2021年(令和3年) 3月16日(火)付紙面より
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新たな働き方として注目される「ワーケーション」のモニターツアーが12―14日の2泊3日の日程で、鶴岡市温海地域で行われた。県内外の約30人が焼き畑による赤カブ栽培や海岸漂着ごみの各現場に出向くなど、SDGs(国連の持続可能な開発目標)を見据えた新時代のライフスタイルを考えながら、地域滞在を楽しんだ。
ワーケーションは、観光地などでテレワークを活用し、休暇を楽しみながら働くもので、コロナ禍を機に、新たなライフスタイルとして関心が高まっている。今回は、温海温泉旅館組合(若松邦彦組合長)が市の助成を受けて実施。参加費は無料で、県内を中心に10―60代の男女26人が参加し、あつみ温泉の旅館に分散宿泊した。
ツアーは「懐かしい未来を紡ぐ」をテーマに、ワークショップを通じてSDGsへの理解を深める「SDGsツーリズム」を骨格に据えた。
2日目の13日朝、参加者はあつみ温泉の高見屋別邸久遠のロビーに集合。鼠ケ関地域協議会「蓬莱塾」メンバーの冨樫繁朋さんから「カブは8月に稲作の豊凶を見極めてから種をまき、11月に収穫した命をつなぐ作物。山の木を切った後、焼き畑で育て、木が育つ60年サイクルで林業と一体的に作られてきた」など温海かぶの話を聞いた。
参加者はその後、槙代地区の焼き畑ほ場に移動。温海町森林組合の忠鉢春香主任から「1980年の木材の輸入自由化で木材価格は10分の1になり、山は荒れた。5年前から森林組合が皆伐後に赤カブを育てて売り、そのお金で再造林して杉を保育、山を返す試みを始め、軌道に乗りつつある」という話を聞いた。
自身もワーケーションの企画を構想しているという村山市の起業家、末永玲於さん(22)は「林業と農業などいろんな人の関わりで回っている仕組みが循環モデルとしてすごい。古人の知恵から現代の課題を照らすというこの企画もうまく、参考になる」と話した。
14日は海岸で漂着ごみの現状を視察した。旅館組合では8―19日の間、2―4泊を自由に過ごしてもらうフリーワーケーションのモニターも実施中で、これまで5人を受け入れている。
旅館組合幹事の高橋勇さん(久遠支配人)は「ワーケーションは新たな滞在の形として期待しているが、企業側の理解も必要で、浸透には数年かかると思う。モニターの意見を踏まえ、新年度は各旅館や温泉街でコワーキングスペース拡充など環境改善を進め、本格的な受け入れにつなげていきたい」と話した。