2018年(平成30年) 5月5日(土)付紙面より
ツイート
鶴岡市山五十川の河内神社で3日、例祭の「春祭典」が行われた。同地区に伝わる「山戸能」と「山五十川歌舞伎」の2つの県指定無形民俗文化財が同神社境内の古典芸能伝承館で奉納上演され、地区内外から集まった観客が役者の熱演を楽しんだ。
山戸能は平安時代初期、能楽に有能な人が始め、その後同市黒川地区から移住した人たちが多くの演目を伝えたとされる。また、山五十川歌舞伎は江戸時代中期、神事に伴う村芝居として始まったという。
現在は山五十川古典芸能保存会(佐藤三吉会長)の下、山戸能一座(三浦市樹座長)と山五十川歌舞伎一座(尾上菊之丞座長)がそれぞれ伝承している。一つの集落で能と歌舞伎の両方が受け継がれている例は全国でもまれで、能は1964年、歌舞伎は86年に県の文化財に指定された。
能の上演は「座揃囃子(ざぞろいばやし)」に始まり稚児舞の「恋慕の舞」、天下太平や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る「式三番」、酒好きの猩々(しょうじょう)が親孝行の高風に酌めども尽きぬ酒つぼを与えた番能「猩々」を披露。
続く歌舞伎は十数年ぶりの「箱根霊験躄仇討(れいげんいざりのあだうち)『箱根山中施行の場』」を上演。役者がせりふを決めて見えを切ると、地元住民から「いいぞ」と声援が飛び、県内外から訪れた観客からは大きな拍手が送られた。