2024年(令和6年) 2月23日(金)付紙面より
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耐震補強と併せて大規模な修復工事のため2020年10月から休館している酒田市中町一丁目の国指定史跡「旧鐙屋(あぶみや)」で18日、ワークショップ「旧鐙屋を作ろう」が開かれ、参加者が施工に携わる大工に教わりながら、屋根ふき作業を体験。町屋造りの構造に理解を深めた。
鐙屋は江戸初期の1608年、山形藩主・最上義光から屋号を与えられ、寛永年間(1624―44年)には酒田町年寄役となり酒田三十六人衆の筆頭に数えられた。繁栄ぶりは、伊原西鶴「日本永代蔵」に「北の国一番の米の買入れ」などと紹介されている。
現在の建物は1845年の4月の「甘鯛火事」で被災した後、再建したもの。1984年5月に国史跡に指定され、86年に所有者の鐙谷家から市が土地・建物を取得し翌年から一般公開。日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間―北前船寄港地・船主集落」のストーリー構成文化財の一つにも名を連ねている。
90年度から8カ年をかけて建物全体の大規模改修を実施。前回の改修から20年余が経過し、専門家から震度5以上の地震で倒壊する可能性が指摘されている上、2019年6月の県沖地震で柱や梁(はり)に亀裂が生じた。今回の大規模改修では、傷みが激しい屋根全面約700平方メートルをふき替え。さらに屋根の軽量化、土壁の一部構造用合板置き換え、基礎の新設、柱の折損防止措置といった耐震補強を施し、26年度中の一般公開を見込んでいる。
ワークショップは旧鐙屋に興味と愛着を持ってもらおうと市が昨年11月に続き企画。この日は庄内一円から約20人が参加し、施工を担う地元の仲條建設(門田、仲條甚一社長)とモトタテ(宮海、富樫憲人社長)が講師を務めた。はじめにモトタテの富樫社長から屋根の種類と歴史、模型を使った屋根素材の重なりと下地勾配とのバランスなどの解説を聞いた後、参加者らは屋根に上って屋根ふき作業の一部を体験した。
旧鐙屋の屋根は、野地板の上に杉皮を敷き、それを石で押さえた「石置杉皮葺(いしおきすぎかわぶき)屋根」で、風が強い風土に根差した酒田の典型的な町屋造りとされる。杉皮はスギの伐採時に大量に採取できたため、酒田ではかつて多くの家の屋根材として利用されたという。参加者は均等に切り分けた杉皮の裏に、思い思いに名前や日付などを描いて屋根に等間隔に並べ、モトタテ社員と共にビスで固定する作業を体験した。
家族で参加した琢成小学校2年の荒木秀仁(ひでと)君(8)は「大工さんから聞いた、屋根の素材や角度の話が工夫がたくさんあってすごいと思った。完成したらまた来たい」と話した。