2011年(平成23年) 11月29日(火)付紙面より
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庄内傘福研究会(工藤幸治会長)が、酒田市日吉町一丁目の光國寺(光國寺寛了住職)に飾られている大正初期の制作とみられる「傘福」を修復するとともに、これを見本に再現した傘福も作って26日、一緒に奉納した。つるされている細工の中に他では見られないサンタクロースがあり、近くにキリスト教会があることから、工藤会長は「信者が作って飾ったのでは」と話している。
庄内三十三観音霊場第20番札所の光國寺は、約500年前の永正年間に開創。大正4(1915)年に本堂を再建しており、その時に直径約60センチの傘福一対が奉納されたらしい。時代を経て傷みが進み1本は廃棄された。もう1本も、当初は140個ほどあった布細工が欠落し巾着や船、桃など44個が残るだけになった。
昨年、三十三観音霊場の御開帳で光國寺を訪れた同研究会のメンバーが傘福を発見。工藤会長が開設している「酒田あいおい工藤美術館」(同市相生町一丁目)で今年6月から、同研究会員6人と市民の協力者数人が、ボランティアで修復と再現に取り掛かった。
つるしひもを交換して布細工が落ちないようにしたほか、ほつれた部分にはできる限り古い布を使用し、色や形、縫い方にも配慮して当時の姿に修復した。
一方、これを見本にして新たな傘福を制作。その際も明治、大正時代の古布を使い、「完成当時はこんな感じだったのでは」(工藤会長)という、1本の糸に7個の細工を下げた12本つりの傘福を完成させた。作業に当たった女性メンバーは「針仕事は慣れているが、セルロイド製のサンタクロースを再現するのが大変だった」と話す。
この日、工藤会長らが光國寺を訪問。2本を奉納し本堂に飾り付けた。工藤会長は「江戸ちりめんや金襴緞子(きんらんどんす)といった良質の布地を使い、優れた技術で仕上げられており、制作技術を学ぶことができた。この地区は花街だったことから、豊かな暮らしができるよう細工には巾着が多い。サンタクロースも珍しい」と特徴を解説した。その上で「観光ルートに入れていただき、ぜひ多くの方々に参拝、観賞してもらいたい」と話している。