2017年(平成29年) 1月28日(土)付紙面より
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雪になじみのない外国人旅行客から雪遊びを楽しんでもらい、雪深い自然環境を魅力として発信し誘客につなげようと、鶴岡市のあつみ温泉にある旅館と、地元のNPO法人が連携して雪遊び体験事業を展開している。26日からは、春節(旧正月)の大型連休で訪日している台湾からの旅行者を対象にモニター体験を開始。温泉街近くの特設会場で雪灯籠やチューブ滑りなどを体験させている。
同市温海地域の海や山といった豊かな自然や文化を活用した体験型観光を幅広い年代層にコーディネートしていこうというNPO「自然体験温海コーディネット」(五十嵐伊都夫代表)と、あつみ温泉の高見屋別邸久遠、たちばなや、萬国屋の3旅館が今回初めて企画した。
日本政府観光局によると、2016年の訪日外客数は1月10日発表の推計値で前年比22%増の約2400万人で、5年連続で前年を上回っている。あつみ温泉でもこの影響は見られ、高見屋別邸久遠では、年間約500人の外国人宿泊客が2年前からは約800人に増加しているという。
この一方で、あつみ温泉では特に冬季間、夕食後の時間に、Wi―Fi(公衆無線LAN)が整備してある旅館のロビーで過ごすなど手持ち無沙汰な旅行客の姿が見られた。こうした課題を解決するため、旅館側が同NPOに働き掛けて企画し、26日から来月2日までの期間をモニター体験として実施。
雪遊び体験の流れは、各旅館で宿泊客へ当日声を掛けてもらい、1人500円で参加希望者を募集。参加者は温泉街からバスで10分ほど移動し、同市一霞地内にある道路沿いのカブ畑を利用した特設会場へ。午後8時ごろから約1時間活動する。内容は、スノーチュービングや、雪上宝探し、ミニ灯籠作り、かまくら体験など。体験活動の専門的な知識技術を持つ地元住民などが有償でスタッフを務め、事前の会場設営や当日の活動をサポート。市温海庁舎は灯光器などの貸し出しで協力した。
1月中旬から進めてきた研修などを経て、26日は初めての本番。スタッフ約10人、チャーター便ツアーで訪日している台湾からの旅行者34人が参加した。初めにスタッフが、ツアーガイドから通訳で協力してもらいながら自己紹介や内容説明。
初めて雪に触れるという参加者が多い中、緩斜面に特設したコースのチューブ滑りや、旅館から提供してもらったアメニティーグッズ詰め合わせを探す雪上宝探しなどが行われた。ミニ雪灯籠作りでは、スタッフのジェスチャーで作り方を教わりながら一人一人がバケツや移殖ベらを使って作成。ろうそくの明かりが照らす幻想的な景色が広がると、歓声を上げていた。
参加した40代の夫婦は「東北地方へは初めて。雪遊び体験は楽しかった。多くの台湾人が喜ぶ内容だと思う」と話していた。
同NPOで観光コーディネーターを務める冨樫繁朋さん(37)は「当初20人ほどの受け入れ定員で企画しており、声を掛けた60人のうち約半分の方から興味を持っていただいたということで、ニーズはあると感じた。今後は、地元と外国の子どもたちが交流する場もつくりたい。将来の温海の観光人材の育成にもつなげられれば」と話していた。