2019年(令和1年) 10月23日(水)付紙面より
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ビーガン料理の世界大会「The Vegetarian Chance2019」が13日にイタリアで開催された。 世界各国から約200人の応募があり、1次選考で残った8人による決戦が行われ、酒田市出身の渡部駿さん(28)=羽黒高卒=が準優勝を果たした。渡部さんは「庄内の食文化とイタリア伝統料理をビーガン料理に生かし、料理を医療につなげて社会貢献できる料理人を目指したい」と語っている。
渡部さんは奥田政行オーナーシェフ(アル・ケッチァーノ、鶴岡市)の下で4年間働いた後に渡伊、星付きビーガンレストラン(ジョイヤ、ミラノ)での修業を経て、現在はイタリアの三つ星レストラン(オステリア・フランチェスカーナ、モデナ)で労働ビザを得て働いている。
本大会は植物性食材だけで作る料理を競うコンテストで、渡部さんは県産の豆を庄内の「かた餅」の技法で葉の形の豆チップスに仕上げ、秋の紅葉を表現。高野豆腐と大豆で作ったトマト味のソイボールとともに高い評価を受けた。日本では縁起物である鯛の形の「たい焼き」のあんには、鶴岡市大山の酒蔵の酒かすをヘーゼルナッツと合わせクリームチーズ風の新しい味で紹介した。
渡部さんは初の国際舞台を経験し、「自分の意思や料理に対する思いをイタリア語で素直にスピーチできたことが自信につながった」と話し、今後も語学力を高めシェフの立場に求められる総合力を身に付けるため、引き続きイタリアで研さんを積むという。将来的には精進料理や工夫された調理技術が残る庄内の食文化とイタリア伝統料理をビーガン料理に生かし、医療につなげて病気の改善に役立つ料理を作り、社会に貢献できる料理人を目指す心意気だ。渡部さんは今回の受賞について「関わった全ての人たちのおかげ。1年に及ぶチームのサポート、奥田シェフや支えてくれた同僚と両親へ感謝したい」と語った。
本大会では熊本出身でトリノの一つ星レストランで働く上田悟さんが優勝。2016年から毎年日本人が参加している本大会で、若手の日本人が1位、2位となったのは初めて。グローバル化する日本、来年には東京オリンピック・パラリンピックも控え、ビーガン料理のニーズが高まっている。2人の挑戦は日本のビーガン料理文化の幕開けを予感させる。