2009年(平成21年) 3月17日(火)付紙面より
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元NHKアナウンサーで、テレビ番組「その時歴史が動いた」のキャスターなどとして知られる松平定知さん(64)の特別講演会が15日、酒田市の東北公益文科大公益ホールで開かれ、藤沢周平作品について「だらしない生き方の人には厳しく、一生懸命に生きている人には優しい」と、その魅力を語った。
庄内を中心にした県内企業・団体の出資による広域観光振興会社「北前船庄内」(社長・新田嘉一平田牧場会長)が開いた。経済産業省の広域・総合観光集客サービス支援事業による「やまがた出羽の国『庄内』地域活性化コンソーシアム」事業の一環で、JR東日本や全日空とタイアップし首都圏などから誘客を図るツアー企画の目玉イベントの一つ。ツアー客や地元住民ら700人余りが聴講した。
松平さんは「藤沢周平作品からみる日本人」と題して講演。朝のニュース番組を担当していた1989年に「全くの偶然」で藤沢作品と出会った。日々の番組終了後、仮眠室に持ち込んで読みふけるうち、「優しい目線に心が安らいだ。あまりに良い気分になって、逆に寝られなくなったこともあった」という。
「何とか全国の皆さんと思いを共有したい」との願いから、一切の擬音、効果音、音楽なしでラジオで作品を朗読することをNHKに提案。2003年5月から「蝉しぐれ」の朗読が始まった。05年からは「ラジオ深夜便」でレギュラー化され、現在も続いている。
松平さんは「藤沢作品は、どんな人にも優しいのではない。きちんとした考えを持ち、一生懸命に黙々と生きている人には優しく、応援する。逆に、不正なお金や陰謀を凝らして地位を得ようなどと、だらしない生き方の人には厳しい。本来、人間が持つ『温(ぬく)み』を引き出すのが彼の優しさ」と講演。
また、「普通に生きた人でも、一つや二つの傷は必ずある。傷と一緒に生きていく覚悟をした人が偉い」とする直木賞作家の宮部みゆきさんによる藤沢作品観を紹介し、「まさにその通り。読んでいて涙が出てきた。拍手を送りたくなった」と話した。最後に「蝉しぐれ」の最終章を約20分にわたって朗読。聴衆は、松平さんの語りに目を閉じて聞き入っていた。
講演に先立ち、新田社長が「ツアーでお出でいただいた皆さんと出会えて何より幸せ。庄内の旅が良い思い出になるよう祈っている」と歓迎の言葉。作家の石川好さんが「北前船構想」の趣旨を説明し、吉村美栄子知事、観光庁の水嶋智観光資源課長が祝辞を述べた。
松平定知さんが藤沢作品の魅力を語った