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荘内日報ニュース


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2024年(令和6年) 6月19日(水)付紙面より

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酒田 中心市街地の空き家抑制 所有者と購入者つなぐ仕組み構築 こ家(や)プロジェクトスタート 地元高校生も参加利活用考える

 酒田市中心市街地で増え続ける空き家の抑制を目的に、所有者と購入者をつなぐ仕組みを構築する空き家情報総合プラットフォーム事業「こ家(や)プロジェクト」がスタートした。総合建設業・菅原工務所(同市東栄町)の菅原脩太社長(40)が地元企業の協力で手掛けるもの。同社が所有する同市日吉町二丁目の空き家で15日午後、利活用促進に向けた初めてのイベントが開かれ、地元高校生がワークショップ形式で活用法を考察した。

 酒田市と事業構想大学院大学(東京都)、住友商事(同)は昨年度、庄内エリアにおける地域課題解決に資する事業の構築、人材の育成などを目的にした「庄内事業構想プロジェクト研究」を開講。事業構想大学院大の修士課程カリキュラムによる計20回の講座を通し、菅原社長を含め市内外から集まった研究員が視野を広め、視点を磨きながら新たな事業を構築した。

 同研究で菅原社長が取り組んだのは、年々深刻化する空き家問題。今年1月現在の市内における登録空き家件数は2600件余に上り、このうち旧市内が6割を占めることから「このままでは中心市街地が『廃墟街』になってしまう」との危機感を抱き、所有者・購入者が抱える問題を一つずつ寄り添いながら解決に導き、双方をつなぐことで空き家抑制に寄与する同事業を築き上げ、今年3月に発表した。

 菅原社長によると、具体的には空き家情報に関する総合プラットフォームサイトを設立。さまざまな業種の地元企業と連携して情報コンテンツの充実により、認知度向上、物件の一元化を図っていくという。「こ家プロジェクト」の「こ家」は、▽古い▽小さい▽個性的な―空き家の意味。

 空き家の実態、利活用促進を含む事業の概要について多くの市民から知ってもらおうと菅原社長がイベントを企画し、いずれも同市の不動産業・エリア、警備業・セキュリティ庄内が協力。活動の舞台となった空き家(延べ床面積約120平方メートル)は以前、鮮魚店を営んでおり、地下があるのが特徴。2021年まで人が住んでいたという。この日は市内各校から、探究学習で中心市街地の活性化など研究している生徒たちが参加した。

 菅原社長の案内で家屋を見学した後、車座になってこの空き家の利活用を考察、「古民家感を生かしたコスプレイベント・撮影会場」「外国人から酒田の生活を知ってもらうための民泊施設」「近所にスーパーがない。野菜などを扱うマルシェに」といった意見が出された。

 このほか、骨董(こっとう)品や柴犬グッズを販売するフリーマーケットも行われ、市民らでにぎわった。菅原社長によると、事業展開に向けて今夏にもNPO法人「こ家プロジェクト」を立ち上げるという。

車座になって空き家の活用法を考察する高校生たち
車座になって空き家の活用法を考察する高校生たち


2024年(令和6年) 6月19日(水)付紙面より

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涼しげ仙台七夕「吹き流し」 山王くらぶ 傘福展示と色彩豊かに

 酒田に古くから伝わるつるし飾りの一種「傘福(かさふく)」を集めた「湊町酒田の傘福」が開かれている酒田市日吉町二丁目の観光施設「山王くらぶ」で、毎年8月初旬に宮城県仙台市で行われている「仙台七夕まつり」の吹き流しが展示され、涼しげな雰囲気を醸し出している。

 酒田商工会議所女性会(岩間奏子会長)が「傘福も七夕飾りも願い事を託して飾るもの。何かタイアップできないか」と、商工会議所間で交流のある仙台商工会議所に依頼。仙台藩主・伊達政宗公の時代から続く伝統行事として受け継がれている「仙台七夕祭り」で飾られる七夕飾りの一つ「吹き流し」10基を借り受けた。

 吹き流しは長さ約1・2メートル、上部のくす玉は直径約30センチ。重さは約1キロ。16日に女性会メンバーが大広間に展示。鮮やかな布細工がつり下げられた傘福とともに、緑や赤、黄色といった色彩豊かな吹き流しが並び、会場に彩りを添えた。

 岩間会長は「見て奇麗というのはもちろん、傘福も七夕飾りも思いが詰まったもの。そうした思いも感じてもらえれば」と話していた。吹き流しはお盆ごろまで展示予定。

山王くらぶで「仙台七夕まつり」の吹き流しが展示
山王くらぶで「仙台七夕まつり」の吹き流しが展示


2024年(令和6年) 6月19日(水)付紙面より

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羽黒山の歴史的建造物に学ぶ 改修現場で解説 国宝・五重塔の構造や特徴

