2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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広島信用金庫(本店・広島市、川上武理事長)の顧客でつくる旅行会「広島信用金庫おもと会」の旅行団(4団、約120人)が12日から20日にかけ、3泊4日の行程で本県や福島県を巡っている。各団とも初日は鶴岡市を訪れ、致道博物館や致道館で同市の文化と歴史に触れている。
鶴岡信用金庫(佐藤祐司理事長)が働き掛けた観光誘致を基に、南東北を巡るツアーをおもと会が企画。鶴岡信金はこれまで、全国の信金ネットワークを生かした観光振興に取り組んでおり、各信金の年金友の会や旅行会を庄内に招致している。
近年はコロナ禍の影響で旅行会などは遠地への旅行が慎重かつ少人数傾向となっており、100人超規模のツアーが庄内を訪れるのは数年ぶりという。
今回、1団につき30人前後、計120人ほどがツアーに参加。各団とも初日は「現存する東北地方唯一の藩校建築」の触れ込みで、鶴岡市の致道館と致道博物館を訪問し、同市の湯野浜地区に宿泊する。
13日はおもと会の第2団約35人が来鶴。庄内空港から大型バスで移動し、致道博物館を訪れた。鶴岡信金の佐藤理事長など役員や若手職員、市職員などが出迎え、ツアー客一人一人に「ようこそいらっしゃいました」と声を掛けた。
あいにくの雨天となったため屋内で式典が行われ、佐藤理事長が「晩秋の東北を楽しみ、思い出に残る旅となることを祈ります」、旧庄内藩主酒井家19代で同館の酒井忠順館長が「11代忠発(ただあき)の隠居所・御隠殿や多層民家などをじっくり見て、庄内の歴史や文化を楽しんでほしい」とそれぞれ歓迎の言葉を述べた。
ツアー客は2班に分かれ、御隠殿や多層民家(旧渋谷家住宅)などを見学。つるおか観光ガイドが案内し、鶴岡信金の若手職員が要所で施設の歴史などが書かれたパンフレットを配るなど補佐を務めた。
鶴岡信金職員の小野琴巳さん(25)は「観光案内ができるようにいろいろ勉強してきたけど、緊張してうまく伝えられなかったのが残念」と話していた。一行は2日目に庄内を離れ、戸沢村での最上川舟下りや米沢市の上杉神社を訪問。3日目以降は福島県に入る。
2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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鶴岡田川地区を中心にした庄内地域の文芸愛好者でつくる「らくがき倶楽部」(佐々木秀子会長)の第53回らくがき文学賞と、大泉散士賞・郷土出版記念賞の授賞式が12日、鶴岡市の新茶屋で開かれた。出羽三山信仰に根差した地元の文化を記録し続け、「出羽三山絵日記」などの著書がある庄内民俗学会会員の渡辺幸任(ゆきと)さん(74)=鶴岡市本町二丁目=に文学賞を贈り、散士賞1点、出版記念賞3点を表彰した。
渡辺さんは熊本県栖本町(現天草市)出身。1993年から出羽三山にあった「掛け小屋」の写真収集と小屋の生活の取材を始め、翌94年4月から荘内日報に「出羽三山絵日記」のタイトルで投稿。これまでの本数は291編に上る。投稿の原稿をまとめた「出羽三山絵日記」のほか、「出羽三山信仰と月山筍」を出版している。らくがき倶楽部会員。
前年度に出版されたさまざまな分野の郷土の作品から選ぶ、「大泉散士賞」は半澤活(たつき)さん(63)=鶴岡市羽黒町十文字=の「いのちのシナリオ―『あのよびと』と私の不思議な12の物語」、郷土出版記念賞は酒井天美さん(78)=同市家中新町=の歌集「四季の恵」、島田高志さん(66)=同市上畑町=のフォト俳句小景集「庄内彷徨」、櫻井田絵子さん(65)=同市大山二丁目=のエッセー集「月のような山 あの頃に戻る時間」に贈られた。大泉散士賞(鶴岡書店組合賞)は同倶楽部創立期メンバーで、庄内地域の出版文化の礎を築いた大泉散士さん(本名・阿部整一)の功績をたたえて2年前に創設。半澤さんには鶴岡書店組合の阿部等組合長から賞状が手渡された。
