2023年(令和5年) 3月14日(火)付紙面より
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酒田市黒森地区に江戸時代中期から伝わる「黒森歌舞伎」で、来年2月に行われる正月公演の演目を決める「太夫振舞(たゆうぶるまい)」が12日、同地区の黒森日枝神社で行われ、若手役者による「神撰(しんせん)の儀」で、来年の演目は、「白浪五人男」として知られる盗賊5人組の活躍を描いた「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」に決まった。
太夫振舞は、芝居奉納を受けた神社が役者らを招き開く宴(うたげ)。この中で、水ごりで身を清めた若者がご神体に代わって翌年の演目を選び出すのが「神撰の儀」。神事的芸能の要素を残す黒森歌舞伎独特の儀式として伝わる。
今年の神撰者は、14歳で一座「妻堂連中」(五十嵐良弥座長)の研修生になり、昨年の総会の席上、座員として認められた若手役者の川島優史さん(21)=同市入船町、会社員。五十嵐座長によると、地区在住者以外が神撰者を務めるのは長い歴史の中で初めてという。
川島さんは神社でおはらいを受けた後、白い下ばき一つの姿で社殿を出て境内の井戸で水ごり。手桶で7杯半の冷水を浴びて身を清め、再び神前に正座。竹の棒に付けたこよりで、一升ますの米の上に置かれた演目候補のくじ3本から1本のくじを引き寄せた。川島さんは「大役を務めさせてもらい、ありがたい。これで神様から座員として認められたかな」と話した。
来年の演目「青砥稿花紅彩画」は、日本駄右衛門と弁天小僧菊之助、南郷力丸、赤星十三郎、忠信利平の盗賊5人組の活躍を描いたおなじみの作品。弁天小僧の「知らざあいって聞かせやしょう」という名台詞で有名な「雪ノ下浜松屋見世先の場」、五人がそろって名乗りを上げる「稲瀬川勢揃いの場」の2幕を上演する。特に「浜松屋」は黒森歌舞伎としては初演で、五十嵐座長は「これから脚本を起こさないといけない。新しいことに挑戦して常に前に進みたい」と語った。
五十嵐座長によると、来年の少年歌舞伎は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」のうち「吉田社頭車引の場」を演じるという。
2023年(令和5年) 3月14日(火)付紙面より
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未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から12年を迎えた11日、酒田光陵高校ビジネス流通科2年生26人が企画した追悼イベント「キャンドルナイト」が酒田市のミライニ広場で行われ、手作りした約100個のキャンドルに火をともし、犠牲者の冥福を祈るとともに、被災地の復興を願った。
同科の生徒たちは月1回程度、「マラマルシェ」と銘打った実習イベントを同所で開催している。このつながりを生かし一昨年から、震災で得た教訓を次世代に引き継ごうと追悼イベントを企画している。
今年のテーマは「繋(つな)ごう未来へ―あの時の教訓を胸に」。キャンドルは、企画に賛同したレストラン「月のみち」から提供してもらった使用済み食用油と牛乳パックを用いて手作りした。
この日は、ミライニ広場ステージ前に「絆」をイメージした文様にキャンドルを配置し午後6時、一斉に点灯。レクイエムが流れる中、集まった人たちと共に静かに黙とうをささげた。生徒の一人、佐藤珀琉(はる)さん(17)は「発生当時は5歳。停電と寒さで不安な夜を過ごした記憶がある。大震災を経験した身として、風化させずに次の世代に伝えていかなければいけない」と話した。