2023年(令和5年) 3月11日(土)付紙面より
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昨年5月にブラジルで開催された聴覚障害者による国際スポーツ大会「第24回夏季デフリンピック競技大会」の水泳競技に出場、女子100メートルバタフライで金メダルに輝いた齋藤京香選手(22)=酒田光陵高卒、山梨学院大スポーツ科学部4年=による講演会が9日、酒田市の第三中学校(小野寺茂義校長)で行われ、同校の生徒と近隣小学校の児童が聴講した。
両耳が中度難聴の齋藤選手は、旧酒田聾学校(現酒田特別支援学校聴覚障がい教育部)に入学。小学1年から市内の水泳教室に通い、同校中学部3年の2015年、米国で開かれた世界ろう者水泳選手権400メートル自由形で4位に入り頭角を現した。大学はスポーツが盛んな山梨学院大学に進み、昨年5月3日(日本時間・同4日)のデフリンピック100メートルバタフライ決勝で自己ベストを0・10秒更新する1分06秒98を記録、金メダルを獲得した。この活躍で「酒田」の名を世界的に高めたとして市が制定する本年度「酒田ふるさと栄誉賞」を受賞した。
この日は酒田三中3年、松原・亀ケ崎両小6年の計349人を前に「私が大切にしていること」と題し自身の体験談を交え講演。「中学の頃は難聴であることがコンプレックスだった」と話した上で、世界大会で同じ障害を持つ先輩や外国の選手たちと交流していくうちに自分の世界が広がり、自信につながっていったという。
「水泳人生の中で一番記憶に残っている」と自ら話すデフリンピックで金メダルを取った瞬間の動画を鑑賞した後、「周囲から支えられていることへの感謝を忘れないでいたい」と述べ、「自分の好きなことや興味のあることにどんどん挑戦してほしい」とメッセージを送った。
生徒たちは真剣な表情で聴講。酒田三中3年の五十嵐陽和さん(15)は「チャレンジすることで世界が広がることをあらためて感じた。進学しても感謝を忘れず多くのことに挑戦したい」と話した。齋藤選手は大学を卒業後、春から東京の一般企業とアスリート契約することが内定しており、今後は酒田を拠点に選手活動を続けていくという。
2023年(令和5年) 3月11日(土)付紙面より
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江戸期から明治期にかけて北前船の往来で栄えた酒田の繁栄ぶりを今に伝える酒田市船場町一丁目の旧家を活用した「酒田湊旧廻船問屋『家坂亭』」で、飾り菓子制作体験が行われている。市内で開催中の「酒田雛(ひな)街道」に合わせ実施しているもので、その愛らしい作品に主として女性の人気を集めている。
家坂邸は江戸期から明治期にかけ、北前船舟運で主に米と桐油(とよ)を扱った商家。初代徳兵衛翁は船乗りたちが使う、和紙に桐油を塗った今でいう雨がっぱの製造・販売などで財を得、その利益で京都から美術品を多く購入した。現存する邸宅は、1894年に発生した庄内大地震後、2代徳兵衛翁が建てたもので、1955年ごろから日本料理店として営業、70年ごろまでは結婚式場や貸席としても利用されたという。昨年11月に小松尚さん(70)=9代小松屋又三郎=が亭主となり観光施設としてオープン。施設内見学のほか茶話会などが開かれている。
飾り菓子は両面木型と呼ばれる立体的な形に仕上がる木型を用い、片栗粉やでんぷんなどを樹脂粘土に混ぜて制作するもの。酒田まちづくり開発(同市、西村修社長)が2021年2月に復刻し、「箸枕」の名前で土産物として山居倉庫「酒田夢の倶楽」などで販売している。
ひな飾り菓子制作体験は同市の老舗菓子店「小松屋」の店主だった小松さんの指導で実施。昨年に続き今年も人気があり、かわいらしい見た目から女性の体験者が多いという。4日に訪れた渡邉千佳さん(27)=山形市=は「酒田出身だが飾り菓子を知らず、地元の魅力を知ることができてうれしい。ぼかしや筆の使い方が難しかったが、楽しみながら作ることができた」と話した。
飾り菓子の制作体験は水―土曜午前・午後の2回実施(要予約)、参加料は1500円(サンプル付)。家坂亭は建物内部も自由に見学可能で、開館時間は午前10時―午後4時。月・火曜休館。入場無料。問い合わせは小松さん=電090(6222)9007=へ。