2006年(平成18年) 12月1日(金)付紙面より
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鶴岡市越中山の月山あさひ博物村敷地内で行われていたバンジージャンプのイベントを企画運営する日本アウトドアシステム(田中進一社長)は29日までに、バンジージャンプ事業から撤退する意向を明らかにした。
バンジージャンプは1994年、旧朝日村と村民有志が任意団体を設立し、初めて開催した。同博物村に設置したつり橋から、足首にコードを巻いて約34メートル下の梵字川水面へ向けてダイビングするスリル満点のレジャーとして人気を呼んだ。
民間会社の日本アウトドアシステムは96年、イベントなどの実施団体として旧村観光協会から業務委託を受けた。同年のバンジー挑戦者は6000人を超え、県内外から見物客が訪れるなど同村の観光の目玉となった。
しかし昨年8月15日、同社の契約社員でバンジースタッフの男性=当時(26)=が、ゴムボートでジャンパーを回収する作業の途中、誤って川に転落し死亡する事故が発生した。それまでジャンパーの救助スタッフが川に転落したケースはなく、川の水量も同社のマニュアルに定める警戒水位よりも1メートルほど低かった。
事故発生を受け、ジャンプを主催する旧村観光協会と同社は当面の営業を中止。鶴岡署では業務上過失致死の可能性もあるとみて事故原因について調べているが、立件などの処置はまだ取られておらず、同社では「司法の判断の結果を待つ」としていた。
今年4月も同社の田中社長が記者会見を開き、「昨年8月以来、営業ができず会社が運営できない。再開のめども立たない状況で今季の営業は難しい」と今季の営業を見合わせる方針を示した。
荘内日報社の取材に対し田中社長は「1年半近くも会社は休業状態。もう建て直すことはできない」と事業からの撤退を明らかにし、「自分たちもかかわってゼロから作った日本唯一のブリッジバンジー。無くしたくはないが、どうしようもない」と言葉少なく語った。
あさひむら観光協会では「今後の安全対策や万が一、事故が発生した場合の保障など、解決しなければならない課題が多い。今後、業務委託できる民間企業を見つけることも含め、課題解決のための会合を関係者で開く予定」と話し、「運営は厳しい状況にあるが、何とか再開に向けて検討していきたい。朝日地区からバンジーの火を絶やしたくない」と語った。
朝日地区名物のバンジージャンプ。運営していた企業が撤退、存続の危機に立たされている