2022年(令和4年) 1月4日(火)付紙面より
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鶴岡市の羽黒山山頂で31日から1日にかけ、五穀豊穣(ほうじょう)や疫病退散などを祈る出羽三山神社の伝統祭「松例祭」が行われた。訪れた参拝者たちが新型コロナウイルスの収束など、それぞれの願いを胸に新年を迎えた。
同市羽黒町の手向地区から選ばれた位上(いじょう)と先途(せんど)と呼ばれる松聖(まつひじり)2人が9月24日から100日間にわたって修行を積む「冬の峰」の満願に合わせて行われている。昨年は新型コロナウイルスの影響で、無参拝で規模を縮小して開催。今回も、縁起物の切綱を参拝者に投げ与える「綱まき」や国指定重要無形文化財の「大松明(おおたいまつ)引き」、補屋での親玉(おにぎり)や御神酒の振る舞いなどを取りやめたが、参拝を2年ぶりに受け付けた。
この日は断続的に雪が降りしきる中、多くの参拝者が訪れ、祭事の様子を見守った。大松明引きの代わりに行われた祭事では、位上方と先途方の若者頭2人が松明を手にし、法螺(ほら)貝の合図で約30メートル先にある大松明(高さ約3メートル)に向かって疾走。今年一年の禍を表すツツガムシに見立てた大松明に火を付け、疫病退散や豊作、豊漁を祈願した。
続いて、羽黒の神が自らの縄張りを示す国分(くにわけ)が行われた後、火の打替え神事へ。新しく清浄な火がともった松明を山伏4人が振り回し、新年を迎えた。
毎年家族で松例祭に参加しているという仙台市の吉田まい子さん(50)=自営業=は「2年ぶりに参拝できてうれしい。コロナの影響で経営がなかなか厳しいので、今年こそは収束を」、娘のつむぎさん(12)は「早くみんなと会話しながら給食が食べたい」、初めて松例祭に参加した東京都の山内敦雄さん(63)=会社員=は「神秘的で清々しい気持ちになれた。昨年は普通の生活がとてもありがたく感じられた年だった。一日でも早く収まってほしい」とコロナ収束を願いながら、静かに燃える大松明の火をじっと見つめていた。