2013年(平成25年) 8月29日(木)付紙面より
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山形大農学部(西澤隆学部長)の在来作物講座「おしゃべりな畑」の開校式が27日、鶴岡市若葉町の同学部で行われ、来年1月まで約半年間にわたる講座がスタートした。
「生きた文化財」と呼ばれる在来作物について学び、地域の食・文化に精通したリーダーを育成、食農ビジネスの創出につなげるもの。2010年度から開講し、昨年度からは文部科学省の中核的専門人材養成事業の助成を受けている。
4回目の本年度は、庄内地方を中心に米沢市、西川町、最上町、新潟市など県内外の約40人が受講。同学部教授陣や地元の専門家らが講師となり、栽培技術や加工、販売、歴史、文化など講義約50時間、実地約25時間にわたり学ぶ。規定の時間を修了すると、「やまがた在来作物案内人」の認定証が贈られる。
開校式では西澤学部長が「庄内、山形から在来作物を利用した地域発の起業を」と激励、事務局がガイダンスで「お互いに交流を深め今後の事業展開に生かして」などアドバイスした。
引き続き同学部の小沢亙教授が「農産物を消費から見ると、生産から見ると」と題して初講。一般家庭における米の支出が1カ月2184円(全支出の0・7%)という消費の実態、国内の食料自給率がカロリーベースで39%と低い状況など説明した上、「仮に米の価格が20%上がった場合、消費者にとっては1カ月437円の増だが、生産者の所得は10アール当たり約70%増の約6万円になる」など、消費者の理解によって国内農業を支える重要性を訴えた。
鶴岡市白山で枝豆を生産している農業、阿部崇さん(41)は「流通や市場のことなども学び、今後の経営に生かしたい。特に県外に売り込むとき、山形の農産物はすごいときちんと説明できることが武器になるはず」と受講の動機を話した。
2013年(平成25年) 8月29日(木)付紙面より
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昨年4月から常駐の医師がいなくなっていた酒田市の飛島に赴任する内科医・野口健一さん(53)に27日、飛島診療所長を命じる辞令が本間正巳市長から交付された。引き続き市役所で記者会見した野口さんは「医師として原点に返り、島民に教わりながら離島医療の在り方を学びたい。まずは痛みを緩和する治療に重点を置き、将来的には生活習慣の改善指導に取り組みたい」と抱負を述べた。来月2日から診療を開始する。
野口さんは茨城県生まれ。無医村で育ち、小児ぜんそくの発作で苦しんだ経験から「いずれ無医村やへき地での医療に関わりたい」と以前から思っていたところ、インターネットで酒田市が飛島の常駐医を募集しているのを知った。
「若い頃は文学青年で藤沢周平の作品が好き。映画『おくりびと』も舞台となった酒田の雪のシーンが良かったことから山形県に思い入れがあった。離島の医師募集は長崎県など多いが、飛島の写真を見て魅力を感じて決めた」とし、実家が鮮魚店だったため「新鮮な魚介類を食べられるのも楽しみ」と笑顔で話した。
千葉大医学部卒業後、1都7県で勤務。今月まで長野県南部の下那伊厚生病院に勤めた。「医師免許をもらった時の原点に返り、これまでの集大成として離島での医療に当たり、島民に恩返ししたい」とし、高齢者が大半を占め、どこかに痛みを抱えている島民が多いため、「まず痛みの緩和に重点を置きたい。整体術やカイロプラクティックなども学んできた。役立つと思う」と語った。
さらに、「医学が病院中心になっている今、健康な生活を送るための習慣、環境の改善指導が一番欠けている」との認識を示し、市に予算の計上を求めて取り組む考えを明らかにした。
飛島は昨年4月から1年5カ月間、常駐医が不在。辞令を手渡した本間市長が「島民に不便と心配を掛けた。ほっとしている。ぜひ長く勤務してほしい」と求めたのに対し、野口さんは「生半可な気持ちでは来ていない。追い出されるか、精根尽き果てるか。少なくとも定年までは飛島で診療に当たる」と決意を述べた。