 出羽三山歴史博物館主催の「羽黒山文化財講座」が16日、鶴岡市の羽黒山中の国宝羽黒山五重塔や同山頂の出羽三山神社(阿部良一宮司)の三神合祭殿で行われた。杮(こけら)葺き屋根改修工事中の五重塔では、建物全体の構造について参加者たちが専門家の解説を聞き、工事用足場を上って屋根の形状を見学した。

 出羽三山は2016年に「生まれかわりの旅」として日本遺産に登録された。その重要な要素の一つとして、歴史的建造物や伝統文化など文化財がまとまって存在することが挙げられる。今回の講座は、国宝羽黒山五重塔の屋根の葺きや内部の構造、国指定重要文化財の三神合祭殿、鐘楼に触れ、技術や歴史について深く理解してもらおうと同博物館が企画、県建築士会(伊藤彰会長)が後援した。

 国内の歴史建造物の研究者や県建築士会の会員企業関係者、一般など約50人が参加。講師は日本建築意匠研究所代表で工学博士、一級建築士の松崎照明さん(東京都在住)が務めた。

 午前中は羽黒山頂の合祭殿や斎館、鐘楼などを巡った。午後は五重塔前で松崎さんによる塔の特徴についての解説に耳を傾けた。

 松崎さんは「羽黒山五重塔は室町時代前期の1378年に建立された。同時期に建立された広島県の明王院五重塔と比較すると、羽黒山の塔は屋根の傾斜が優しく緩やか。積雪による屋根へのダメージを考えると、大雪が降る地域でこれほど緩やかなのはなぜか」と参加者へ問いを投げ掛けた。

 さらに「薄い板を何枚も重ねる葺き屋根をはじめ最上部の相輪(金物)は小さく、建物の幅が細い。装飾が全くない“純和様”で伝統的な手法が用いられている。地方独特のオリジナリティーは用いられず洗練された都様式の造りを考えると、当時から羽黒山と中央のつながりが深かったと思われる。緩やかで曲線が美しい屋根など京風の建築デザインに加え、杉林に包まれた景観と塔のたたずまいが万人の心を感動させるのだろう」と解説した。

 その後、屋根改修工事を担当している市村工務店(本社・山形市)社員の案内で、修繕中の1、2層の屋根部分を見学。緩やかに反り返った傾斜を眺め、納得したような表情を浮かべていた。

 講座に参加した県建築士会の伊藤会長は「羽黒山五重塔の構造を見られるまたとない機会で、多くの会員が参加してくれた。松崎先生の講話を聞き、20年ほどの短い期間で屋根の改修が必要になる理由が納得できた。今後も歴史的価値の高い建造物を守っていかなければならないと改めて感じた」と話していた。

松崎さん(右端)の説明を聞きながら、羽黒山五重塔の屋根の形状について参加者たちが理解を深めた
松崎さん(右端)の説明を聞きながら、羽黒山五重塔の屋根の形状について参加者たちが理解を深めた


2024年(令和6年) 6月19日(水)付紙面より

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出羽庄内国際村が開設30周年

 鶴岡市の国際交流センター「出羽庄内国際村」が開設30周年を迎え、記念イベントでは外国人によるのど自慢大会も好評だった。地方都市も国際色豊かになったということだが、その陰で人知れずに忘れ去られようとしている文化財もある。南米アマゾンの2万点を超す貴重な民族資料だ。

 出羽庄内国際村に併設されていた「アマゾン民族館」が2014年3月に閉館して10年。市の行財政改革の一環という、いわば費用対効果という面からやむなく閉館したとも言え、併せて文化財の活用方法はどうあるべきかを、あらためて考えさせられる。

◇      ◇

 「雪国になぜアマゾンが?」という疑問も湧く。それらは、鶴岡市の文化人類学研究者、山口吉彦さんが半生をかけて収集した民族資料ばかり。出羽庄内国際村開設の中心施設として、「貴重な資料を通じて子どもに夢を」と、市の肝いりでアマゾン民族館は開設された。資料の維持管理は、入場料収入だけでは賄えず、税負担も伴った。折からの旧民主党政権下で、事業仕分けと称した行財政改革を背景に、市議会の審議を経ての閉館だった。

 山口さんが現地人と一緒に生活した信頼関係で入手した資料もある。絶滅の恐れがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約で入手できないものもある。閉館後、山口さんは自宅を改造するなどして保存・管理に当たっているが、何しろ資料が膨大で個人の資力では限界がある。

