2012年(平成24年) 3月17日(土)付紙面より
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庄内地方のほとんどの中学校で16日、卒業証書授与式が行われ、卒業生たちがそれぞれの思いを胸に、3年間にわたって慣れ親しんだ学びやを巣立った。
県庄内教育事務所によると、庄内地方では、卒業生がいない酒田市の飛島中を除く24校のうち1校が15日、残る23校が16日に卒業式を行った。
このうち、酒田二中との統合により今月末で58年の歴史に幕を閉じる同市の平田中(秋葉忠校長)では午前9時半から、全校生徒と教職員、保護者、来賓が出席し、体育館で最後となる卒業式が行われた。
拍手の中、胸にコサージュを付けた卒業生50人が入場。秋葉校長が卒業生一人一人に卒業証書を授与した後、「卒業おめでとう。皆さんに手渡した卒業証書は義務教育9年の課程を終え、一人の人間として生きていくための旅立ちのチケット。一瞬一瞬を大切に、精いっぱい努力し、自分らしく輝く未来を追求していってほしい」と式辞を述べた。
市教育委員会の石川翼久教育長、同校PTAの横山直樹会長の祝辞に続き、在校生を代表し佐藤憲史君(2年)が「積極的に、責任を持って仕事をする卒業生の姿は格好良く、頼れる存在だった。在校生も新しい道を歩む。壁にぶつかったら、皆さんを思い出し、力強く前進していきたい」と送辞。これに対し、卒業生代表の小野寺星河君が「一つ一つの行事を通し達成感・充実感を味わい、人間として大きく成長できた3年間だった」と話した上で、「58年の伝統を踏まえ、自信を持って新二中の伝統の礎になってほしい」と在校生にエールを送った。
この後、出席者全員で校歌斉唱。晴れやかな歌声を館内に響かせ、卒業生たちは巣立つ決意を新たにしていた。
2012年(平成24年) 3月17日(土)付紙面より
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観光庁が中心になり、東北6県への観光誘客を促進するキャンペーン「東北観光博」が18日から本格的に始まる。東日本大震災を踏まえ、来年3月末まで1年間にわたり、東北各地の観光の魅力を首都圏などでPR、各地元では「地域観光案内人」を配置するなどして迎える。庄内地方でも、庄内観光コンベンション協会(会長・榎本政規鶴岡市長)が中心になって受け入れ態勢を整えており、初日の18日には鶴岡、酒田両市で記念イベントを実施する。
東北観光博は、昨年10月に閣議決定した国の本年度3次補正予算による事業。東北全体を博覧会場に見立て、大震災で落ち込んだ観光需要を喚起するもので、観光庁では来年度分の2億5000万円を合わせ計8億円の事業予算を確保している。
国土交通大臣を委員長、東北6県の知事を副委員長とする実行委員会を組織し、東北全体で核となる28のゾーンを設定。各ゾーンでは市町村や地域関係者らで運営協議会をつくり、受け入れ準備を進めている。
各ゾーンでは、着地型の旅行や体験プログラムを企画。各1カ所の「旅のサロン」と数カ所の「旅の駅」を設定し、それぞれ地域観光案内人や公式ガイドブックの配布で各地域の魅力をPRする。旅のサロンでは特典付きの「パスポート」も発行し、地域の人々との交流を促進する。実行委ではポータルサイト開設による各企画のPR、JRや旅行会社などとの連携で首都圏などからの送客を強化する。一部のゾーンは1月末から先行スタートしている。
県内は、庄内、最上、銀山温泉、上山・天童・山形蔵王、米沢・おきたまの5ゾーンを設定。庄内では庄内観光コンベンション協会がゾーン運営協議会の事務局を担い、「出羽庄内 心の旅?日本の心の内側へ」をテーマに、湊町・酒田と城下町・鶴岡、羽黒山などの歴史、食、映画ロケ地などを売り込むプログラムを提案している。
今のところ、旅のサロンとしてはJR鶴岡駅構内の鶴岡市観光案内所、旅の駅は酒田市の酒田夢の倶楽(くら)、遊佐町の「道の駅鳥海ふらっと」の2カ所を設定している。