授賞式に先立ち、同倶楽部創設メンバーの一人で初代会長を務め、先月亡くなった畠山弘氏に出席者全員で黙とうをささげた。佐々木会長はあいさつで、各受賞者の功績と出版の労をたたえた後、畠山氏の功績にも触れ、「ご遺族と相談した上で畠山先生をしのぶ会を開き、功績を後世に伝えるため、先生の名を冠した賞の創設も考えたい。倶楽部は来年に創立60周年を迎える。倶楽部の発展のためにも会員拡大を図っていきたい」と述べた。
来賓代表で荘内日報社の橋本政之社長がお祝いの言葉を述べ、各受賞者がスピーチ。渡辺さんは「さまざまな人々との縁があって30年にわたって取材、執筆ができている。荘内日報掲載の紙面が名刺代わりとなって、不審者と間違えられずに取材でき、助かった」と述べた。
らくがき文学賞は、同倶楽部が1970(昭和45)年に制定し翌71年から表彰を行っている。荘内日報に掲載された随想や随筆、紀行文、紙面で紹介された出版物などの中から最も優れていると認められた作品に贈られており、これまでの受賞者は36人(うち1人は特別賞)。授賞式には受賞者と関係者、倶楽部メンバーら約20人が出席し、式後には祝賀会を開き、受賞者を囲んで歓談した。
2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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「空洞率66%」とは驚きの数値だ。羽黒山スギ並木の保全に向けた調査で、どっしりとして見えるスギの内部が傷んでいて、いつ倒れてもおかしくない危険木があることが分かった。表参道のスギ並木は、信仰の山・出羽三山を代表する歴史と観光資産。将来とも樹勢を維持し、信仰の山のシンボルでいてもらうためにも、調査を通して最善の保全策が見つかることを願いたい。
調査は「羽黒山スギ並木保全とまちづくり協議会」などが実施した。先端技術の精密診断機器を駆使し、音波で幹内部の状態を知る。目視に比べてはるかに精度は高く、一本ごとの健康状態を把握することで、スギ並木の保全につなげていく。
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随神門から始まる表参道スギ並木は全長約1・7キロ、2446段の石段を登って三神合祭殿に着く。参道の両側に立ち並ぶ樹齢350~400年のスギ558本は国の特別天然記念物。ただ、これまでの調査で18本が枯れていることが分かっている。五重塔近くの天然記念物「爺杉」は樹齢1000年とも言われ、昔は「婆杉」もあったが1902(明治35)年に台風で倒れてしまった。木が傷んでいたためであろう。
スギ並木には歴史・文化・信仰が詰まっている。随神門をくぐると参道唯一の下り坂があり、「神橋」を渡って「祓川」で身を清める。「須賀の滝」は羽黒山中興の祖・天宥別当が月山から約8キロの水路を開いて水を引いたという。
参道途中の「南谷史跡」にはかつて寺院があった。松尾芭蕉が7泊8日も滞在し、「奥の細道」で最も重要な場所だったとされ、〈ありがたや雲をかほらす南谷〉〈雲の峰幾つ崩れて月の山〉などの句を残した。今、三神合祭殿までは車に乗って容易に参拝できる。しかし、石段参道の「弁慶の油こぼしの坂」の異名がある一番の急坂、二の坂などを経て約1時間かけて登ってこそ、参拝の御利益があるというもの。息を切らして登る時、心身を落ち着かせてくれるのは、スギの木が発する「気」ではないだろうか。
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今回の調査で、全部のスギの幹内部の密度などを測定してカルテを作る。保全には北海道大学観光学高等研究センターが協力、当面は参拝者への危険防止のため、枯れた木の伐採が検討されている。重機を使用できず、1本当たりの伐採費用は約25万円。地元の宝を守ろうと、羽黒高校の生徒がクラウドファンディング(CF)で伐採費用を募ったこともあるのは、地元愛の表れ。
