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荘内日報ニュース


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2024年(令和6年) 2月1日(木)付紙面より

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穏やかな老後過ごしてほしい 鶴岡市立加茂水族館 16頭育てた重度白内障のマルコ(ゴマフアザラシ)ら 動物たちの高齢化と向き合う

 鶴岡市立加茂水族館(奥泉和也館長)で飼育しているゴマフアザラシの「マルコ」(雌)が今年3月で33歳を迎える。人間の年齢に例えれば90代半ば。重度の白内障で光の明暗しか分からない状態というが、獣医師の吉見則夫さん(51)と飼育員の伊藤愛さん(32)ら水族館スタッフの献身的な介護で穏やかな老後を過ごしている。吉見さんは「人間社会と同じように水族館の動物たちも高齢化の時代に入った。そうした個体とどのように向き合って世話をしていくかが大切」と動物福祉に取り組んでいる。

 マルコが生まれたのは1991年3月10日。成獣となった5歳の頃から毎年のように子どもを産み、これまでに16頭の赤ちゃんを育てた。現在、左目は失明。右目も白内障でほとんど見えない状態だが、飼育員の呼び声や物音で給餌の時間などをしっかり認識している。マルコが20代前半に迎えた最後の出産では目が不自由な中で赤ちゃんを前足で呼び寄せながら母乳を飲ませ、母親として立派に育て上げた。

 そんなマルコも年齢重ねるうち歯の根元が化膿(か)のう)するようになり、痛みで餌がうまく食べられない日も。「高齢個体の適切な扱い方を示した教科書がないだけにマルコからは毎日勉強させられる。いかにして有意義な生活を送らせるか。私たちの役割はとても大きい」と吉見さん。1日2回(朝夕)の投薬を続ける一方、伊藤さんら飼育員が食べやすいようアジのとげを取って与えるなどして今は元気に暮らしている。伊藤さんは「年齢を重ねた動物たちと一緒に知識や経験を重ね『動物介護』を学ばなければなりません」と話す。

 年明け早々にスタートした「ゴマフアザラシに餌やり体験」(午前の部と午後の部の2回)は、来館者向けに限って考えたイベントではない。「アザラシが餌を奪い合ったり、取り合ったりして野性的な感覚を奮い立たせ、退屈させない時間を与えたかった」と伊藤さん。動物の福祉と健康を考えた飼育方法「環境エンリッチメント」の一つという。

 全国的に30年以上前の水族館の姿は「アシカショー」などを多用。来館者を楽しませることに重きを置いたスタイルだったが、今は動物に寄り添った飼育環境を重視している。吉見さんや伊藤さんらスタッフは「それぞれ個体の体調にもよるが、なるべく高齢の動物たちを人前に登場させ全国から訪れるお客さんに環境エンリッチメントと動物福祉を考える機会を提供していきたい」と話している。

【環境エンリッチメント】
 飼育している動物たちの暮らしを豊かにすること。もともと動物が持つ野性的な行動を発揮できるような施設づくりや飼育方法(採食、社会、認知、感覚、空間)を指す。その中で採食は自然界で一日の大半を餌探しに費やしているが、動物園では苦労せず食べ物にありつけるため退屈な時間が多くなる。本能的な行動が発揮できるようにするため餌の種類を増やしたり与え方を工夫している。

 こうした取り組みは東山動植物園(名古屋市)や長崎バイオパーク(長崎県西海市)、旭山動物園(北海道旭川市)などが有名。動物園に限らず全国の水族館も同様の取り組みを重要視している。

専用の大きな測定板を使ったゴマフアザラシの体重測定。健康チェックは欠かせない
専用の大きな測定板を使ったゴマフアザラシの体重測定。健康チェックは欠かせない

カリフォルニアアシカの中で最高齢の「ゆず」。今年で26歳を迎える
カリフォルニアアシカの中で最高齢の「ゆず」。今年で26歳を迎える


2024年(令和6年) 2月1日(木)付紙面より

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日沿道 遊佐比子―遊佐鳥海6.5キロ 3月23日開通 酒田みなと―遊佐鳥海間12キロつながる

 国土交通省酒田河川国道事務所は31日、建設工事を進めてきた日本海沿岸東北自動車道遊佐比子インターチェンジ(IC)―遊佐鳥海IC間延長6・5キロに関し今年3月23日(土)午後4時に開通すると発表した。

 開通する区間は、2009年度に事業化された酒田みなと―遊佐鳥海間12キロの一部で、酒田みなと―遊佐比子間5・5キロは2020年12月に開通済み。設計速度80キロの2車線で無料区間となる。