 鶴岡市出身の作家、藤沢周平さんがエッセー『立ちどまる絵』(「ふるさとへ廻る六部は」)で、次のようなことを書いている。東京の名園・六義園 (りくぎえん)を見て「昔の大名は贅沢(ぜいたく)なものだったと思いながら園内を歩き、金と権力がないと残らない文化というものもあると感じた」と。六義園は江戸幕府の権力者の中屋敷の庭園として、財をいとわずに造られたのだろうか。対するアマゾン民族資料は、「金と権力」とは無縁の、個人の乏しい資力で収集したものばかりだ。そこにこそ資料の意義がある。

◇      ◇

 南米アマゾンは森林の乱開発が進み、住民の生活環境の変化から伝統の文化財も失われている。鶴岡市は食文化創造都市を内外に発信する一方、出羽三山信仰とサムライゆかりのシルク、加茂地区の北前船寄港地・船主集落が日本遺産に認定されている。そうした中で、アマゾンという異文化を守るという事も、鶴岡市の「文化度」を発信することにならなかったのだろうか。

 アマゾン民族館は「個人のコレクション的な物」に市が財政負担するのはいかがなものかという考えなどでの閉館だ。文化財を単に「費用対効果」で価値判断することなく、学校教育の一環という人づくりのために活用することはできなかったものか。それでこそ国際交流センターの機能も、より生きることになるのではないか。

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2024年(令和6年) 6月19日(水)付紙面より

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ワイン3品「サクラアワード」ゴールド賞 ワイナリー松ケ岡と月山ワイン山ぶどう研究所が受賞

 女性審査員のみで優れたワインを決める「”SAKURA”Japan Women,s Awards」(サクラアワード)2024で、庄内のワイン3品がゴールド賞を受賞し17日、鶴岡市羽黒町松ケ岡のピノ・コッリーナで授賞式が行われた。同アワードを主宰する田辺由美氏が来県し、受賞ワインを醸造したピノ・コッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡と、JA庄内たがわ農協月山ワイン山ぶどう研究所に記念の盾を手渡した。

 サクラアワードは、日本のワイン業界で活躍する女性が審査を行う国際的なワインコンペティション。11回目の今回は27カ国から4023品のワインがエントリーされた。ゴールドは全てのカテゴリーの中で、審査員の平均点が88~93点未満のワインに与えられる。最高賞のダイヤモンドトロフィー、ダブルゴールドに続く優秀賞で1441品に贈られた。

 受賞した庄内ワインの銘柄は、ピノ・コッリーナがいずれも白ワインの「鶴岡甲州2022」と「蔵出し甲州2023」、月山ワインが赤の「ソレイユルバンベーリーA2019」。

 授賞式は田辺氏のトークイベントも兼ねており、県や市、酒販業者など約30人が出席した。参加者が見守る中、月山ワイン山ぶどう研究所の醸造担当者の阿部豊和さんと、ピノ・コッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡の早坂剛社長に記念の盾が贈られ、それぞれ「いつも応援してくれる皆さんのおかげ。これを機にますます精進したい」と謝辞を述べた。

 その後のトークイベントで田辺氏が「2014年に始まったサクラアワードは、『ワインをもっと知ってもらい、楽しみ方の手段を提供する』『日本の家庭の食卓に合うワインの発掘』『女性の活躍の場を増やす』の3つがスローガン。国内のエントリー数は山梨県に続いて山形県が多い。ワイナリーは27と少ないが61アイテムが出品しており、県民の熱意を感じる」とサクラアワードについて解説した。

 また、OIV登録品種協議会代表理事の松尾英里子氏が庄内産甲州ぶどうの魅力について「江戸期に鶴岡市西荒屋で栽培された記録が残っており、山梨県と同じぐらいの歴史がある。甲州ぶどうの北限であり、ミネラルや塩味を感じる切れのある酸味が特徴。全国で甲州が品薄となっており、鶴岡産甲州を求める声が高まっている」と述べた。

 続いてテイスティングセミナーが開かれ、田辺氏が各受賞ワインの風味や特徴、おすすめの飲み方などを指南。「グラスを10回ほど回すと香りが立つ」「口に含むとフレッシュ感が際立つ」「赤はぜひ、ウナギと一緒に食したい」などと解説した。

ピノ・コッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡の早坂社長(上)と月山ワイン山ぶどう研究所の阿部さんへゴールド受賞の盾が贈られた
ピノ・コッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡の早坂社長(上)と月山ワイン山ぶどう研究所の阿部さんへゴールド受賞の盾が贈られた



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