18日は正午すぎ、JR鶴岡駅で下車するジョイフルトレイン「きらきらうえつ」と特急「いなほ3号」の利用者にミニ御殿まりなどのプレゼント、酒田夢の倶楽で正午前、首都圏からのバスツアー客に酒田囃子(ばやし)の演奏、地酒の振る舞いや手拭いのプレゼントなどを行う。
庄内観光コンベンション協会事務局では「快く受け入れるようにおもてなしの態勢を強化していく」としている。
2012年(平成24年) 3月17日(土)付紙面より
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海岸林の生態系サービス 林田 光祐
3月11日、東日本大震災から1年が経ちました。大津波による被害はあまりにも甚大で、被災地の復興にはまだ長い道のりです。海岸近くに住む庄内の私たちにとっても、とても他人事とは思えません。
この大津波で注目を浴びたのが海岸のマツ林です。海岸にマツ林があったから家が全壊しなかったとか、マツ林が壊れたことで津波の力が減衰したとか、これだけ大きな津波がきたら海岸のマツ林は何の役にも立たなかったとか、様々な情報が流れました。
いったいどれが正しい情報なのか、海岸林を研究している全国の研究者が協力して調査を開始しました。調査が進むにつれてわかってきたことは、先ほどあげた情報はどれも正しい情報だったということです。なぜならば、海岸のマツ林自体も林の規模やマツの大きさ、樹齢、本数密度など異なりますし、マツ林の地盤である海岸砂丘の高さも異なります。もちろん、地域によって押し寄せた津波の高さも異なります。このような条件によって結果も様々だったのです。
では、はたして海岸林は津波による被害を防ぐ効果があったのでしょうか。残念ながらコンクリート製の防潮堤とちがって、海岸林で津波被害を“防ぐ”ことはできません。しかし、被害を“軽減する”効果は認められました。どの程度効いたのか。一言で表現すれば、「それなりに」効いたようです。このそれなりの効果というのはあいまいですが、この柔軟性が生き物の集団である森林ならではの特徴なのです。
それにもまして大きな特徴は、森林が持つマルチな機能です。海岸林はそもそも海からの飛砂や潮風をやわらげるために人がつくった森林です。このような津波被害軽減以外の防災機能はもちろんですが、森が育つにつれ多くの植物や動物が生息する環境になり、白砂青松と呼ばれる景観とともに鳥の声や森の香りが人々の心を癒してくれます。さらに、樹木が光合成をして成長することで、酸素を供給し、温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収して木材として蓄積する機能もあります。これを木材として利用したり、木質バイオマスエネルギーとして利用することも可能です。子供たちの環境教育の場としての活用など、まだまだあると思いますが、いかに多くの機能を持っているのかおわかりいただけたでしょう。
森林などの生態系に由来し、人々の利益になる様々な機能をまとめて生態系サービスと最近は呼んでいます。これらの機能の経済価値をひとつひとつ評価して生態系のトータルの価値を認めてもらおうという考えから生まれた言葉です。このような総合力こそ森林の一番の魅力です。
大事なのは、私たちが海岸林の総合力を正しく理解し、そして正しく活用することです。
海岸林がもつこれらの働きを庄内に住む私たちは長い歴史のなかで身をもって学んできました。そのことが、荒廃が進む全国の海岸林のなかで、模範的な活動と賞賛される庄内海岸林の保全活動に実を結んだのだと思います。庄内で培った活動のノウハウはこれからの被災地での海岸林の再生・復興にきっと役立つにちがいありません。そんな息の長い支援も考える時期になったのではないでしょうか。
(山形大学農学部教授、専門は生物多様性の保全を主とした森林生態学)