2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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酒田うたごえ喫茶(高橋治代表世話人)の例会が12日、酒田市の駅前交流拠点施設「ミライニ」3階研修室で行われ、会員が市内の保育園などで受け継がれてきた「山居倉庫の歌」などを元気に歌い上げた。
「酒田うたごえ喫茶」は約7年前から同市内で月1回活動している。山居倉庫の歌は、同市の小鳩保育園=同市千石町一丁目=で長らく歌われてきたもの。約30年前に童謡作曲家・峯陽(みねよう)氏が同市を講演で訪れた際、当時同園に勤めていた齊藤惠さん(74)=同市上餅山=が案内したのがきっかけという。
峯氏が「庄内弁はきれいで歌になるね」など話していたことから、同園との交流が生まれ、職員の佐藤きよ子さん(76)=同市穂積=が作詞を担当し、峯氏が曲を付けて生まれた。童謡の優しいメロディーに乗って「大きなケヤキ 石畳 山居倉庫の並木道」に「優しい風吹く春の日は可愛いアンヨで歩こうね」など四季の情景が続く。同喫茶では、山居倉庫が2021年3月に国指定史跡に指定されたのを受け、改めてこの曲を大事にしたいと歌っていくことにしたという。
この日は会員約40人が参加。「山居倉庫の歌」のほか、「酒田甚句」や「大きな古時計」など30曲を朗らかに歌い上げた。山居倉庫の歌について、齊藤さんは「子どもたちと散歩しながらできた歌。今後も長く歌い継いでいきたい」、佐藤さんは「私の青春時代は小鳩で過ごした時代。この曲を歌うと子どもたちと楽しく過ごした日々が鮮明に思い出される」とそれぞれ目を細めていた。
2023年(令和5年) 2月15日(水)付紙面より
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酒田から世界に飛躍願い
実弟の佐藤さん
相撲漫画の金字塔・バチバチシリーズ「鮫島、最後の十五日」、柔道を題材にした「いっぽん」といった名作を残しながらも2018年に他界した酒田市出身の漫画家、故佐藤タカヒロさん。実弟で、建設資機材などレンタル業を展開する「酒田レンタル」(同市こがね町二丁目)の佐藤博信社長(43)が13日、市に対してタカヒロさんの全著作と図書備品を寄贈した。作品は酒田駅前交流拠点施設「ミライニ」内の市立中央図書館に開架する。
「ミライニ」 中央図書館へ
佐藤タカヒロさんは1976年、同市生まれ。仙台デザイン専門学校卒業後に上京し、漫画家のアシスタントをしながら自らも創作活動を展開。2000年に秋田書店が制定する「第54回少年チャンピオン新人まんが賞」で準入選を獲得して、読み切り「シンクマネー」(週刊少年チャンピオン)でデビューした。幼少の頃から打ち込んでいた柔道をテーマにした「いっぽん」を04年から同誌に連載。酒田に拠点を移し09年、相撲漫画「バチバチ」の連載を開始、魅力あふれる登場人物、迫力ある取組シーンで好評を博したが、18年7月に41歳の若さで死去。176話まで進んだ「鮫島、最後の十五日」は未完のまま連載を終えた。
市美術館で一昨年9月、秋田書店、佐藤社長はじめ遺族の協力で、タカヒロさんの原画やネームなど計約90点を展示。全国各地からファンが大勢訪れ、「酒田高校柔道部」に所属する春康文の活躍を描いた「いっぽん」、主人公の鮫島鯉太郎とライバルたちの迫力ある取組が話題となった「バチバチ」シリーズの原画、漫画の設計図といえるネーム、再現されたタカヒロさんの仕事場などに見入った。
この展示を受けて佐藤社長は今回、「地元でもこれだけのことができるということを知ってもらい、酒田から世界に飛び立つ人材が育ってほしい」との願いを込め、▽「いっぽん」全14巻▽「バチバチ」全16巻▽「バチバチBURST」全12巻▽「鮫島、最後の十五日」全20巻―とタカヒロさんが手掛けたコミックス全巻とともに、ブックスタンドなど図書館用備品を寄贈することにした。
この日は中央図書館内で寄贈式が行われた。佐藤社長は「ぜひ郷土資料にしてほしい。ここ酒田から素晴らしい逸材が誕生し、世界に飛躍していくことを祈念する」とあいさつし、安川智之副市長に作品を手渡した。これを受けて安川副市長は「これらの作品を読んでもらい、多くの人から刺激を受けてもらえたら。本気で漫画に立ち向かっていた姿勢が伝わってほしい」と謝辞を述べた。
連載デビュー作となった「いっぽん」は現在、絶版となっており特に貴重な作品。「小学時代からノートに4こま漫画をよく描いていた。最初の読者は私だった」と実兄との思い出を話す佐藤社長は、酒田を拠点に描き続けたことについて「都内の生活が窮屈だったのではないか。酒田の場合、都内で作業をするよりも締め切りが1日早く、東日本大震災直後は原稿を航空便で送っていた。常に死に物狂いで描いていた」と述懐した。
中央図書館は現在、蔵書点検のため休館中。開架は点検明けの18日(土)からの予定。