2012年(平成24年) 4月1日(日)付紙面より
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成長が期待される医療・福祉機器産業への参入を目的に鶴岡市内の企業を中心に昨年設立された「鶴岡メディカルビジネスネット」が、患者の薬を運搬する独自の「与薬カート」を製作し30日、発注元の市立荘内病院(三科武院長)に計19台を納入した。同ネットが製作した初の医療周辺機器で、「3年以内に製品を納入できればと考えていたが、予想より早く成果を出すことができた。これを弾みに、さらに開発を進めていきたい」と話している。
同ネットは、地元企業による産学官連携で新たな事業展開を目指そうと昨年5月に設立。現在、鶴岡市や酒田市、天童市、東京都の医療機器、電気機械、精密機械、金属加工、バイオ、介護食品などの企業26社と鶴岡高専、鶴岡市などが加盟する。高い技術を持つ地元企業と慶應義塾大先端生命科学研究所を含む研究機関がある鶴岡地域の特性を生かし、医療・福祉産業の分野で新たなビジネスチャンスの創出や事業拡大を目指している。
医療現場のニーズを探るため昨年7月、荘内病院と意見交換した際、病院側から「与薬カートが更新時期を迎えている。安価で使いやすいカートを作ることができないか」と要望が出され、ネットに加盟する企業4社が連携して試作を開始。改良やテスト使用を繰り返し、完成した。
カートは高さ1・2メートル、幅1・2メートル、奥行き0・5メートルで、患者24人分の箱を収容。カルテなどA4判サイズのファイルが入るボックス内には、朝から就寝前まで4回の投薬分の小箱があり、小箱が取り出しやすいように器具を調整したり、薬を落とさないように隙間を埋めるなど要望に応じて工夫。シャッターの中間部分にも取っ手を付けるなど看護師の作業改善にも配慮した。薬を入れるボックスを既製品で対応するなどして製造コストを下げ、納入価格は専門メーカーの同タイプの半分に抑えることができたという。納入したカートには、同ネットのロゴマーク「ТMBN」も付けた。
同病院医療安全管理室の佐藤喜恵看護係長は「与薬カートの更新は数年前から検討してきた。こちらの意見を取り入れてもらい、とても使い勝手の良いカートを作ってもらった」と話す。
同ネットは、荘内病院以外の市内の病院や研究機関、福祉施設などと製品開発に向けた検討を進め、一部では試作品製作に入っている。同ネット事務局で庄内地域産業振興センターの丹下道幸産業化推進プロデューサーは「まずは地域に根差し、地元の医療や福祉の現場で困っているニーズを聞き、喜んでもらえる製品作り、産業化の取り組みを進めたい」と話した。