2021年(令和3年) 3月24日(水)付紙面より
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疫病から村人を守った言い伝えがある庄内町廿六木(とどろき)集落の「下塚の行者の松」が、根元から折れ住民を悲しませている。傘のような枝ぶりが見事で、地区のシンボルとなっていた。先月上旬の強風に耐えられず、折れたものとみられている。
旧余目町が発刊した冊子「あまるめの名松100選」によると、「下塚の行者の松」は高さ19メートル、幹回り4・2メートル、樹齢は300年以上とみられている。塚に眠る呪術師・容海(ようかい)上人が「疫病が流行したときには私に願いなさい」と言い残した伝説があることから「容海の遺言の松」ともいわれている。
約20年前に酒田市の樹木医に診てもらったときは「まだ樹勢があるから大丈夫」とのお墨付きをもらったが、数年前に落雷が直撃。太い幹にひびが入り、地区民を心配させていた。
強風で折れた後は、集落内で話し合いの場を持ち、撤去することで合意。土地所有者の庄内町が40万円の予算を計上した。
22日に行われた撤去では、町内の製材業者が幹をチェーンソーで輪切りにしたり、枝をそろえてトラックに積み込む作業を進めていた。幹や枝は薪(まき)ストーブの燃料などに有効利用する。
廿六木集落自治会の鈴木修二会長は「折れてしまったことは、とても残念でならないが、疫病退散の力を持つ容海上人が、コロナ禍が一日も早く収束するよう身代わりになってくれたのだろう、と思っている住民もいる。使える幹の一部は廿六木公民館の看板に仕上げて、これまでと変わらず集落の心のよりどころにしたい」と話していた。
廿六木集落の「上塚と下塚伝説」とは、今から約350年前、呪術師の千光院と容海上人が廿六木地域で伝染病が流行した際に現れ、疫病退散の祈祷(きとう)をしたところ不思議と村人全員が回復。県立庄内総合高校の近くにある「上塚」には千光院が、「下塚」には容海上人が眠り、集落民を守り続けていると言い伝えられている。