2011年(平成23年) 3月11日(金)付紙面より
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2011年度の公立高校入学試験が10日、県内で一斉に行われた。推薦入学内定者を除いた全日制の平均志願倍率は前年度より0・08ポイント低い0・98倍となり、記録が残る1968年以降で初めて1倍台を下回った。この日は底冷えのする寒い一日となったが、受験生はそれぞれ志望校への合格を目指して試験問題に挑んだ。
全日制の募集は前年と同数の49校104学科。総入学定員数は前年度比200人減の8400人となった。総入学定員から推薦選抜内定者を差し引いた一般選抜の定員は6826人で、これに対する志願者数は6807人。定時制は一般選抜定員278人に対し160人が志願した。
この日の庄内地方は朝から雪が降ったりやんだりの天候となったが、県教委によると、庄内地方の各校はすべての試験会場で予定通り午前8時50分に1教科目の国語の試験が始まった。天候によるトラブルなどの連絡は入っていないという。
このうち鶴岡市の鶴岡南高校では、受験生が集合した午前8時半ごろに鶴翔会館で事前説明が行われた。先月の大学入試問題ネット投稿事件を受け、学校側から「携帯電話は今ここで電源を切り、かばんに入れて控え室に置くこと」と注意が与えられた。
その後、開始5分前の予鈴とともに受験生が会場の各教室に入り、独特の緊張感が漂う中で試験開始を待った。開始のチャイムとともに問題用紙に向き合い、真剣な表情で鉛筆を走らせていた。試験は国語、数学、社会、理科、英語の順に行われた。
合格発表は17日に各高校で行われる。
2011年(平成23年) 3月11日(金)付紙面より
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出羽商工会の農業部会の第7回会合が9日、鶴岡市藤島の同商工会本所で開かれ、小野木覺会長が「商工会が音頭を取って出資者を募り、会社をつくろう」と今後の部会の方向性を打ち出した。「農業」を核に新機軸の事業を興し、地域活性化に貢献する会社で、来月半ばごろまでに事業モデルを詰め、具体化に乗り出す。昨年7月に「全国初の商工会の農業部会」としてスタートした試みは、新たなステージに入ることになった。
小野木会長は会合の終了前、あいさつに立ち、「会社をつくろう。行政や金融機関などと一体となって取り組めば、新たなビジネスが生まれるのでは」と、地域活性化のため、新たな動きをつくり出していく意欲を示した。その上で、温泉の熱を使った農産物栽培など事業のアイデアを挙げ、「夢を描こう。農商工観が一体となって『むかえびと』になるように、皆さんの知恵を借りたい。協力を」と呼び掛けた。
新会社については現在、構想を詰めている段階だが、形態は合同会社、事業としては自然エネルギーを活用した農産物栽培や滞在型体験農場、農産物直売所、「食の都庄内」親善大使の古庄浩さんを介した関西圏への農産物販売といったアイデアが出ている。
同部会は、法人化して加工や販売を手掛ける農業者の会員が増えてきたことなどから、目的別研究会の一つとして設置。「勉強会にとどまらず、具体的な事業展開まで踏み込む」(小野木会長)という方針の下、月1回のペースで会合を開き、部会員の取り組み発表や外部講師の講演などで勉強してきた。当初48人だった部会員は徐々に増え、67人になっている。
この日の会合は「農業分野における金融機関の役割」をテーマに開かれ、約40人が参加。荘内銀行鶴岡南支店の田村優支店長、鶴岡信用金庫藤島支店の東海林保彦支店長、農林中金農林水産環境統括部エコ・フードビジネス推進室の武田豊彦室長の3人の講話で、各金融機関が融資や出資など農業関連ビジネスへの支援を強化している様子を聞いた。
2011年(平成23年) 3月11日(金)付紙面より
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いま、この原稿を書き始めたのが2月16日の18時13分。そろそろ農学部周辺がカラスで賑わいます。その数たるや「三つ四つ、二つ三つ」などと『枕草子』が描いたような優美さとはほど遠いですね。漆黒の大群を見上げると、むしろ高杉晋作が思い出されます。そう幕末維新の立役者です。この人の都々逸(どどいつ)に『三千世界のカラスを殺し、主(ぬし)と朝寝がしてみたい』という句があります。世の中をひっくり返した大革命家でもカラスの群れはままならなかったと思えば多少の諦めもつくでしょうか。その高杉もおそらく知らなかった現代カラスの奇妙な性質が、光る金属を集めたがる収集癖です。針金のハンガーを巣の素材として使う姿を報道等でご覧になった方も多いでしょう。もしかしたら、それは次のような理由かもしれません。
考えてみれば鳥(とり)の巣は汚いのです。糞尿だらけだし、ダニや寄生虫もいます。不衛生は生まれたての雛には致命的なのに、なぜ彼らは平気なのか? そんな疑問を持った北米の生態学者が天然林でホシムクドリの巣を観察しました。すると、親鳥は餌にならない野生ニンジンやムカシヨモギなどの生葉を巣壁に編み込んでいることに気付いたのです。これらの葉からは抗菌性のテルペン類が検出されます。つまり、鳥たちは除菌の術を知っていたのです。毛繕いや行水も寄生虫対策と考えられています。こうしてみると、ツルツルした金属は枝や藁より汚れがつきにくいので、カラスが好んで使うのも衛生のためと思えてきます。人間社会に密着した彼らが見つけた新アイテムなのかもしれません。
さて、先のホシムクドリと森の野草の話はこれで終わりません。聞き取り調査によれば、その森の先住民もこれらの野草を皮膚病の薬として利用してきたそうです。森での生態観察が化学分析を介して伝統文化に行き着いたわけです。自然に暮らす先人たちのこうした知恵は「伝統知」と呼ばれ、環境保全とパッケージで世界的に見直されています。以前に万葉集の「薬狩り」で紹介したように、日本人の生活を支えた里山も日常薬の宝庫でもあったはずです。私がずっと若かった頃、近くの林で熱心に栃の実を集める(やはり当時は若かった)女性に「それは栗じゃないよ」と教えてあげたら、「分かってるわよ、栃でしょ。婆ちゃんが焼酎に浸けると湿布薬になるって喜ぶから採って帰るの」と逆に教えられました。当時はまだ伝統知が孫の世代に受け継がれていたのです。現代はどうでしょうか。彼女は自分の子供に湿布作りを伝えたかしら?
文化的継承が途絶えてしまう前に、伝統知の再発掘が不可欠です。幸いにも、農学部には里山をフィールドとする生態学も、有用物質を探索する生化学も、そして伝統生活を取材する社会科学の分野も揃っています。これらが結集して有用な物質を掘り出せたら、それもまた里山復興の一助となるでしょう。森に住む先住民の生活をみた欧米人は「森はデパート」と表現しましたが、里山も「ドラッグストア」になるかもしれません。案外、カラスの撃退薬が見つかるかも。ピカピカの鋼(はがね)に塗って、三千世界のカラスを退けたい。
(山形大学農学部教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)