2008年(平成20年) 10月25日(土)付紙面より
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三川町押切新田で齋藤製作所を経営する齋藤武彌さん(77)が考案した雨水をためるための装置「雨樋(どい)用・雨水自動分水弁」が、第48回暮らしの発明展(全国発明婦人協会主催)で特賞に選ばれた。齋藤さんは「環境に優しいだけでなく、集中豪雨の際には防災の観点からも役立つはず」と話している。
コンクリートふたの着脱機「コンフター」の発明者として知られる齋藤さん。これまでも数々のアイデアを製品化し、近年はペットボトルを利用した鉢植えの自動水やり器を商品化し好評を得た。
今回考案した雨水自動分水弁は、直径5センチのビニールホースの先に鉄板の弁などを取り付けたもの。雨樋の一部を切ってはめ込み、ドラム缶などの貯水容器に雨水を流れ込ませる仕組み。注ぎ口となるビニールホースには浮きと、重りの役目になるゴムボールが取り付けられ、容器が満杯になると自動的に弁が持ち上がりふたとなる。
「昔から雨水が家庭菜園や庭木の水やりに活用されていたのをヒントに、時代に合わせて実用化したかった」(齋藤さん)と、雨樋に差し込めるようにプラスチックで型を起こしたり、弁と重りの調整に何度も試作を繰り返し、2年ほどかけて作り上げた。
暮らしの発明展は、身近な生活の改善や合理化のために工夫されたアイデア品を公募。今回は114点の応募があり、齋藤さんの雨水自動分水弁は14点が選ばれた特賞のうちの1つ、朝日新聞社賞に選ばれた。応募作品は来月12日から17日まで大阪のそごう心斎橋本店に展示される。
自宅にも雨水自動分水弁を設置している齋藤さんは「環境問題が注目される中で、都会では家庭の貯水タンクの設置に助成している自治体もある。今回の発明を商品化すればもっと安い価格で広く提供できるはず。また、近年の集中豪雨にも雨水を一定量貯水することで防災の役目も果たせると思う。これからも社会のためになる発明をしていきたい」と話している。
自宅の雨水自動分水弁の前に立つ齋藤さん
2008年(平成20年) 10月25日(土)付紙面より
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企業や行政に求められる個人情報の取り扱いと情報セキュリティー教育の進め方などを紹介する情報モラル啓発セミナーが23日、鶴岡市のマリカ市民ホールで開かれた。「情報モラルと人権への配慮」をテーマに、専門家らが現代社会で求められる情報管理対策の重要性を指摘した。
中小企業庁、東北経済産業局、財団法人ハイパーネットワーク社会研究所(本部・大分県大分市)が、県と鶴岡市の協力で開催した。東北経済連合会、荘内日報社などが後援。企業・団体に限らずさまざまな社会活動でインターネットの利用が不可欠となっている中で、人権にかかわる問題が急増していることを受け、同研究所が中小企業庁の委託事業で2003年から全国各地で開いている。東北ではこれまで宮城、岩手など4県で開催したが、県庁所在地以外でセミナーを行うのは今回の鶴岡市が初めて。同研究所の前所長で現理事長の公文俊平多摩大情報社会学研究所長が鶴岡とゆかりが深いこともあり、県内会場として同市が選ばれた。
セミナーには、庄内を中心に、県内各地、宮城県、首都圏などから企業や自治体の情報管理担当者ら約230人が参加。同研究所が、制作したビデオを基に人権に配慮した個人情報の取り扱いを説明し、関西情報・産業活性化センター情報化推進グループの木村修二部長と、関西レディースコーポレーションの長尾裕子代表取締役が講演した。
京都府宇治市で1999年に発覚した住民情報データ流出事件で、同市の管理課長として対応に当たった経歴を持つ木村さんは、「情報セキュリティーとは、人権を保障し顧客や住民の安全を確保して安心を提供すること。顧客や住民の目線で個人情報を保護することが重要」と指摘。そのうえで「情報流出だけが個人のプライバシー侵害でなく、収集した情報を目的外に利用し情報主体の権利を侵害することが最も危険な行為。人的、技術的に不正行為が可能であるという脅威を認識し、対策を講じる必要がある」と訴えた。
企業研修を手掛ける長尾さんは、情報モラルを組織内に徹底するための社内教育の進め方について講演。情報セキュリティー対策は企業の社会的責任の一部であることを強調し、「社会的責任は、その企業の全社員が行って初めて実現する。社内教育を組織に徹底するためには全員参加のボトムアップ型で進め、既成のものから少しずつ独自のものへと進化させ、自分たちでマニュアルを作成することが大切」と説明。
引き続き、来場者からの質問に答える形でパネル討論が行われ、同研究所の公文理事長は「情報社会は、これまでの産業社会とは違う経験のない社会。人権にかかわる問題が現実に起きている状況にあっては、各企業や組織がそれぞれのセキュリティー対策を積極的に公表することが重要だ」と提言した。
個人情報保護をめぐる情報モラルと人権への配慮などを研修したセミナー