2013年(平成25年) 7月30日(火)付紙面より
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今年で30回目を迎えた「水焔(すいえん)の能」が27日、鶴岡市の櫛引スポーツセンターで開かれた。屋内での公演は15年ぶりで、同市黒川地区に伝わる黒川能(国指定重要無形民俗文化財)と、酒田市の松山能(県指定無形民俗文化財)が初めて共演、県内外の能楽ファンらを魅了した。
500年以上にわたり住民が受け継いでいる黒川能を、夏の宵に、水上に設けた舞台で、かがり火の明かりで鑑賞するもので、市が毎年この時期に主催している。今回は降雨のため、第15回(1998年)以来15年ぶり2回目の屋内公演となった。首都圏のツアー客を含め、県内外の約600人が鑑賞した。
櫛引東小の児童による舞囃子「高砂」に続き、30回記念として招かれた松山能が能「安達原」を上演。引き続き、黒川能下座(上野由部座長)が半能「箙(えびら)」、狂言「附子(ぶす)」、能「石橋(しゃっきょう)」の3演目を演じた。
「安達原」では、穏やかな表情で糸車を回していた女主人が、人を食らう鬼となって現れると、おどろおどろしい雰囲気に包まれた。また、「石橋」では後段、文殊菩薩に仕える獅子が、通常は赤頭、白頭の2匹のところ、今回は特別に赤頭がさらに1匹加わって登場。3匹の獅子が長い髪を振り乱し、舞台狭しと跳ね回って華やかさを演出、観客から大きな拍手が送られた。
2013年(平成25年) 7月30日(火)付紙面より
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鶴岡市と友好都市・東京都江戸川区の合唱愛好者による第16回鶴岡江戸川友好交流演奏会が28日、鶴岡市文化会館で開かれた。モーツァルトが作曲した中で最も有名な宗教曲「戴冠ミサ」では山形交響楽団の演奏とともに100人余りが高らかに歌い上げ、ヘンデル作曲「オンブラ・マイ・フ」では指揮者の江上孝則さんが取り壊される現在の文化会館への感謝を込めて作詞した日本語の歌詞を、地元の高校生たちも加わった合唱で披露した。
両市区は、太平洋戦争時に江戸川の学童が鶴岡に疎開した縁から交流が始まり、1981(昭和56)年に友好都市を盟約。交流演奏会は94年に市文化会館で開催されたベートーベン作曲の「第九」演奏会を皮切りに始まり、両市区で交互に開いている。関係者による実行委員会(委員長・酒井忠久致道博物館長)が主催し、今回は地元の鶴岡江戸川交流合唱団、江戸川第九を歌う会、地元の女声アンサンブル「ろすまりん」、遊佐混声合唱団など総勢100人余りが出演。昨年6月の江戸川区での交流演奏会直後から練習を重ねてきた。
ステージは2部構成。オペラ指揮の第一人者として活躍する江上さんを指揮者に迎え、山響の「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章の演奏で幕開け。高田三郎作曲「混声合唱組曲『心の四季』より―風が」に続いて、各合唱団に鶴岡北、鶴岡中央、羽黒、庄内農業の各高校の音楽・合唱部員約120人を加えた総勢220人余りがヘンデル作曲「オンブラ・マイ・フ」を披露。同曲では、新会館建設のため本年度に取り壊される市文化会館に感謝を込め江上さんが2番の歌詞を作詞し、旋律にのせ歌った。
メーンの第2部で「戴冠ミサ」が披露され、公募で選ばれた中山祥子さん(ソプラノ、鶴岡市)、川田麻美さん(アルト、酒田市)、宮里直樹さん(テノール、東京芸大大学院生)、鈴木集さん(バリトン、山形市)の4人のソリストと共に、荘厳な宗教曲を高らかに歌い上げた。
第1部のステージに参加した羽黒高校合唱部の黒坂麗華さん(2年)、齋藤瑞穂さん(同)の2人は「江戸川区の人たちと一緒に、オーケストラの演奏をバックに歌えたことは貴重な体験。演奏中に鳥肌が立った。練習で多くの指導を頂いたので、今後の部活に役立てていきたい」と笑顔で話していた。