2025年1月8日 水曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2011年(平成23年) 2月23日(水)付紙面より

ツイート

“青春の味”惜しむ声 甘党の店ふくひろ 閉店へ

 放課後に女子高生らが立ち寄る人気店として親しまれてきた鶴岡市本町一丁目の甘味処「甘党の店 ふくひろ」が、今年5月20日の営業を最後に閉店する。東京生まれで経営者の大塚宏永さん(69)が1971(昭和46)年に現在地に開いて以来、低価格と当時最先端のジョッキに盛ったパフェなどのスタイルが女子高生たちのハートをつかみ、40年にわたり愛されてきた。閉店の報を受け、“青春の味”を惜しむ声が寄せられる一方、大塚さんは「好きな仕事を40年も続けられて幸せ」と表情は晴れやかだ。

 東京・下町生まれの大塚さんと鶴岡の縁は、菓子職人だった父親の故武恍(たけお)さんが、当時市内にあったスーパー「ヤマリン」(82年12月に廃業)で大判焼きを実演販売していたことから。

 単身赴任していた武恍さんのもとへ高校生のころから遊びに来るうち、「海、山、川があって食べ物もおいしい」(大塚さん)とすっかりファンに。高校卒業後、いったんは郵便局に就職したが、鶴岡に心引かれ、都内の洋菓子店で3年間修業した後、武恍さんの仕事を手伝う形で鶴岡へ来た。

 ヤマリンでの仕事は兄も手伝い順調だったことから、30歳で独立を決意。「女性をターゲットにした店を出そう」と71年9月に、祖母と自分の名前を掛け合わせて名付けた「ふくひろ」を開店させた。

 「当時はファミレスもコンビニもなかった時代。『女性待望の店』と大々的に宣伝し、オープン時はものすごい行列ができた」と振り返る。ジョッキにアイスを盛った「びっくりパフェ」や、ラーメンやうどんとミニサイズのソフトクリームを組み合わせたセットメニューなど、当時珍しかったスタイルが評判となり、女子高校生を中心に人気に火がついた。開店から10年の間にJR鶴岡駅前、銀座通りの洋品店「マルタ」2階、酒田市中町と順に3店の支店もオープンさせた。

 さらに人気を定着させたのが、25年ほど前から武恍さんの味を受け継いで店頭販売を始めた大判焼き。定番のあずきやクリームに加え、チキンナゲットやポテトなど新しい味を登場させ、高校生たちの放課後のおやつとして、鶴岡市内の高校に通った人なら誰もが知る味となっていった。

 閉店を決めたのは、半年ほど前。体力が落ち、すべて自家製を誇るあんやアイスクリームなどの仕込みが重労働になってきた。店でのアルバイトが縁で結婚した妻の万喜子さん(59)も今年で還暦を迎えることもあり、「70歳で現役は引退しよう」と5月の自分の誕生日後に店を閉めることを決めた。

 閉店の知らせを受け、今月に入って店には真偽を確かめる高校生や「冷凍して食べる」と大判焼きをまとめ買いするおばあちゃんの姿も。帰省すると必ず立ち寄るという都内の大学に通う男性(22)は「うそでしょう。残念。大型連休にもう一度来る」と話して店を後にした。

 大塚さんは「新しいことが大好きで、(提供したメニューを)お客さんが喜んで食べてくれるのが本当にうれしかった。好きな仕事だったからつらいことはなかった。これからは趣味の登山や旅行を楽しみたい」と笑顔で話した。

 開店以来、3度は値上げしたというメニューだが、あんみつは220円、ミニソフトが付いた「ふくひろラーメン」は400円と最後まで良心的だ。

40年にわたり放課後の女子高生たちの憩いの場として親しまれてきた「ふくひろ」=鶴岡市本町一丁目
40年にわたり放課後の女子高生たちの憩いの場として親しまれてきた「ふくひろ」=鶴岡市本町一丁目



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

  ■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field