2011年(平成23年) 8月16日(火)付紙面より
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鶴岡市は、鶴岡の食文化の継承と地元農産物の消費拡大につなげようと、郷土料理や伝統行事の行事食をまとめたレシピ集「つるおか おうち御膳(ごぜん)」を活用した産直施設向けのPOP(ポップ)を作製し、市内の各産直施設への配布を始めた。季節ごとの旬の野菜を取り上げ、A4判のPОPに料理の写真とレシピをまとめ、野菜の販売コーナーに掲示してもらう。
おうち御膳は、旬の食材を楽しみ、工夫しながら日常食の郷土料理に生かし、ハレの日を彩る行事食を大切に伝承してきた鶴岡の良き食文化を後世に伝えようと、市食育・地産地消推進協議会と市食生活改善推進協議会が連携して昨年10月に発刊。山、川、平野、海と多様な自然の中ではぐくまれた食材がふんだんに登場し、157品もの料理が紹介されていることもあって好評で、増刷を重ねてこれまで約1万部が販売されている。
レシピ集の発刊後、市民から「掲載されている料理に使う野菜は、どこで購入できるのか」といった問い合わせが市農政課にたびたび寄せられていることもあり、料理に使われている野菜が各産直施設で販売されていることを広く紹介し、郷土食や行事食の伝承につなげようと、野菜売り場用のPОP表示を考案した。
表示は、おうち御膳に掲載した内容をレイアウトし直して1枚にまとめ、料理名とカラー写真、レシピ、おうち御膳の掲載ページを紹介。春、夏、秋、冬、通年、伝統行事の行事食の6分類合わせて110の野菜をピックアップし、各産直施設の要望に応じて配布する。今月の夏編からスタートし、「枝豆の味噌(みそ)汁」「ゆうがおの油炒め」「なすの鍋焼き」「なすのからし漬け」「きゅうりのからし漬け」といった鶴岡の夏の定番料理のPОPが、産直施設の野菜売り場に登場している。
市農政課は「地産地消の拠点とも言える産直施設から地元の食文化を情報発信し、郷土料理や伝統行事の行事食を各家庭で作るきっかけにしてもらえれば。夏の料理では、それぞれの産直で取り上げる料理に違いがあり個性が出ていて、鶴岡で生産される野菜への関心を高めることにもつながっているようだ」と話している。
2011年(平成23年) 8月16日(火)付紙面より
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鶴岡警察署管内(鶴岡市、三川町)で交通死亡事故が多発していることを受け15日、鶴岡市荒井京田の国道7号で交通死亡事故抑止緊急対策の大検問が行われた。同署員など約35人が出動し、ドライバーたちへ「運転の際は十分に注意をお願いします」と呼び掛けた。
今年に入って同署管内の今月15日現在までの死者は県内ワースト1の6人で、昨年同時期に比べ5人増。けが人は691人で6人減だが、発生件数は562件で13件増となっている。また、先月22日以降、今月15日まで管内で3件4人が犠牲となる交通死亡事故が発生しており、特に今月7―13日の1週間で3人が死亡し、20人余りのけが人を出すなど交通事故が多発傾向にある。
こうした状況から、県警本部は今月11日、鶴岡警察署管内を同日から25日までの15日間、交通死亡事故抑止緊急対策推進地区に指定。同署は関係団体と連携を図りながら、交通取り締まりなど街頭活動の強化や安全広報・啓発活動などを進めていくことにした。
この日の大検問には同署員と県警本部交通機動隊庄内方面隊員合わせて約35人が参加。国道上で温海方面へ向かう車を止め、安全運転の啓発チラシと眠気防止のチューインガムをドライバーに手渡し、「死亡事故が多発しています。十分注意して運転してください」と呼び掛けた。
同署の那須和明副署長は「先週から大きな事故が多発している。暑い日が続いているので、運転の際には気を緩めることなく、安全運転で目的地へ向かってほしい」と話していた。
2011年(平成23年) 8月16日(火)付紙面より
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師匠のスケッチ、葉脈の知恵 小山 浩正
かつての上司で、私の研究と作文の師匠である菊沢喜八郎先生(現・石川県立大学教授)はスケッチも達者で、自らの画集を出版するほどの腕前です。マレーシアで企画されたジャングルの調査に同行した時も、わずかな暇を見つけては珍しい植物や街の風景を描いておられました。弟子の私も真似してはみたものの、とても師匠のようにいきません。それでも、改めてスケッチの効用を知る機会になりました。模写をすると細部にまで注意がおよび、眺めているだけでは気づかない発見をすることがあるのです。
北海道から庄内に赴任した当初は知らない低木が多くて戸惑いました。教える立場になったのにこれではマズイ。そこで、先輩教員の林田光祐さんが担当する野外実習に飛び入りで参加させてもらい、当時の学生と一緒にサンプルを採取しては葉のスケッチをはじめました。描き始めると自ずと葉脈にも目が行き、その多彩なパターンに魅せられます。例えば、ブナは太い葉脈が真ん中を走り、その脇から魚の骨のように一定の間隔をおいて二次的な葉脈が派生しています。一方、カエデは付け根からいきなり四方に放射するのです。どちらにしても、その先にはさらに細い葉脈が派生して、その次ぎはもっと細かいのが散るよう消えてゆくのです。葉脈とは、葉で作られたデンプンを樹体に運び、逆に根が吸い上げた水分や養分を葉の細胞に供給するための、いわば連絡路。その連絡に最も適した配線パターンが長い進化の過程で洗練されてきたのでしょう。
ならば、この葉脈パターンを私たちの生活にも活(い)かせないものでしょうか。例えば、都市計画や物流への応用です。改めて葉脈見つめると、住宅地に張り巡らされた道路網と似てなくもない。幹線から派生した道がさらに枝分かれして各戸に至るのは葉脈と細胞の関係と変わりがありません。どちらも物資が万遍なく各戸(細胞)に届かなければならないのです。おそらく、電線や上下水道の敷設、そして被災地への物資供給など、面を線で覆うロジスティクス(兵站)は同じ制約に支配されているのではないでしょうか。日本の林業の課題として、林道や作業路などの路網整備があるのですが、山腹という面に林道という線を効率良く張り巡らせるのにも葉脈パターンが参考になるかもしれません。
双方向で連絡するのは物資だけでなく情報もまた同じです。建築家の磯崎新は、都庁建設の請負コンペで師匠の丹下健三に敗れますが(師匠はどこでも強いなぁ)、彼が提案した構想はすこぶるユニークでした。今、新宿にそびえるあの超高層ではなく、あえて低層型にすることで各部局の連絡が横断的かつ網目状につながり、縦割り行政の弊害を屋舎の構造から打破する目論見だったそうです。この案は当時流行した現代思想のキーワードを援用して「リゾーム(地下茎)構造」と呼ばれましたが、その意図から考えると「ベイン(葉脈)構造」と呼んだ方がしっくりきます。都庁では実現しなかった磯崎のベインが「ブナの葉型の庁舎」とか「ケヤキタイプの水路」、あるいは「ナラタイプ道路のニュータウン」として活かされたなら素敵じゃないでしょうか。まさに、森林文化都市の誕生です。
(山形大学農学部教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)