2023年(令和5年) 4月18日(火)付紙面より
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先人が残したクロマツ林を「地域の宝」と捉えて後世に引き継ぐ「庄内海岸林保全プロジェクト」に取り組む庄内海岸のクロマツ林をたたえる会(酒田市、高橋寿昭理事長)が主催したバスツアー「クロマツ文化探訪」が16日、酒田、遊佐両市町の庄内海岸林で行われ、参加者が同町菅里地区の植林作業を指揮した曽根原六蔵翁(1743―1810年)ら先人の偉業について学びを深めた。
プロジェクトは、「地域の宝」を健全な形で未来に残そうと、たたえる会と酒田ロータリークラブ(RC、同市)が2020年からシリーズで展開している。「庄内砂丘を覆うクロマツによる砂防林は、人間が厳しい自然との関わりの中でつくり上げてきた大いなる遺産。地域の宝の価値を再認識してほしい」(高橋理事長)という。
この日は市民ら約20人が参加し、たたえる会副会長を務める樹木医の梅津勘一さん(65)=遊佐町=がコーディネート。同市ゆたか三丁目の東北興産で行われた座学で、梅津さんは「砂防植林の歴史」のテーマで、主として日向川河口―月光川河口まで先人が取り組んだ植林の歴史を解説。長さが13・5メートルもある、1881年に開かれた「東京山林共進会」出品のため制作したとされる「曽根原六蔵翁西濱山植付之圖」のレプリカを広げ、「六蔵翁は自費で植え付けすることを申請し許可を得、14人の雇人と共に現在の菅里地区の植林を担った。1802年に藩はその功績を認め、『永代預かり地』として交付、『菅野村』と命名された」などと述べ、「庄内海岸での植林の歴史は300年。現在も松くい虫防除や、下草刈りなどボランティア作業が続けられている。クロマツ林は放っておいてはいけない地域の宝」と続けた。
引き続き参加者は、酒田北港造成時に伐採した保安林の機能を代替するため設けられた同市宮海の林帯に移動。防風林の再生を図ろうと酒田RCが一昨年に植林したものの、強風や積雪で倒れてしまった箇所にクロマツを補植した。午後からは▽阿部清右衛門翁頌徳碑(吹浦)▽菅野村創立記(菅里)―など植林作業に従事した先人の顕彰碑などをバスで巡って見聞を広げた。