2018年(平成30年) 7月8日(日)付紙面より
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海洋生物の保全・増殖活動などに取り組んでいる酒田市のNPO法人「みなと研究会」(守屋元志代表理事)は現在、酒田市の酒田北港内、通称「温排水」で海藻群落(藻場)造成に向けた調査活動を展開している。県自動車販売店リサイクルセンター(山形市、遠藤榮次郎社長)から譲り受けた廃車のシートベルトに藻の一種「アカモク(ギバサ)」の胞子を付着させた上で海中に設置し、その増殖具合を調べるもの。守屋代表理事は「アカモクは食材としても注目されている。藻場を造成させたい」と話している。
県沿岸部は砂地が多いため藻場の形成が少ないという特徴がある。その上、藻場が衰退・消滅し一帯が貧植生状態となる「磯焼け現象」の発生も広い範囲で確認されている。「藻場は魚介類の産卵場所、幼・稚魚の保育場所となり、水産資源の保護、培養に重要な役割を果たす」(守屋代表理事)という認識から今回、やまがた社会貢献基金協働助成事業の一つ、日産プリンス山形「子どもから大人まで環境にやさしい社会づくり支援事業」の補助を受け、藻場造成に向けた調査を実施することにした。
同法人は昨年6月、廃車シートベルト200本を約1・5メートルにそろえ、ブイを付けた10メートルのひも2本に縫い付けて「人工藻場」を製作し、酒田市の酒田北港内の通称「水路」に設置。同11月上旬に引き上げたところ、シートベルトにはカキなどの貝類が数多く付着していたほか、海中調査の結果、周囲では多くの小魚が泳ぎ回っていた。
守屋代表理事ら同法人メンバーが先月、昨年使用した「人工藻場」にアカモクの胞子を付着させて「温排水」の2カ所に設置。今月3日に一部を引き上げ確認したところ、シートベルトに貝類の付着は見られたが、アカモクはなかった。
同法人は2011年と14年の2回、長年にわたってアカモクの研究をしている元宮城県職員の佐々木久雄さん(工学博士)を招いて講演会を実施。同年には垂直な岸壁に付着させたアカモクの胞子を増殖させることに成功している。「人工藻場」を海中に再度、設置した守屋代表理事は「波の影響か、季節的なものか。アカモクは小魚の『楽園』になるだけでなく、食材としても注目されており、今後の推移を見守りたい」と話した。