 開通によって信頼性の高い道路ネットワークが形成され、重要港湾・酒田港を核とした物流の効率化、地域産業の活性化、環鳥海エリアの観光振興、地域救急医療体制の充実といった効果が期待されている。

 山形・秋田県境区間では、小砂川―象潟間7・3キロが25年度、県境をまたぐ遊佐鳥海―小砂川間10・6キロは26年度にそれぞれ開通見通し。今回の開通について、庄内開発協議会最高顧問を務める新田嘉一平田牧場グループ会長は「まずは良かった。素晴らしい話だ。秋田県境区間はめどがついたが、新潟県境区間はまだこれから。日沿道の早期全線開通へさらに力を尽くしたい」と語った。時田博機遊佐町長は「本町はじめ沿線地域が心待ちにしていた開通。秋田県境区間の一日も早い完成に向け、円滑に事業が進むよう協力していくとともに、遊佐パーキングエリアタウン事業を推進し、持続可能な地域づくりに取り組んでいく」、矢口明子酒田市長は「災害対応や救急医療体制の充実、物流や、観光振興など地域経済の活性化につながる。秋田県境区間が26年度までに開通する見通しが発表され、残る新潟県境区間の事業を促進し、一日も早い日沿道の全線開通に尽力したい」とそれぞれコメントした。

3月23日開通の遊佐比子―遊佐鳥海間で、建設工事が進む遊佐菅里IC付近(国土交通省酒田河川国道事務所提供)
3月23日開通の遊佐比子―遊佐鳥海間で、建設工事が進む遊佐菅里IC付近(国土交通省酒田河川国道事務所提供)


2024年(令和6年) 2月1日(木)付紙面より

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「農」コンセプトに スイデンリゾート展開 ヤマガタデザイン 日本エスコンと連携

 街づくり会社ヤマガタデザイン(鶴岡市、山中大介社長)は29日、不動産開発の日本エスコン(東京、伊藤貴俊社長)と連携し、全国に「農」をコンセプトとしたホテル「SUIDEN RESORT(スイデンリゾート、仮称)」を展開していくと発表した。ヤマガタデザイングループが同市で運営する「ショウナイホテルスイデンテラス」をモデルに、観光と農業による地域活性化を全国で実践していく。

 スイデンテラスは2018年に開業。年間6万人の宿泊利用があるという。グループの農業事業との連携で、自社栽培のベビーリーフをはじめ、地域の生産者の協力で調達した食材を提供し、朝食バイキングで80%以上の地産地消率を実現するなど、農業をコンセプトにした食や宿泊事業を展開している。

 こうしたノウハウを生かし、ホテル開発やプロ野球・北海道日本ハムファイターズの新球場を核にした街づくりに参画するなどしている日本エスコンと連携し、観光と農業による地域づくりを展開する。

 日本エスコンとスイデンテラスを運営するヤマガタデザインリゾート(鶴岡市)が業務提携し、農業事業を担う有機米デザイン(東京)は日本エスコンを引受先とする第三者割当増資で2億円を調達した。山中社長は「スイデンリゾートを全国に展開することで、全国の地方活性化に大きく貢献できると考えている」とコメントした。全国展開の第1弾として県外での事業化を検討している。

「スイデンリゾート」の全国展開に向け連携を発表した山中社長(右)と伊藤社長=ヤマガタデザイン提供
「スイデンリゾート」の全国展開に向け連携を発表した山中社長(右)と伊藤社長=ヤマガタデザイン提供


2024年(令和6年) 2月1日(木)付紙面より

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続教育の杜65 VUCAの時代こそ、「学び」の本義を

 近年の科学技術の進歩によって私たちを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、次々と不確実で想定外のことが起こり、将来の予測が困難な状況にあることから、現代は「VUCA(ブーカ)の時代」とも呼ばれています。「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった造語で、元々は東西冷戦終了後の1990年代後半、複雑化した国際情勢の中で戦局が見通せない状況を示す軍事戦略の用語として米軍で用いられてきたようです。そして、2010年頃から、変化が激しく先行きが不透明な社会情勢を指してビジネス分野でも使われ始め、16年に開催された「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で取り上げられたことによって世界的な共通認識となりました。さらに、昨年3月に中教審から出された「次期教育振興基本計画について(答申)概要」に「VUCAの時代」という言葉が記載され、日本の教育にも登場するようになりました。

