2011年(平成23年) 1月11日(火)付紙面より
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「姥捨山(うばすてやま)伝説」を題材にした映画「デンデラ」のクランクイン会見が9日、鶴岡市東原町のグランドエル・サンで開かれ、天願大介監督らが映画に寄せる思いを語った。庄内映画村(宇生雅明社長)が制作誘致した10作目の映画で、浅丘ルリ子さん(70)が主演し、死んだと思われていた老婦人50人が雪山を走り回るなど激しいアクションを繰り広げる異色の作品。ロケは10日から2月末にかけ、ほぼすべてを鶴岡市羽黒町の同映画村オープンセットで行う。6月25日に公開予定。
原作は佐藤友哉さんの同名小説。食い扶持を減らすために山に捨てられた老婦人50人が過酷な自然状況の中、集落デンデラを築き、生き延びる。自分たちを捨てた村に復讐を誓う者、静かな人生を願う者、移住を望む者…。さまざまな人生模様を繰り広げる。
天願監督が脚本も担当し、東北地方の姥捨山の風習が残る架空の村という設定。主人公・カユ役に浅丘さんのほか、倍賞美津子さん(64)、山本陽子さん(68)、草笛光子さん(77)らが出演。そのほか主に庄内地方の50―70代の女性約40人がエキストラ出演する。せりふは庄内弁をベースにした独自の「デンデラ弁」が使われる。
天願監督は、同じ姥捨山をテーマに撮り1983年のフランス・カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞した映画「楢山節考」の故・今村昌平監督の長男。昨年公開された映画「十三人の刺客」の脚本を担当し、度々、庄内を訪れていた。庄内映画村が映画制作会社「セディックインターナショナル」と共同制作する。
同映画村オープンセットには撮影用の建物11棟が建設された。そのほか、鶴岡市の羽黒山旧参道、金峰山、屋内シーンは市内の倉庫と、瀬戸内海で行う一部を除きすべて同市内で撮影される。
会見には、天願監督とプロデューサーの古賀俊輔さん、庄内映画村の宇生社長の3人が出席。天願監督はいま、姥捨山を題材にした映画を作る理由について「高齢者が安心して死ねない。早く死んでくれという雰囲気さえある時代に、捨てられる側のドラマを描きたいと思った」とする。父親の作品については「『楢山節考』はリアリズムで、捨てられるときの自己犠牲の美しさにスポットを当てた。自分は“その後”を描きたい。美しさでなく、もっとエネルギーがあって、意地があって、捨てられても、恨みがましく生きる姿。父の作品とはある意味で裏表で、双方いい映画として対比されることを望む」と語った。
冬の庄内の風景については「厳しい美しさがある。特に空の表情がずば抜けている」とし、地元エキストラについては「女優に交じって女の底力を見せてほしい」と述べた。
古賀さんは「見たことのない映画になる。心が痛むむごいことが多い現代社会を、いかに生きていけるかというメッセージを伝えたい」、宇生さんは「素晴らしい作品になる。庄内で良かったと言ってくれるようにサポートしたい」と語った。今年のカンヌ出品も視野に入れているという。
主演の浅丘さんはクランクインに際して、「カユさんの気持ちの変化をどう表現するかや、体力的なこと、方言の難しさと、すべてやってみないと分からない。すべてがチャレンジ」とコメントしており、女優人生で初めてノーメークで出演するという。
2011年(平成23年) 1月11日(火)付紙面より
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「成人の日」(10日)を前に、酒田、遊佐、鶴岡(鶴岡地域)の3市町で9日、成人式が開かれた。各市町の対象者は1990(平成2)年4月2日―91(同3)年4月1日生まれ。鶴岡では昨年まで成人の日に開催していたが、翌日が休日の方が参加しやすいとの理由で酒田、遊佐と同様に前日に行うことにした。各式典には振り袖やスーツなどの晴れ着に身を包んだ新成人たちが大勢参加し、社会人としての第一歩を踏み出した。
【鶴岡市】成人式は、市文化会館で行われた。鶴岡地域の新成人は男性569人、女性505人の計1074人で式典には帰郷して古里で成人式を迎えた人を含め男性384人、女性441人の計825人が出席した。
国歌斉唱に続き、榎本政規市長が「人生の節目に際し、両親に対し感謝を忘れないでほしい。これから社会人としての責務を果たしていくことを期待しております」と式辞。新成人を代表して佐藤歩理さん(中京田)のリードで市民憲章を唱和。続いて渡會慶次さん(湯野浜一丁目)が「両親や地域など多くの皆さんの支えがあり、この日を迎えることができた。人とのつながりを大切にし、責任を持った社会人として自覚し、名実ともに社会の一員になることを誓う」と誓いの言葉を述べた。
式典終了後、出身中学校ごとに記念撮影。合間には、久しぶりに再会した仲間と笑顔で語り合ったり、親しい友人同士で記念写真を撮る光景が見られた。
【酒田市】新成人は男性635人、女性610人の計1245人。希望ホールで行われた式典には男性429人、女性490人の合わせて919人が、男性は多くがスーツ姿で、女性はほとんどが振り袖姿で出席した。
