2017年(平成29年) 7月13日(木)付紙面より
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酒田市などによる「鉄道高速化講演会」が11日、同市の東北公益文科大公益ホールで開かれた。フル規格新幹線と在来線の間の時速130―200キロ程度で運行する「中速鉄道」をJR陸羽西線に導入することで、低コスト、短期間で庄内―東京間を2時間半程度で結ぶ構想を軸に、工学院大の曽根悟特任教授と、交通計画コンサルティング「ライトレール」の阿部等社長の2人が講演と対談で、実現の方策を探った。
市と陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会(会長・丸山至酒田市長)が主催した。阿部社長は今年2月に同市で講演した際、わが国には皆無に近い「中速鉄道」で庄内―東京間を約2時間半で結び、建設コストはフル規格新幹線の5分の1程度、建設期間は7年程度という構想を発表し、反響を呼んだ。今回はこの中速鉄道の実現可能性を掘り下げる狙い。庄内、最上両地域の約400人が参加した。
わが国の中速鉄道推進の第一人者である曽根教授は講演で、「高速鉄道技術を持っている国で中速鉄道がないのは日本だけ」とし、国内では高コストなフル規格新幹線(最高時速260キロ)と、低機能な在来線(同130キロ未満)の両極化が、鉄道全体の発展を阻害している現状を指摘。一方、中国は中速鉄道のネットワーク拡大をけん引力に、国内の鉄道全体の発展につなげ、日本のフル規格新幹線に相当する高速鉄道の軌道延長は既に日本の2・4倍に達している例も紹介。庄内―東京間は中速鉄道の導入で「2時間40分台後半」、建設期間は「7年、またはそれより短くできる」とした。
阿部社長は講演で、2月の提案の走行・停車時間などをさらに精査し、より現実的なプランとして、庄内―東京間を「2時間45分」で結ぶ方法を提案。空力特性に優れた新車両の導入や福島―米沢間の板谷峠の新線建設など、考え得る速度向上・安全・効率化の各対策を結集するもので、概算事業費は新車両建造を含め「数千年億円程度」とした。そして、「羽越新幹線は、建設の優先順位が仮に中位だとしても、着工は2080年ごろ、建設費は1・3兆円。山形新幹線は県の発案で実現した。同じようにこの地域からの発案で中速鉄道の第1号を実現し、全国に広げて」と訴えた。
その後、温井亨東北公益文科大教授の司会で、曽根教授と阿部社長が対談。「中速鉄道は日本で一つのきっかけで急速に広がる可能性がある」(曽根教授)、「日本には高価格鉄道(フル規格新幹線)と低機能鉄道(ミニ新幹線を含む在来線)しかない。中速鉄道は相応の機能があり、低価格。県も検討を」(阿部社長)など熱く意見を交わした。
丸山市長は講演後、「中速鉄道が日本全体の鉄道ネットワーク整備に必要、かつ有効な手段という認識を強めた。今の整備新幹線の方針を変えていく必要があるのではと、国や県に理解を求めていきたい」と話した。中速鉄道の実現に向け、市などはライトレールに、建設コストや運行時間などを精査する調査を委託しており、来月初旬ごろまでにはまとめ、要望活動などの基礎資料にしていくという。
2017年(平成29年) 7月13日(木)付紙面より
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鶴岡市のあつみ温泉の観光振興と温泉街の風物詩「朝市」の活性化に向けて、あつみ観光協会(若松邦彦会長)は、本年度から3カ年で「朝市広場活性化事業」に取り組む。11日、出羽商工会温海支所を会場に関係機関で意見交換会を開催。衰退する朝市の現状を確認するとともに、「オール温海」体制での事業展開に理解を求めた。
あつみ温泉の朝市は、江戸時代中期、「あば」と呼ばれる海岸部の女性たちが新鮮な魚介類や農産物を露店販売したのが始まりとされる。1989年からは温泉街中心部の朝市広場で、あつみ観光協会管理の木造平屋建て長屋式店舗を出店者が間借りする形で4月から11月の期間実施している。
あつみ温泉への入客数は90年の年間約35万人をピークに減少、朝市もこの影響を受けて衰退。出店者で組織する朝市組合も2年前に解散。売り上げがピークの4分の1まで落ち込んだ出店者もいるという。朝市広場では22店舗を受け入れられるが、現在の出店は6人で7店舗と、かつての温泉街のにぎわいの象徴は“シャッター通り状態”となっている。
活性化事業では、外部有識者による講演会開催、新規出店獲得に向けて店舗使用料や営業時間を見直すなどの環境整備、月1回ペースでのイベント開催などを計画。初年度の予算は約26万円で、市と観光協会が2分の1ずつ負担する。
この日の意見交換会では温泉関係者や温海地域の各自治会、朝市出店者など17人が出席。観光協会内への活性化検討委員会設置をはじめ、外部講師の講演会と定期的なイベント開催について協議。若松会長は「地元有志によるまちづくり団体の取り組みや、旅館組合によるインバウンド対策など、民間レベルのやる気は必ずしも衰えてはいない」。出店者の一人は「高齢化や売り上げ減少で辞めていく出店者も多く、定着も難しい。これまでも活性化に向けた取り組みはあったが、立ち消えている。それでも続けているのは人との出会いがあるから。伝統ある朝市への誇りや思いを理解してくれる人から協力してもらえれば」と話した。