 このような社会の変化に応じて教育内容・指導も大きく変わり、現在の学校現場では教育DXの推進によって校務のデジタル化をはじめ、カリキュラムや学習の在り方を革新するとともに、時代に対応した教育が確立されつつあります。しかし、子どもたちの技術的な情報活用能力がいくら向上しても忘れてならないのは、教育の根幹である「学び」の本義です。ややもすると、教育においては「知る」ことに重点を置きがちですが、それは対象を単なる事実として捉えることです。「学ぶ」ということは、対象の本質に気づき、他に応用・活用できるようにすることなのです。

 「他人の真似をする」。この言葉は、独創性や創造性を育むことを目的とする今の教育においてはそぐわないと批判する人が少なくないと思います。しかし、「学ぶ」の語源は「学(まね)ぶ」であり、「真似(まね)ぶ」と同じです。幼児は、見たり聞いたりするもの全てを「真似る」ことによって身につけ、これらを知力・能力としていきます。つまり、「学ぶ」ことは「真似る」ことから始まるのであり、古今の多くの人物が「真似る」ことの重要性を論じています。

 例えば、世阿弥は能の理論書と言われている著書「風姿花伝」の中で、『おおよそあらゆるものをすみずみまでそのまま真似ることが本意である』、すなわち、真似ることは自分の技量を高めることに繋がっていると述べています。

 また、吉田兼好は「徒然草」85段の中で、『偽りても賢を学ばんを、賢といふべし(偽りでも賢さを真似したらその人を賢いというべきだろう)』と、良いものの真似の意義を説いています。

 日本の武道や芸道では、師匠や先生から基本の「型」の指導を受けて、その型を「真似る」ことから「学び」が始まります。また、アップルの創業者スティーブ・ジョブズや画家パブロ・ピカソは、偉大なアイデアを真似、貪欲に盗んできたと自ら述べています。単なる物真似ではなく、明確な目的を持ちながら「真似る」ことは、それを自分の課題に取り込むことによって内在する能力を掘り起し、さらにそれを極めていけば独創性や創造性を培うことになるのです。「学び」の始まりである「真似び」の意義を今一度考えるとともに、予測困難で変化の激しい「VUCAの時代」の中で、子どもたちが社会に流されることなく確固たる「学び」を通して自己を確立し、未来に向けて自らが社会の創り手となり、持続可能な社会を維持・発展させていくことを願っています。

鈴木孝純(東北公益文科大学理事長補佐)


2024年(令和6年) 2月1日(木)付紙面より

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「北楯大堰」紙芝居動画 県HPとユーチューブ公開

 世界かんがい施設遺産に登録されている庄内町の「北楯大堰」を開削した北館大学助利長公(1548―1625年)の功績を紹介する紙芝居を撮影した動画が県ホームページの動画チャンネルや動画投稿サイト「YouTube」で公開されている。

 利長公は最上義光公配下の武将で1601(慶長6)年に狩川城主となった。水利が悪く荒廃がひどかった一帯を憂い、立谷沢川から取水する堰の開削を計画し、1612年に着工。およそ4年をかけた難工事の末、5000町歩もの田が潤い庄内農業の礎を築いた。北楯大堰は2018年に歴史的価値のある農業用水利施設を国際かんがい排水委員会が表彰・登録する同遺産に選ばれている。

 紙芝居は庄内町狩川の風車村周辺で環境イベントなどを企画・運営する「風車村エコランド実行委員会」(柿崎寿一実行委員長)が北楯大堰に関するイベントを進める際、参加者に「庄内の大恩人」である利長公の業績を分かりやすく伝えようと文献などを参考に22年10月に制作、翌年5月の北舘神社例大祭で奉納上演したもの。

 動画制作は県の農業農村整備事業を広くPRしようと21年から活動している広報チーム「庄内総合支庁農村計画課プロジェクトAチーム」が企画。エコランド実行委員会メンバーのインタビューと、同会メンバーが語りを務める紙芝居本編を計約16分の動画にまとめた。紙芝居では、荒れ狂う川のため工事が難航し「水ばか殿様」と陰口を言われながらも、大事業を成し遂げた利長公の業績を15枚のイラストで表現、同会メンバーが情感豊かに演じている。

 同支庁農村計画課では「動画を通して県外など多くの人に北楯大堰や、堰にまつわるストーリーについて知ってもらえれば」としている。今後はインバウンド向けに語りを英語にした動画も制作予定という。

北楯大堰紙芝居動画の一場面
北楯大堰紙芝居動画の一場面



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