2015年(平成27年) 12月5日(土)付紙面より
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城下町・鶴岡に年の瀬を告げる餅菓子「切さんしょ」作りが、鶴岡市街地の菓子店で最盛期を迎えている。
切さんしょは明治初期、旧一日市町(鶴岡市本町二丁目)の老舗菓子店「長崎屋」の8代目店主・佐藤甚右エ門が、東京浅草の酉(とり)の市で見つけた菓子に着想を得たとされる。当時は和菓子を作る際に出る大量のくずを乾燥させて、石臼でひいて粉にし、さんしょうの粉を入れて加工していたという。
その後、市街地にある七日町観音堂のだるま市(12月17日)で縁起菓子として売られるようになり、現在も師走の風物詩として市民に親しまれている。もち米に黒糖と、さんしょうの粉末を練り込んで作る切さんしょうは、柔らかな食感と優しい甘味がある。
同市の菓子製造販売「木村屋」(吉野隆一社長)では、先月15日ごろから製造を開始し、連日作業に追われている。今月17日の観音様のお歳夜まで1万2000箱超(1箱190グラム)を製造。同市覚岸寺にあるファクトリーストア工場内では、さんしょうを練り込んだ生地が細切りになると、黒糖の甘い香りとほのかな爽やかさが辺りに広がっていた。
吉野社長は「一年の厄を払い、新年も良きことあれという気持ちで食べてもらいたい」と話していた。