世代にかかってくるから、選挙に無関心ではいられない。「自分一人ぐらい投票しなくても」としての棄権は、「当選者への白紙委任」、「結果の追認」にしかならない。政治を動かすのは一人一人の投票行動であることを認識し、自分の将来を託すことができる人を選ばねばならない。
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投票時間の2時間延長時より、期日前投票導入時の方が投票率が上がった。定められた日に定められた投票所に行くのではなく、いつでも投票できるようになった選挙制度の改革による効果であろう。しかし、県内では60代前半から70代前半の投票率が80%を超えているが、50代前半から下の年齢層は低く、20代は40・05%。これでは若者の意見が反映されない。
かつて政権延命のための解散総選挙が繰り返され、政権による政治と選挙の私物化があった。今度の選挙は与野党が攻防を展開、選挙後は与野党勢力の拮抗(きっこう)で緊張感がある国会運営となりそうだ。とにかく、国民主役の政治に近づけるためにも、棄権することなく投票しなければならない。