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2017年(平成29年) 7月5日(水)付紙面より

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羽黒山正善院於竹大日堂保管の民具 手回し式紡績機「ガラ紡」と判明

 鶴岡市羽黒町手向の羽黒山正善院(島津弘海住職)の於竹大日堂に長年保管されていた民具が、綿などを糸にする「ガラ紡」と呼ばれる手回し式の紡績機であることが研究者らの調査で判明した。現存するガラ紡の確認は国内4例目で、焼き印などから約140年前の明治初期に鶴岡で製造されたものとみられる。確認されたガラ紡の糸車には絹が残されており、原料に綿ではなく絹を使用したものとしては国内初という。研究者らは、松ケ岡開墾の養蚕から始まった鶴岡の伝統的な絹産業の歴史を知る上でも貴重な発見としている。

 ガラ紡は1873(明治6)年に、長野県の僧侶・臥雲辰致(がうんたっち)によって発明された紡績機で、操作時の「ガラガラ」という独特の音からガラ紡と呼ばれた。77年に東京で開催された「第一回内国(ないこく)勧業博覧会」で最高賞を受賞し、全国各地に広まった。ガラ紡はその後、水車や電動機などの動力を付けた紡績機に改良され、発明初期の手回し機は姿を消していった。

 於竹大日堂に保管されていたガラ紡は、高さ約1メートル、幅約1・5メートル、奥行き約60センチの木製で、正面に「羽前 鶴岡五日町 起立教製 板垣佐平治」の焼き印と、「明治十三年」と記した墨書がある。

 昨秋の於竹大日如来の御開帳を前に正善院などが、堂内にあった見慣れない民具について松ケ岡開墾記念館、庄内映画村などの協力で調査し、ガラ紡と呼ばれる紡績機とみられることが分かった。昨年2月にはガラ紡研究の第一人者で、愛知大中部地方産業研究所の天野武弘研究員と、トヨタグループの創始者・豊田佐吉が発明した織り機やガラ紡のレプリカなどを展示するトヨタ産業技術記念館(愛知県)の吉岡愼一さんが調査のため来鶴した。

 その結果、発明初期の希少な手回しガラ紡と確認され、愛知県犬山市の博物館明治村、大阪市の日本綿業倶楽部、愛知県豊川市の個人所有に続く現存する国内4例目の発見となった。

 ガラ紡は本来、原料に綿を使用するが、残っていた繊維が絹であることも判明。調査した天野さんは「養蚕が盛んだった庄内独特のガラ紡だったのでは」と分析。また、木面に精巧な模様が施されていることから量産型ではなく名工による一品物との見方もあり、奉納のために製作された可能性もあるという。ただ、製作者とみられる「板垣佐平治」のルーツは未解明で、調査は継続中。

 鶴岡市のいでは文化記念館で8日(土)午後1時半から、天野さんによる「於竹大日如来と不思議なガラ紡」と題したギャラリートークがある。ガラ紡について解説するほか、確認されたガラ紡について参加者から広く情報を求める。「ささいな事でもいいので、ぜひ情報を寄せていただき、作者のルーツや、なぜ於竹大日堂から発見されたのかなど、庄内の皆さんと謎解きをしていきたい」と天野さんは呼び掛けている。

 ガラ紡は現在、いでは文化記念館に展示されており、情報は同記念館=電0235(62)4727=で随時受け付けている。

現存するものとしては国内4例目の発見となったガラ紡と、調査を担当した吉岡さん(左)と天野さん=昨年2月24日、鶴岡市羽黒町手向の正善院
現存するものとしては国内4例目の発見となったガラ紡と、調査を担当した吉岡さん(左)と天野さん=昨年2月24日、鶴岡市羽黒町手向の正善院

ガラ紡の正面に残る焼き印
ガラ紡の正面に残る焼き印


2017年(平成29年) 7月5日(水)付紙面より

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「希望」の歌声響く

 酒田市出身のシャンソン歌手、故岸洋子さん(1934―92年)の楽曲を広く歌い継いでいこうと今年5月に設立した同市の「岸洋子を歌いつぐ会」(高瀬靖会長)による初めての事業「七夕コンサート」が3日、同市の黒森小学校(岩本諒子校長、児童39人)で開かれ、同会事務局長を務める元音楽教師の佐藤喜和子さん(同市新橋四丁目)の指導で、全校児童らが「夜明けのうた」「希望」を合唱した。

 高瀬会長が代表の「かたりべ玉てばこ」(同市)は今年3月、「心をつなげよう歌の力」をテーマに「春の『玉てばこ』コンサート」と銘打ったコンサートを開催。本県に縁のある音楽家でつくるアンサンブル・ノエルの伴奏で、集まった市民約150人が「夜明けのうた」などを合唱した。

 同コンサート開催に奔走した高瀬会長、佐藤事務局長は「これからも岸さんの歌を歌い継いでいこう」と、岸さんの没後25年という節目に合わせて市民に呼び掛け、今年5月31日、「歌いつぐ会」を設立。会員は趣旨に賛同した10人ほど。

 岩本校長が同コンサートに参加していた縁で、「歌いつぐ会」として初の事業を同校で行った。この日は全校児童と教職員、地域住民計約50人が参加。佐藤事務局長が「中学生の時、テレビで岸さんの歌う姿を見て、びっくりした。音楽の先生になりたかったので、岸さんに憧れた」「岸さんはオペラ歌手になりたかった。膠原(こうげん)病という病のため他の出演者に迷惑が掛かるからと(一人で歌える)シャンソン歌手になった」などと話した後、「夜明けのうた」「希望」を指導。参加者全員でそれぞれ1番から3番まで音楽室内に歌声を響かせたほか、CDで岸さんの歌声を聴いた。

 児童の一人、5年の梅木大智君(10)は「声が響き、一言一言がはっきりしていてきれい」と感想。高瀬会長は「岸さんは、詩人の故吉野弘さんと並んで酒田の宝。市を挙げ、みんなで大切にしていかないといけない」と話した。

 佐藤事務局長によると、今月中旬には飛島中、若浜小でも同様のコンサートを開催する予定という。

佐藤事務局長(左)の指導で合唱する参加者たち
佐藤事務局長(左)の指導で合唱する参加者たち



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