2013年(平成25年) 10月10日(木)付紙面より
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鶴岡市立加茂水族館(村上龍男館長)で「水族館の芋煮展」が開かれている。里芋なら「イモリ」など、庄内風芋煮の食材にちなんだ生物を展示しており、家族連れが「芋煮だって。面白いね」と話しながら水槽をのぞき込んでいる。
秋に河原や海岸で集まりわいわい楽しみながら食べる山形名物の芋煮をテーマに、毎年この時期に実施している恒例の展示会。今回は「里芋」=「イモリ」、「豚肉」=「河豚(フグ)」、「こんにゃく」=「イソギンチャク」、「長ネギ」=「ナガニシ」(巻き貝の仲間)、「シメジ」=「メジナ」、「みそ」=「カニ(みそ)」、「だししょう油(ゆ)」=「油はや(アブラハヤ)」、「日本酒」=「ニホンクモヒトデ」と、駄じゃれやこじつけで海と川の生き物8種類を展示した。
水槽内に小型の水槽を沈めて淡水魚のアブラハヤを泳がせ、木板などを加工して水槽を鍋に見立て下から火で温める様子を再現。近くの壁に庄内風芋煮のレシピを張り出すなど、遊び心満載の展示会となった。
同館を訪れた家族連れなどが水槽前で足を止め、「フグは何?」「河豚だから豚肉だって」と会話しながら興味深そうに中をのぞき込んでいた。展示は14日まで。
2013年(平成25年) 10月10日(木)付紙面より
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遊佐町の蕨岡小学校(阿彦裕光校長)の5年生21人が8日、同校北側のほ場で稲刈りに挑戦。風雨が強まる中、児童たちはかすりの着物に着替えた上で、女子はさらにハンコタンナを着け、これまで大切に育ててきた稲を一株ずつ丁寧に刈った。
米作りを通して地元の産業について知識を深めてもらおうと、同校では毎年、同町のJA庄内みどり遊佐支店の協力で5年生が総合学習の時間を活用し、塩水選から芽出し、手植え、追肥、収穫まで一連の稲作作業を体験している。
今年は5月に同支店営農課の那須耕司さん(同町豊岡)の指導で、県の主力品種「はえぬき」の苗を手植えし、これまで大切に育ててきた。那須さんによると、7月の長雨の影響で収量はいまひとつだが、品質の良い米に仕上がったという。
この日はあいにくの雨降りの中、同校に代々受け継がれてきているかすりの着物やハンコタンナを身に着け、児童たちが約3アールのほ場で稲刈りに挑戦。那須さんから刈る際の注意点を聞いた児童たちは鎌を使って一株一株丁寧に刈り、8株ずつ束ねていた。
同校によると、収穫した米は交流のある福祉施設に贈ったり、自分たちで味わうことにしているという。
2013年(平成25年) 10月10日(木)付紙面より
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紅葉「なぜ」赤い? 小山 浩正
生物の営みを理解するには2つの「なぜ?」が必要です。ひとつは、そのメカニズムを問う「なぜ」。もうひとつは、生きていく上でどうしてそれが必要なのか、つまり意義に関わる「なぜ」です。例えば、子供に「なぜ赤信号で止まるの?」と聞かれて「赤色域の光を眼球の網膜が捕らえ、視神経から刺激を受けた大脳が足の筋肉に歩行の停止を命じるから」と答えるのはメカニズムです。でも、それだけでは子供は確実に事故に遭います。この場合、ルールとしての意義の方が大事です。そう言えば、だいぶ前に妻とガスコンロを買いに出かけた時のこと。売り場には、放置すると自動的に消える当時の最新型が並んでいました。うっかり「なんで止まるんだ?」とつぶやいたら、白い目をした彼女が「火事にしないためでしょ」…うん、さすがにそれは分かるけど、私が知りたかったのはメカニズムの方。この種のかみ合わない会話が2つの「なぜ」をめぐってよく起きたものです。
さて、そろそろ山が鮮やかに染まる季節。7年前に始まった「つるおか森の時間」の初回は10月の六十里越街道の散策でした。田麦俣から湯殿山に抜ける旧道で、バスがカーブを抜けた瞬間に現れた真っ赤な山肌に思わずどよめきと歓声が上がったのを思い出します。極彩色の絵の具がいきなり眼前で炸裂したかのような衝撃的パノラマでした。
それにしても、秋の木の葉は「なぜ」赤くなるのでしょう?メカニズムは説明できるのです。アントシアニンという赤い色素が合成されるからです。でも、それだけではもうひとつの意義が説明できません。捨てる直前の葉をなぜ赤くする必要があるのか?わざわざアントシアニンを作って直ちに落葉するのが解せません。ところが2001年に驚天動地の学説が発表されました。なんと「アブラムシから逃れるため」というのです。北半球の262種の樹木で調べた結果、鮮やかに紅葉する種類ほどアブラムシの害が少ない傾向が見いだされました。このことから、色を識別できるアブラムシの能力を逆手にとった策略ではないかと考えられたのです。アントシアニンのような余計な物質を作れるほど元気で余裕のある樹なら抵抗力も強いだろうとアブラムシが判断して産卵を避ける。そのため紅葉した樹は翌春の被害を逃れる、という理屈です…。
皆さん、いま、眉に唾しているでしょ。私の説明では無理もありません。でも、言い出しっぺがウイリアム・ハミルトンなので話が違うのです。このヒトはダーウィン以来の天才と称えられ、もう少し長生きしたら確実にノーベル賞を獲っただろうと惜しまれています。進化論に数多(あまた)の新機軸をもたらした偉人の説ならば、眉を掻くのが5回から3回くらいには減りませんかね。もっとも紅葉の原因がアブラムシにあったとしたらちょっと興ざめです。そして、ヒトという動物が「なぜ」それに感激するのかもまた謎です。実りの秋。熟した果実の赤と勘違いをするのでしょうか。でも、それにどんな意義が??
(山形大学農学部教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)