2013年(平成25年) 3月19日(火)付紙面より
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昨年3月に閉校となった鶴岡市温海の県立鶴岡中央高旧温海校の活用をテーマに、地域再生プロジェクトを検討してきた東北公益文科大大学院特別講座の公開シンポジウム「庄内キネマ創造都市」が17日、同市の同大学院ホールで開かれた。映画人育成の「あつみキネマ塾」や、内外の演劇などを上演する「あつみ座」、地域の食文化を生かしたレストランなどを公設民営方式で整備するプランが示された。温海地区の住民組織ではこれをたたき台に、行政を巻き込んだ勉強会を立ち上げるなど実現に向けて動きだしたい考えだ。
特別講座は「まちづくりデザインスタジオ2」と銘打ち、昨年10月からこの日まで計10回開講。大学院生や一般、合わせて32人が、旧温海校の活用をテーマに、地域再生プロジェクトの立案方法を実践的に学んだ。
あくまで「学び」の一環だが、庄内映画村(鶴岡市、宇生雅明社長)が昨夏、旧温海校に映画スタジオを造りたいという構想を掲げ、住民有志が呼応して温海高校再利用プロジェクト「未来に向かって」実行委員会(奥井良幸代表)を立ち上げた流れを踏まえている。
講座では「映画」と「豊かな自然」をキーワードに、空間、利用運営、事業各計画の3班に分かれて検討。この日の公開シンポジウムには受講生を含め約60人が参加し、各班の報告を聞いた。
報告によると、「あつみキネマ塾」は校舎3・4階に入れ、講義室や演技指導室などを備える。体育館を「あつみ座」とし、内外の演劇や古典芸能、キネマ塾生の上演などを行う。そのほか、校舎1階にはオーガニックレストラン、産直・土産コーナー、インフォメーションセンター(地域観光資源の展示・案内)、2階には映画撮影で使用した小道具などを展示する「あつみキネマパーク」、「食文化体験工房」、体育館下には海産物の残さなどを使ったバイオマスの研究施設、校庭には乗馬クラブをつくる。
キネマ塾では、全国から俳優・映画づくりを志す人を年間1000人程度集めて育成し、あつみ座での演劇公演のほか、庄内映画村が関わる映画制作にも携わってもらう。建物は県から市に払い下げた上で、市が県などの補助を受けて改修、地域住民らによる運営組織が運営していく。あつみ温泉の宿泊・日帰り客をターゲットに、年間利用者約20万人、経済効果は30億円を見込む、という提案だ。
宇生社長は「スピードが大事なので、今月中に温海地区でも今日と同様の報告会を開いた上、行政を巻き込み、実現に向け話し合いをしていきたい。この経緯をドキュメンタリーにしても面白いかも」、奥井代表は「今、地元住民組織をNPO化する準備を進めており、行政や大学院などの協力を得て、ぜひ実現させていきたい」とそれぞれ意欲を新たにしていた。