2023年(令和5年) 12月19日(火)付紙面より
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鶴岡市本町二丁目の七日町観音堂で17日、師走恒例の「だるま祭り」が開かれた。午前中から多くの市民が訪れ、「商売繁盛」や「合格」を願ってだるまを買い求める姿が見られた。
12月17日の七日町観音堂の例祭に合わせて毎年開かれてきた「だるま市」は「観音様のお歳夜」と呼ばれ市民に親しまれており、昨年から「だるま祭り」の名称に変更した。昔、観音堂近くにあった遊郭の遊女が日々のつらさをだるまに託し、川に流した言い伝えを元に、いつの頃からか庶民の間で年末の風物詩として「だるま市」が定着したという。
この日は前日から続く暴風に雪が交じるあいにくの天候となったが、午前中から大勢の家族連れが観音堂に足を運び、本堂で手を合わせた。その後、境内に並んだ出店を巡り、だるまや熊手、羽子板、招き猫などの縁起物、食べると厄が払われるとされる鶴岡名物の縁起菓子「切山椒」などを買い求めていた。
3000円のだるまを購入したという市内の50代夫婦は「だるまを買うと毎年良いことが起こる。荒れた天気になったが今年も欠かさずお参りした」と話していた。また、コロナ禍で自粛していた「歳の市」が七日町商店街で4年ぶりに開催され、正月用品やおしるこ、天ぷらうどんなどの出店や餅つき実演などが家族連れの人気を呼んでいた。
2023年(令和5年) 12月19日(火)付紙面より
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池や沼に自生する一年生の水草「ヒシ」にスポットを当て、他県の先進事例を踏まえて活用方法を探る「全国ヒシサミット2023in鶴岡」が17日、鶴岡市馬町の市自然学習交流館ほとりあで開かれた。ラムサール条約湿地に登録されている同市大山地区の下池にも多く自生するヒシについて、これまでの活用方法や今後の課題について意見を交わした。
大山地区の上池・下池のラムサール条約登録湿地15周年の記念事業の一環として庄内自然博物園推進協議会(櫻井修治会長)が企画、開催した。今回は市民など50人余りが出席。初めに同協議会の平智副会長が「ヒシに関しては全国を見渡してもそれほど研究が進んでいない。今回は地元庄内に福島、九州の佐賀県の研究者が集まり、全国サミットと言える。最後までぜひご清聴を」とあいさつした。
皆川治鶴岡市長のあいさつの後、ほとりあの上山剛司副館長、西九州大の安田みどり教授、いなびし(福島県猪苗代町)の長友海夢社長、大山地区で活動する草木染サークル・そめりあが、話題提供としてヒシを活用したそれぞれの事例を発表した。
このうち上山副館長は「大山下池産のヒシの活用事業」と題し、「2014年に下池の水門でヒシの実が堆積し、一部が水路に流れ出した。下池では近年、6~9月に水面の8割ほどをヒシが埋めており除去が必要となった」と述べた。
また、2015年以降にほとりあが進めている草木染めや地元小学校の総合学習での実食、クラフトイベントなどヒシ活用の取り組みを紹介。22年度以降は佐賀県や北海道など先進地の視察、ほとりあスタッフや学生たちでヒシの除去に当たったことなどを解説した。今後の展開については「除去したヒシの堆肥化と成分分析を進めており、肥料として優れていればホームセンターなどと連携し、さらに堆肥を使って育てた作物を地元飲食店等で利用できるような資源の活用方法を検討したい」と話した。
続いて発表した安田教授は佐賀県神埼市で取り組んでいるワビシの栽培について解説。「高齢者が以前ヒシの皮を煎じて飲んだ話からヒシの外皮に注目し、ヒシポリフェノールの分取と精製、構造分析などを行った。その結果、ヒシには血糖値を下げたり中性脂肪を抑える効果があることが分かった。外皮を用いた『ひしぼうろ』はヒット商品となった」と述べた。
【ヒシ】葉が水面に浮く浮葉植物で、全国各地の池や沼で見られる。多くの実をつけ保存も利き、昔は食材や薬に使われた。現在はそうした利用がなくなり、夏場に水面を覆う大量のヒシが秋に枯れて腐敗し水質に影響を及ぼすなど、“厄介者”扱いされることも多いという。
ヒシの一種・オニビシは非常に硬いとげができるため、かつて忍者が使った「まきびし」の材料に使われていた。