2011年(平成23年) 5月13日(金)付紙面より
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庄内各地の水田で田植えが始まった。低温などの影響でやや遅れ気味ながら、緑の苗を次々に植えていく田植え機のエンジン音が農作業シーズン本番を告げている。
県庄内総合支庁農業技術普及課によると、管内で田植えが行われた面積が全作付面積の5%に達した「始期」は平年より2日遅い今月11日。50%に達する「盛期」は平年の同13日に対し、やはり数日遅れる見通し。
同課地域第一担当の本間猛俊プロジェクト推進員は「多雪や低温で播種自体が3日遅れたほか、その後も寒暖の差が大きかったりして、苗の生育も例年よりやや遅くなった」という。今後については「苗が根付くまで水を張って保温するなど、低温に気を付けてほしい」としている。
好天に恵まれた12日、鶴岡市東堀越の高橋和夫さん(58)方のほ場では、この日から田植えを開始。残雪を頂いた月山が間近に迫る田んぼで、緑の苗を満杯に積み込んだ田植え機を軽快に走らせた。
受託を含め水田約5・7ヘクタールではえぬき、ひとめめぼれを植えるという高橋さんは「苗作りが遅れ気味だったが、徐々に回復。昨年よりは2日遅いが、まずはほぼ例年通り。今後、良い天候になることに期待」と話した。
また、同市柳久瀬の阿部金弥さん(73)方では11、12日の2日間で約2・1ヘクタールの田植えを終えた。「例年より苗の根張りが悪かったが、田植えは昨年と同じ日。これから気温が上がり、日照も増えてほしい」と話した。
2011年(平成23年) 5月13日(金)付紙面より
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庄内から映画人の育成を―。鶴岡市羽黒町の庄内映画村オープンセット(鶴岡市羽黒町)で28、29の2日間、俳優ワークショップが行われる。講師は鶴岡市藤島地域出身の冨樫森(しん)監督(51)で、受講者は冨樫監督が初めて地元庄内を舞台に撮る短編映画「さよなら北緯38度」に出演する。芝居経験の有無を問わず、興味のある人を広く募集している。
ワークショップを手掛けるのは、映像制作などの株式会社「プランシップ」(東京都世田谷区、三谷一夫代表)。同社は、元都市銀行マンから映画配給会社の再建業務にかかわった三谷代表が自ら立ち上げた会社。東京中心の映画制作から一歩踏み出し、映画を含めたまちづくりを展開しようと、今年4月から映画人の発掘・育成を目指すワークショップ「映画24区」をスタート。庄内映画村での俳優ワークショップもその一環で開かれる。
ワークショップで講師を務める冨樫監督は、鶴岡南高から立教大に進み、卒業後、相米慎二監督の下で映画制作を学んだ。監督作品として「非・バランス」「ごめん」「鉄人28号」などがある。ワークショップでは、「集まった受講者に合わせて内容は考えたい。芝居経験にかかわらず、お芝居を好きになってもらいたい」(冨樫監督)と、台本を用いた芝居の演出などに挑戦する。
一方、短編映画「さよなら北緯38度」は、映画24区の卒業制作として制作するもの。鶴岡から上京した不器用なヒロインを主人公にした人間ドラマで、都内のワークショップ受講生らとともに、6月4、5日に庄内周辺でロケを行う。
ワークショップの定員は先着30人。子供からお年寄りまで誰でも参加できる。時間は両日とも午後2時から午後7時。受講料は2日間で1万5750円(1日のみは8400円)。申し込みは20日までプランシップ=電03(5329)5334、メールinfo@eiga24ku.jp=へ。同社ではワークショップとは別に短編映画の出演オーディション(スナックの常連客や親子3組など)の募集もしている。
2011年(平成23年) 5月13日(金)付紙面より
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森と湖の国フィンランドの国立公園を歩く 平 智
フィンランドと聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょうか。サンタクロース? それともオーロラでしょうか。どちらも有名ですが、今日はフィンランドの森の話をしたいと思います。
フィンランドといえば森と湖の国。フィンランド語の国名「スオミ」は「湖の国」という意味で、今から約2万5000年前の氷河期にできたとされる大小さまざまな湖は全部で約18万もあるといわれています。
フィンランドの国土の面積は日本の約9割。湖と川が全体の約1割を占め、残りの陸地部分の約8割は森です。人口は5百万人とちょっとですから日本の約20分の1にしか過ぎません。トナカイの数の方が人口より多いといわれているほどです。
フィンランドは寒冷地なので、森に育つ木の種類は限られています。トウヒとアカマツとシラカバの3種類がほとんどで、ほかにモミやナナカマドが少しある程度です。
気温が低いので、あまり標高が高くないところでもそれ以上高いところにはもう木が生えない、いわゆる「森林限界」が訪れます。北極圏の近くあたりまで行くと、なだらかな丘陵地のようなところでもすぐに森林限界に達して、木々が小さく、か弱くなります。また、太陽の光が真上からではなく斜めから当たる時間が長いので、木がかなり密集していても幹の低い部分からけっこうたくさんの枝が出ます。
このように、フィンランドは森の木たちにとってかなり過酷な生活環境といえますが、生産される木材は年輪が詰まった、緻密で頑丈なよい品質のものだそうです。
首都ヘルシンキの西方約35キロのところにあるヌークシオ国立公園。10月に入って、ちょうど「ルスカ」のシーズンを迎えていました。「ルスカ」は「黄葉」を現すフィンランド語です。フィンランドの秋はシラカバの黄葉が実に見事で、夕日を浴びて黄金色に光り輝く姿はずっと忘れることができません。
公園内の7キロほどのコースを散策しました。足元にはトナカイの好物でもある「はなごけ」(地衣類の一種)が一面に見られます。また、森の中のあちこちに岩盤が顔を出していて、この国が大きな岩盤の上に乗っかっていることも実感されます。岩がかたくて根が地中深く入りにくいために風で倒れたと思われる木も散見されます。
トウヒ、アカマツ、モミ、シラカバ…。単調な風景と高低差のない道。人にもあまり出会いません。どちらかといえば歩く楽しさよりもさみしさやわびしさを感じる道行きです。
と、そのとき、ふいに視界が開けました。「あっ、湖!」豊かにたたえられた水。対岸の森をくっきりと映し出す水面。なんともいえない安心感と充実感。「そうか! フィンランドの森歩きは湖に出会うための森歩きなんだ」と、一人で勝手に納得したのでした。
(山形大学農学部教授、専門は園芸学および人間・植物関係学)