2023年(令和5年) 4月25日(火)付紙面より
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江戸後期から明治中期にかけて北前船舟運で栄えた酒田市船場町一丁目の家坂邸を活用した観光施設「酒田湊旧廻船問屋『家坂亭』」で23日、今年に入って家坂亭で新たに発見された傘福について語る座談会「もうひとつの酒田傘福物語」が開かれ、庄内傘福研究会(同市)の工藤幸治会長らが家坂亭に伝わる傘福などについて解説した。
「酒田雛(ひな)街道」開催を前に今年2月、ひな人形を展示しようとした際、家坂亭の亭主を務める小松屋又三郎(小松尚)さんが箱に入った「傘福」4基を発見した。主に昭和以前に作られた「古傘福」の調査・研究、修復・復元、保存・伝承を行っている同研究会の工藤会長と村上弘子事務局長が確認したところ、傘福はそれぞれ対になっており、高さ約40センチ、直径約25センチと、台座を含め高さ約70センチ、直径約25センチのものの2種。紅花染めとみられる横幕で覆われ、「宝袋」「打ち出の小槌」「トンボ」「くくり猿」といった布細工は、ちりめんや金襴緞子(きんらんどんす)など最高級の生地を使用しているのが特徴。工藤会長によると、祭りの山車やひな祭りに飾ったいわゆる「祭礼系」に分類され、使用している切れ地などから江戸時代後期の作とみられるという。
この日の座談会は、酒田の文化などをテーマに同施設でオープン以来開催している「おしゃべりサロン」の一環として開かれ、歴史愛好家ら約20人が参加した。最初に村上事務局長が家坂亭で発見された傘福について「傘の部分が天板のような形になっており、側面に鈴が4つ付けられている。こうした形はかなり珍しい。非常に丁寧に作られた傘福で、この状態のものが家坂亭から4基も発見されたのは奇跡的」などと解説。
引き続き、工藤会長が「庄内約100カ所で傘福を発見し、研究してきたが、家坂亭の傘福は木の質、塗料、技術的な面などトップクラスのもの」などと指摘した。
また、庄内のひな文化について「庄内は北前船のおかげで全国でも有数のひな人形が多く残る地域となっている。ひな祭りは元々夫婦円満を表していた。時代とともに子どものためのものになってしまったが、根底にあるのは愛」とし、地域文化の伝承について「地域の文化を学ぶということは地域そのものを学ぶということ。地域を大切にしていくことは自分自身を大切にすることにつながるのではないか」などと話し、参加者は熱心に耳を傾けていた。