2014年(平成26年) 4月13日(日)付紙面より
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6月1日にリニューアルオープンする鶴岡市立加茂水族館の村上龍男館長(74)が、来年3月末で館長職を退くことになった。集客に苦しんでいた同館をクラゲ展示で立て直した“名物館長”の勇退に、周囲からは「新水族館が軌道に乗ってからでも遅くないのでは」など惜しむ声が上がっている。
村上館長によると、同水族館を管理する市開発公社側から今年2月、来年3月末での退任を要請されたという。村上館長は「運営元からの通達に従い後進に道を譲ろうという考えに至った。半世紀近くにわたって支えてくださった市民の皆さん、水族館を取り巻く関係者の皆さんに深く感謝している。来年3月まで一生懸命職務を全うしたい」と語った。水族館職員には今月1日に勇退を告げた。後任は未定。
村上館長の勇退に、近くの加茂小学校の升川繁敏校長は「総合学習で2、3年生が水族館を訪問し、魚やクラゲなど海洋学習をさせてもらっている。先月もミズクラゲの引っ越しに児童たちが参加し、ひと足早く新水族館を見学させてもらうなどいろいろお世話になった。勇退は残念で仕方がない」と語った。
クラゲ類生態の研究者で村上館長と親交の深い水産大学校(山口県下関市)生物生産学科特命教授の上野俊士郎さんは「クラネタリウム、クラゲを食べる会、クラゲ研究所、クラゲレストラン、ノーベル化学賞受賞の下村脩博士の来館、ギネス認定など数々の独創的な企画を成功させた、館長の卓越した経営手腕に脱帽している。新水族館が軌道に乗る数年間、最後の仕事をしていただいてから、若い後継者に道を譲ってほしいと思っていた」と話した。
村上館長は1966(昭和41)年、当時の市立加茂水族館に飼育主任として勤務し、同館が庄内観光公社に売却された67年に館長就任。96―98年に9万人台まで落ち込んだ入館者数をクラゲに特化した展示で「世界一のクラゲ水族館」に生まれ変わらせ、集客を回復。同館の入館者は12年度、過去最高の27万人を突破した。