2017年(平成29年) 7月26日(水)付紙面より
ツイート
東北農政局赤川農業水利事業所(中井雅所長)が、鶴岡市板井川にある幹線農業用水路を活用して整備した「赤川地区小水力発電所」が完成し、今月2日から本格稼働を始めた。用水路の落差を生かして水車を回し発電するもので、年間の発電電力量は一般家庭約500世帯分に相当する約190万キロワット時に上る。施設用に活用するほか、東北電力に売電し土地改良事業による農業用水供給の維持管理費軽減を図る。国営事業に伴う小水力発電所の設置は、庄内地域では初めて。
同市熊出の赤川頭首工と鶴岡、酒田、三川の3市町にまたがる幹線用水路を改修する「国営かんがい排水事業赤川二期地区」に合わせ、発電所を整備した。赤川二期地区改修は2010年度に始まり、20年度まで総事業費149億円(当初計画)で事業が進められている。
板井川の小水力発電施設整備は、東日本大震災後の再生可能エネルギー導入の動きを受け、新たに計画された。適地として用水路の落差工が5カ所連続し高低差(有効最大落差7・2メートル)があり、近くに送電線のある板井川地区の西1号幹線用水路(幅6・5メートル、深さ3・8メートル)を選定。15年度に着工し2カ年事業で今年3月に施設が完成した。
上流部にごみを取り除く除塵(じょじん)機とともに取水口を設け、用水路脇に導水路を整備して下流の地下に直径1・3メートルの発電用水車2基を備えた。冬場の水量確保のため、取水口付近の用水路に可動式の「堰上ゲート」も整備。取水した用水は発電所そばの出口から用水路に戻す。総事業費は約7億円。発電設備は最大出力297キロワット。24時間稼働する。発電した電力は発電所の操作に利用するほか、東北電力に1キロワット時当たり29円で売電する。
赤川農業水利事業所によると、発電量を全量売電した場合の売電収入は約5000万円に上る。自家使用以外の売電収入は、土地改良施設の維持管理に充当する。発電所施設の管理運営は庄内赤川土地改良区(佐藤俊介理事長)と因幡堰土地改良区(冨樫達喜理事長)による赤川地区共同管理委員会が担う。
同管理委員会は8月1日(火)に発電所の現地で、施設の完成を祝う竣工(しゅんこう)式を予定している。
2017年(平成29年) 7月26日(水)付紙面より
ツイート
飽海地区高等学校図書委員研修会が24日、酒田市の酒田光陵高図書館で開かれ、地区内6校の図書委員たちが、同市出身の詩人・吉野弘さん(1926―2014年)の詩の朗読を通じ、郷土が生んだ芸術家の心に触れるとともに、表現する楽しさを体験した。
県高等学校教育研究会図書館部会飽海支部(支部長・鈴木和仁酒田光陵高校長)が年2回ほど開いている研修会。通常は外部講師による講演が多いが、今回は当番校の酒田光陵高(旧酒田商業高)が吉野さんの母校でもあることから、吉野作品の朗読に取り組んだ。6校の図書委員17人が参加した。
生徒たちは「酒田詩の朗読会」代表の阿蘇孝子さんのアドバイスを受けながら、2、3人ずつの6グループに分かれ、「生命は」「夕焼け」「虹の足」など吉野さんの6作品のうちから2作品ずつ朗読。グループ内で各自がその詩を読んで感じたことや、聞く人に何を伝えたいかなどを話し合った後、グループごとに朗読を発表した。同じ詩でも「幻想的な雰囲気を強調したい」「吉野さんの力強い主張を際立たせたい」など解釈が違ったり、1連ごとに交代したり、3人で声をそろえたりと表現もさまざまだった。
阿蘇さんは講評で「吉野さんの詩には、命へのいとおしさがあふれている。それは、13歳の時に母親を亡くし、戦争で同級生が死に、24歳で結核になったりと、間近に死を見てきて、今、命あることを伝え、共有したかったからだと思う。言葉を大切にしてほしい」と呼び掛けた。
遊佐高3年の高橋まみさん(17)は「とても楽しかった。吉野さんのことは今回初めて知った。詩がこんなに深く、たくさんのものが詰まっているとは知らなかった」と話した。
6校の図書委員は今後、各校で生徒から詩を募集してコンクールを行う予定。