出羽三山は「自然と信仰が息づく日本遺産」。スギ並木は神域で、石段を一歩一歩を上ることで参拝のありがたさが伝わってくる。そうした風致の保存は、日本遺産を守る事にもなる。スギ並木が荒れた状態の参道の姿は考えられない。将来とも今の姿のままで守られる対策を期待したい。
2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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地域独自の食文化と観光を結び付けたインバウンド(訪日外国人旅行)の拡大を目的とした「鶴岡ガストロノミーツーリズム講演会」が13日、鶴岡市の東京第一ホテル鶴岡で開かれ、出羽三山精進料理プロジェクトに携わる地元の関係者が現状を報告し、受け入れ環境の充実に向けた課題を探った。
市内の観光や飲食、行政関係者や在住外国人ら約90人が参加。同プロジェクト代表で羽黒町観光協会長の土岐彰さん、宿坊「大進坊」坊主の早坂一広さん、同観光協会事務局長の吉住弘幸さんの3人が登壇した。羽黒山など出羽三山地域への外国人旅行者の動きについて、「今年はコロナ禍前を上回る来訪者があり、以前と同様に欧米豪からが多い。プロジェクトがスタートして12年となり、旅行代理店も含めて徐々に、出羽三山と言えば精進料理とのイメージが浸透してきている」など現状を紹介。
羽黒山伏でもある早坂さんは出羽三山の精進料理について、「山の神様の恵みを体に取り入れ、身を清める『精進潔斎』の意味合いがあり、精進料理を食べること自体が修行の一つ。こうした精神文化と精進料理がつながっている背景を伝えて理解してもらうことが大事だと考えている」と述べ、外国人旅行者の受け入れ増に向けビーガン(完全菜食主義者)への対応などを課題として挙げた。土岐さんは「食材と料理に地域固有の文化を結び付けるのがガストロノミーツーリズム。出羽三山の旅行・観光の体験の中に、重要な要素の一つとして精進料理を位置付けていきたい」と強調した。講演会は観光庁の実証事業の一環で同プロジェクトが主催し、DEGAM鶴岡ツーリズムビューローなどが共催。出羽三山の四季を表した9品の精進料理と竹の露酒造場の地酒3種との組み合わせを楽しむ試食も行われた。
2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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高校生が乳幼児とその親と共に交流し、育児について理解を深める「高校生乳幼児ふれあい体験」が13日、酒田市の酒田光陵高校(藤田雅彦校長、生徒754人)で行われ、1年生69人が乳幼児を抱っこするなど交流した。
将来親になる高校生の次世代育成と、現在育児中の市民との地域交流などを目的に、市が2011年から毎年行っている。同校では家庭基礎の授業の一環として実施した。
この日は2カ月―2歳11カ月児とその親14組が同校を訪問。生徒たちは10班に分かれ、現在子育て中のお母さん、お父さんに育児で大変なことや気を付けていることなどを質問。「何をするにも子どもが優先で、自分のトイレすら身動きが取れない時が大変」「子どもが不安にならないような声掛けや、個性を尊重するように意識している」、楽しいことややりがいは「子どもの笑顔が見れた時や成長を感じた時が何よりもうれしい」など、生徒たちは真剣なまなざしで話を聞いていた。
その後、子どもたちとの交流では、生徒たちが赤ちゃんを抱っこしたり、一緒にボール遊びやお絵描きをするなど、あどけないしぐさの子どもたちに終始笑顔で接していた。
赤ちゃんを抱っこした池田美結(みゆ)さん(15)は「抱っこすると想像以上に軽くて温かく、何よりかわいかった。育児中は常に自分のことが後回しになるのが大変だと思った。貴重な体験になった」、2歳の子と遊んだ石川悠大さん(16)は「かわいいと感じた半面、分からないこともあって緊張した。物事の興味など、日々子どもの成長を感じられるのはすごいと思った。将来のいい経験になった」とそれぞれ話した。