主催者あいさつで、阿部寿一市長は「成人おめでとう。皆さんは少しの不安と多くの期待を持っていると思うが、不安を打ち消す可能性も持っている。この可能性を信じ、酒田のために地道に努力を重ねてほしい」と激励。富樫幸宏市議会議長、和嶋未希衆院議員が祝辞を述べた。
成人式実行委員の小澤諒さんと今野倫子さんが成人になった所感を披露。「人生において20歳は通過点。まだまだ曲がりくねった道が続く。『もう駄目だ』と思ったときは家族、友人、恩師に支えられているということを思い出しながら精いっぱい努力するので、今後も導きをお願いする」と決意を語った。
引き続き、新成人による実行委員会(石川歩夢委員長)が企画したアトラクションを開催。20年間をクイズで振り返るイベントでは、「1990年に発売されたゲーム機は?(答・スーパーファミコン)」「1992年に開かれたべにばな国体で、アテネ五輪金メダリストの室伏広治選手が出場した種目は?(答・やり投げ)」などの問題を楽しんだ。
また、3組4人が成人の主張。「まだまだ知らない山形の良さを見つけたい」「成人としての自覚を持ち行動する」などのメッセージを披露した。最後に実行委員全員が登壇。石川委員長が「一人の大人として、これからは誰かを支えられる存在になりたい」と述べた。
アトラクション終了後、出身中学校ごとに記念撮影。合間には、友人たちと抱き合い久しぶりの再会を喜び、談笑していた。
【遊佐町】新成人は男性101人、女性79人の計180人。町生涯学習センターで開かれた式典には男性87人、女性69人の合わせて156人が出席した。
国歌を斉唱した後、時田博機町長が式辞。「成人証書」の授与などに続き、新成人を代表して榊原歩さん(吉出)が謝辞を述べた。
出席者全員で記念撮影した後、近くのパレス舞鶴に移動し、新成人で組織する実行委員会(佐藤大輔委員長)が主催した「二十歳のつどい」を開催。佐藤委員長によるあいさつに続き、お互いの成人を祝い乾杯。新成人たちは、軽食を味わったり各種ゲームを楽しんだりしながら、旧交を温めていた。
2011年(平成23年) 1月11日(火)付紙面より
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紅葉の森に包まれて ―森のようちえん東北交流フォーラム in Tsuruoka より― 神田 リエ
秋も深まりゆく昨年の11月6、7日、大鳥自然の家で「森のようちえん東北交流フォーラムin Tsuruoka」が開催されました。このフォーラムは、子どもたちが森や自然の中でさまざまな体験をしていくことの大切さについて、学び・体験することを目的としたものです。今回のフォーラムのテーマは、「森林文化都市・鶴岡で考えよう!幼児の自然環境教育のあり方」です。
会場となった大鳥地区は広大な森林を有し、まさに森林に抱かれた地ともいえるでしょう。フォーラム開催日、大鳥の森は紅葉で美しく彩られていました。会場前に飾られた大きなカボチャのランタンも参加者の方々をお出迎え。フォーラムの前にみんなで作ったカボチャのランタンは、夜の交流会を明るく灯してくれました。
2日間にわたるフォーラムは、「幼児期に自然体験する意味」と題した井上美智子氏の基調講演で始まりました。その後、分科会や全体会がもたれ、実践者の事例報告をはじめ、安全管理や指導者の育成などについて話し合われました。また自然体験の場として、5つのワークショップも実施されました。
ワークショップは屋外で実施されます。そのため天気が気がかりでした。どうか晴れますように!と願いつつも、1日目は雨となってしまいました。ワークショップのひとつ“森で読みたい絵本・つくりたい絵本”は、吊り橋に近い栗林の中で実施される予定でしたが、急きょ体育館わきのテントでの開催となりました。それでも周りに広がる森を眺めながら聴く森の絵本の読みがたりは、とても心地よく楽しいひとときでした。絵本づくりでは、落ち葉や木の実などを使い、それに言葉を添えて絵本にします。できあがった絵本は、それぞれに個性が溢れており、優しい雰囲気のすてきな本となりました。
フォーラム2日目は、前日の雨もすっかり上がり快晴となりました。ワークショップ“早朝ハイク”の出発です。朝早い森の中を歩きます。そのワークショップから歌が生まれました。『秋の森の朝』という歌です。作詞は早朝ハイクの参加者、作曲は田中宏氏によるものです。そのうちの1番の歌詞を紹介します。
“朝もや晴れて目覚めゆく 森に光が差し込んだ あったか色の服を着た ブナやカエデがお出迎え”
歌詞は4番まであり、大鳥の森の中で感じた思いなどがその中に込められています。
先日、三瀬保育園のクリスマスコンサートで、この『秋の森の朝』が園児たちのかわいい歌声で披露されました。フォーラムを終えて2カ月がたちましたが、この歌を聴きながら大鳥の紅葉した森、実り多かったフォーラムのことが昨日のことのように思い出されました。「森のようちえん東北交流フォーラム」から生まれた『秋の森の朝』の歌、これからも大切に歌い継いでいきたいと思いました。子どもたちと一緒に私たちも森を楽しみながら。
(元山形大学農学部 専門は森林文化論)