2009年(平成21年) 9月2日(水)付紙面より
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米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」のロケ地の一つで、鶴岡市中心地にある銭湯「鶴乃湯」(三谷政弘さん経営)の建物が、庄内映画村(宇生雅明社長)が管理・運営する月山山ろくの石倉オープンセットに移築されることになった。鶴乃湯は9月1日の「無料感謝デー」をもって廃業する。
鶴乃湯は1941(昭和16)年に開業。現在は庄内唯一の銭湯として営業を続け、「おくりびと」の公開後は新たな観光スポットとして脚光を浴びていた。しかし、10年ごとに更新してきた風呂釜が古くなり、経営する政弘さん、奥さんの享子さん夫妻が8月いっぱいでの廃業を決めていた。
「鶴乃湯 廃業へ」との報道を受け、市民らからは保存を望む声が上がっていた。また、10月から12月の期間で庄内地域も対象エリアに実施される県やJRなどの大型誘客事業「新潟デスティネーション(DC)キャンペーン」関連の旅行商品に組み込まれていることもあり、営業継続を依頼する要望もあった。
こうした声を受け、「おくりびと」の庄内ロケをプロデュースした庄内映画村が建物を保存する形で移築を鶴乃湯に打診した。鶴乃湯では廃業後に建物を取り壊し、現地に住居を新築する予定だったが、「建物が残るなら」(享子さん)と快諾した。
庄内映画村によると、年内は同映画村が建物の管理・運営を行い、有料で施設を見学できるようにする。来年の雪解けとともに解体に着手し、今月12日にテーマパークとしてオープンする石倉地区の「庄内映画村オープンセット」内に移築する。移築事業費は約1500万円。
鶴乃湯では「廃業を決めてから(風呂釜の修繕費として)募金を集めてなんとかならないかなどの声もいただいたが、営業は区切りをつけることにした。建物が残ることはありがたい」とし、同映画村の宇生社長は「代表的なシーンが撮影された建物だけに、大切に保存したい」と話してい
る。
入浴できる最後となる1日の感謝デーは午後3時から同9時まで。
移築・保存が決まった鶴乃湯。営業最終日にも県外から訪れる観光客の姿が目立った=31日