2010年(平成22年) 6月15日(火)付紙面より
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鶴岡市内などに本部を置くNPO法人の活動拠点とする共同事務所「おおやまNPOセンター」が同市大山三丁目に開設され、13日、開所式が行われた。大山地区の自然環境や歴史文化などを学ぶプログラム作成やワークショップの実施などの支援活動を通して、地域の活性化につなげていく。
NPO法人同士が互いに協力、連携しながら事業を展開していこうと、空き家を利用して共同事務所を開設した。同センターに本部を置くのは、地域情報支援のイーコム(加藤清輝理事長)と、環境学習支援のグランドワーカーズ(加藤清輝代表理事)の2団体。ほかに、山形市内に本部を置く国際協力や災害救援支援など4団体が庄内地域の連絡事務所として活用する。
グランドワーカーズは、ラムサール条約に登録された大山上池・下池や高館山など一帯の自然や歴史をテーマにした学習プログラムを、地元住民や環境保全団体などと協力して作成していく。イーコムは、県の委託事業として庄内浜で水揚げされる魚の種類と調理法、レストランの情報などをインターネットで紹介するポータルサイトを立ち上げる。
開所式には、関係するNPO法人や地元の観光協会、商工会などから約20人が出席。テープカットで開所を祝った。地元の関係者は「大山地区を元気づけるためのソフト展開をどうするか、悩んでいた。このセンターと地域が一体となって、大山の素晴らしい環境を守り、地域活性化につなげたい」などと話していた。同センターの担当者は「地域のサロンとして多くの人から出入りしてもらい、人と人、人と情報をつなぐ役割を担い、県内での地域づくりの先駆的なモデルにしていきたい」と話した。
2010年(平成22年) 6月15日(火)付紙面より
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鶴岡市の致道博物館(酒井忠久館長)の創立60周年記念式典が12日、東京第一ホテル鶴岡で開かれた。各界の関係者約450人が出席し、酒井館長は「温故知新。先人たちが培ってきた文化を受け継ぎ、市民が憩い、未来の夢を語り合える致道博物館でありたい」とあいさつ。徳川宗家18代で徳川記念財団理事長の徳川恒孝(つねなり)さんが「江戸時代を支えた日本の心」と題し記念講演した。
致道博物館は1950(昭和25)年6月14日、旧庄内藩主酒井氏が庄内地方文化の向上発展に資することを目的に、土地建物や伝来の文化財などを寄贈し、財団法人以文会として設立、開館。藩主の隠居所だった御隠殿、国の名勝の酒井氏庭園が残り、移設した旧西田川郡役所などの各施設を公開するとともに地元内外の美術品を展示する展覧会などを開催している。
式典で酒井館長は、これまでの歩みや来年度に公益財団法人への移行を目指していることなどに触れ、「昨年度に鶴岡市の協力で再整備構想委員会を設置し、将来像を探った。施設は老朽化が進んでいるため全体の見直しを図りながら、昨年12月に国の重要文化財となった旧鶴岡警察署の公開、庭園の拡充、動線など今年は実現に向けて具体的に検討に入っていく。今後も支援と指導をお願いしたい」と式辞。来賓として加藤紘一衆院議員、吉村美栄子知事(代読)、佐貝全健県議会議長、榎本政規鶴岡市長の4人が祝辞を述べた。
続いて行われた記念講演では、徳川さんが江戸時代の最初の100年間となる17世紀について、「戦いに明け暮れた戦国時代を経て、世界で唯一、『武』から『文』への大転換が行われた」と解説。中央集権国家となり治水や農地開発など巨大なインフラ整備が進み、人口の増加や稲作の収量の増加、減税などを背景に将軍綱吉公のときに絢爛(けんらん)豪華な大衆文化(元禄文化)が花開いた。その後、18世紀に入り成長が停滞したときに吉宗公が登場し質実剛健な時代となった経過を説明。江戸は貧しくても楽しみを見つけ出し、すべてがリサイクルされた時代と話した。
その上で、自身が会長を務めているWWF世界自然保護基金ジャパンの活動から世界の危機的な環境問題に触れながら、「資源の減少と人口の増加という綱吉公から吉宗公の時代の江戸の日本が経験した時代の変化と現代は似ている。当時の日本は政治の在り方をがらりと変え、フラットな社会の中で豊かな文化を持つ質実な世界を築いた経験がある。そうした江戸が持っていた心を庄内は受け継いでいる地でもあると思う」と結んだ。