2023年(令和5年) 5月4日(木)付紙面より
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生涯にわたって世界中の名峰を撮影した山岳写真家、故白籏史朗さん(1933―2019年)の作品展「心に山ありて幸いなり」が、酒田市飯森山三丁目の市美術館で開かれ、多くの来館者を魅了している。
白籏さんは山梨県大月市(旧廣里村)出身。1966年に山岳写真家として独立し、欧州アルプス、ヒマラヤ、カナディアンロッキー、日本アルプス、富士山、鳥海山など、世界中の山を撮影してきた。77年に日本写真協会主催の協会賞を受賞、2000年にはスイスの「キング・アルバート1世記念財団」から山岳写真家として世界で初めて功労勲章を受けた。15年まで、ヘリコプターなどを使わず自らの足で山に登ることとフィルムカメラでの撮影にこだわり、活動を続けた。
白籏さんの父が酒田市(旧八幡町)の出身であったことから、鳥海山を「父の山」と呼んで幾度となく登頂し撮影。同館の市民ギャラリーで展示会を開いたことや、亡くなる1週間前に酒田の文化・芸術振興のために鳥海山の写真データ100点を寄贈した縁などから今回、美術館の企画展として東北初となる作品展を開催した。
これまで雑誌などに掲載された作品を中心に、未発表のものも含め計113点を展示。キャプションには自著から抜粋したエピソード、「鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会」の協力によるジオストーリーなどを添えている。
同館学芸主任の武内治子さんは「スランプから再起するきっかけとなった尾瀬の写真や、日本高山植物保護協会会長として撮影した野生動物や高山植物など、生前には発表しなかったものも多くあり、白籏さんの新たな一面も作品から感じ取ってもらえたら」と話した。中には縦2メートル、横2・5メートルの大判パネルで紹介した作品もあり、来館者は迫力ある壮大な写真を食い入るように見つめていた。
展示は6月25日(日)まで。時間は午前9時―午後5時(最終入館4時半まで)。観覧料は一般900円、高校生450円、中学生以下無料。