2010年(平成22年) 9月9日(木)付紙面より
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すし店「三幸」(鶴岡市本町二丁目)店主の川上祐士さん(70)が8日、鶴岡市羽黒町手向の特別養護老人ホーム「かみじ荘」(吉田誠施設長)を訪れ、入所のお年寄りににぎりずしやちらしずしを振る舞った。
川上さんは「外出機会の少ない施設のお年寄りに、おすしをたくさん食べてもらいたい」と毎年かみじ荘を訪問し、無償でおすしを提供しており今年で19回目。
今回は、入所者のほかショートステイとデイサービスの利用者合わせて約90人分を用意。マグロやサーモン、甘エビなどのにぎりずしと、イクラなどを載せたちらしずしを振る舞った。
お年寄りの中にはあっという間に一人前を平らげ、おかわりをする人も。80代男性は「マグロが一番好き。毎年楽しみにしている」と話していた。川上さんは「にぎりずしではかめない、飲み込めないという人のため、昨年からちらしずしも出すことにした。喜んでもらえたらこちらもうれしくなる」と話していた。
2010年(平成22年) 9月9日(木)付紙面より
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酒田市平田地域の楢橋地区に伝わる楢橋神代神楽(市指定無形民俗文化財)が7日夜、鎮守の玉池神社(今井宣幸宮司)で奉納上演され、勇壮な舞で観客を魅了した。
この神楽は、はやり病をはらい五穀豊穣(ほうじょう)を願おうと1887(明治20)年、同市の本楯神代神楽を手本にして同神社に奉納したのが起源という。1962年まで続いたが後継者不足などで中断。地元の若者たちが75年に復活させた。その後、保存会(枝春男会長)が結成され、82年からは「どこにいても故郷を自慢できるものを覚えてほしい」と、小学生にも教えている。
伝わっているのは日本神話や昔話を題材にした約20演目。太鼓と横笛、鉦(かね)の伴奏に合わせて独特の抑揚のあるせりふを唱えながら、同神社の例祭日(9月8日)と宵祭り(7日夜)に、境内の常設舞台で演じている。
奉納は7日がメーンで、今年も近くの南平田小学校女子児童2人による巫女(みこ)舞などに続き、「伊邪那岐命(いざなぎのみこと)」「八幡太郎義家」と、須佐之男命(すさのおのみこと)による八岐大蛇(やまたのおろち)退治が内容の「八坂の舞」を上演。途中、同校の3―6年生男女計10人による豊作、家内安全祈願の「花笠の舞」が、地元に古くから伝わる歌に合わせて披露された。
同夜は雨が上がって涼しい風が吹き、観劇には絶好の条件。境内には近くの住民らが三々五々集まり、時に激しい動きを交えながら勇壮に演じられる舞に酔いしれていた。
2010年(平成22年) 9月9日(木)付紙面より
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子供たちを育む学校の森 林田 光祐
春、6年生になったばかりの子どもたちが担任の先生と一緒に森の入り口の広場にやってきました。初めての学校林での授業です。子どもたちは皆、運動服を着て、帽子をかぶり、軍手をはめて、首にタオルを巻き、水筒やノートが入ったリュックを背負っています。「さあ、ここを登っていきますよ」。がけのような斜面を指さすと、「えー」と不安な声。しかし、手作りの階段状の歩道を登り出すと、すぐに明るい声に変わりました。歩道の脇には開設後に自然に増えたシラネアオイのピンクの大きな花が満開です。春の広葉樹の森は、葉がまだ十分開いていないので、見通しが良く、私たちを明るく招き入れてくれます。
学校林とは小・中・高校が所有する森林で、全国に約3000以上もあります。総合学習が始まってから環境教育の場として注目されるようになりました。私の研究室では8年前から鶴岡市のある小学校の学校林を利用させてもらっています。環境教育の場として利用するためには学校林をどのような森林に整備していくべきかを6年生の授業を支援しながら考え、実際に学校林を整備することで整備の方法まで検討しようという研究です。
夏になると緑が濃くなり、うっそうとした森へと変わります。しかし、子どもたちは臆(おく)することなく森の中へどんどん入っていきます。そうです。夏の森は虫たちの楽園。葉を食べるガの幼虫、幹で鳴くセミ、地面を徘徊(はいかい)する甲虫、花から花へ飛びまわるチョウなどを見つけては歓声をあげています。実りの秋、赤く輝くミヤマガマズミや黒いナツハゼの実を口にいれると、自然の甘酸っぱさが楽しめます。木々の葉も黄や赤に色づいて、多くの種類の樹木があることに気づかされます。
この学校林で学んでいるのは小学生だけではありません。大学生や大学院生が、自分が学んだ森林のことを小学生にどのように伝えられるのか、はじめは悪戦苦闘。じきに一緒に森を楽しめばよいことを学んでいきます。
私が学校林で学んだことは、学校林を子どもたちが興味をいっぱい持てる多様な生き物がすむ森にしていくことが何よりも大切だということです。毎回行くたびに違う花が咲いていて、何が飛び出してくるかわからないワンダーランドこそ、私がめざす学校林です。どのように手を入れてやるとそのような森になるのか、子どもたちが一緒に試行錯誤で森の手入れをすることこそが学校林でしかできない環境教育なんだと思います。
雪が腰まで積もった冬、静かな学校林に子どもたちの元気な声がひびきます。雪の斜面をラッセルしながら登り、全員が頂上までたどり着きました。冬しか見えないノウサギやリスの足跡を探し、最後は自分たちの尻すべりの痕跡だけを雪面に残して、笑顔で帰っていきました。
学校林で学んだ子どもたちは、森の楽しさ、不思議さを実感して卒業してくれたはずです。残念ながら、この学校林での授業は昨年で終わりました。総合学習の方針が変わったからとのことです。幸いにも、鶴岡以外の学校から要請があり、ここであげた成果を別の学校林でさらに発展・展開しています。
(山形大学農学部教授、専門は生物多様性の保全を主とした森林生態学)