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2011年(平成23年) 3月6日(日)付紙面より

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戦中酒田で捕虜生活 リチャーズさん 厚意忘れない

 太平洋戦争で日本軍の捕虜になり、1944年から約1年間、酒田市内の収容所に入れられて酒田港での荷役労働を強いられたオーストラリア人のローリー・リチャーズさん(94)が4日、同市を訪れた。収容所時代、ひそかに医薬品や食料を与えてくれた同市内の男性2人の遺族と対面。親交を深めた。

 オーストラリア軍の軍医だったリチャーズさんは1942年、シンガポールで捕虜になり、東南アジアで強制労働。44年10月に酒田に連行され、酒田市本町三丁目にあった収容所で生活を送りながら終戦まで、酒田港で働かされた。

 敵国捕虜に対する市民感情が非常に厳しい中、劣悪な食料や衛生事情、住環境など過酷な捕虜生活を見かねた同市の元日本通運社員・松本勇三さん、食肉処理業の高橋忠吉さん(ともに故人)は、自らの危険を顧みずに医薬品や肉類を分け与えたり、病気で衰弱していた捕虜の労働を免除するなど、人道的に扱った。リチャーズさんはこうした厚意を戦後も忘れず、シドニーで医院を開業した後の59年には酒田を訪れて2人と再会。感謝の言葉を伝えた。

 今回の訪問は、外務省が昨年から始めた「日本人とPOW(戦争捕虜)の友好プログラム」事業の一環。今年はオーストラリア人の元捕虜5人が酒田のほか川崎、新潟、広島、大阪などの各市を訪れている。

 リチャーズさんは家族5人で来日。酒田では収容所跡地や本間美術館を見学した後、ホテルリッチ&ガーデン酒田で2人の遺族と対面。59年に来酒した際の新聞記事を見せてもらうと、目を細めて懐かしそうに見入った。

 松本さんの長男・照太郎さん(78)=亀ケ崎三丁目=は「父親と手紙のやりとりをしていたのは知っていたが59年の時はお会いできず、今日が初めて。夢のようだ」、高橋さんの長女・柳堀偉子さん(78)=上安町二丁目=は「小さな好意をいつまでも覚えていてくれる。感激でうるうるしている。今日のことは早速(父親の)墓前に報告する」と話した。リチャーズさんは、2人の遺族を「すてきな家族。2人がいたから酒田の印象が良くなった」と述べ、「若い人には平和をつないでほしい」と期待した。

松本照太郎さん(左)から59年に来酒した際の新聞記事を見せてもらい懐かしむリチャーズさん(右から2人目)
松本照太郎さん(左)から59年に来酒した際の新聞記事を見せてもらい懐かしむリチャーズさん(右から2人目)



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